多くの企業において、生産性の向上や業務効率化を目指したさまざまな取り組みが行われています。地方自治体も例外ではなく、ビジネスチャットを導入して効率化を図るところが増えています。この記事では、自治体がビジネスチャットを導入する理由や導入のメリット、活用における注意点について解説します。
自治体でビジネスチャットの導入が増えている理由とは?
ビジネスチャットは、ビジネス用に特化したコミュニケーションツールです。スムーズなテキストメッセージのやりとりができるだけでなく、ファイル共有機能やタスク管理機能など、業務効率化を図るためのさまざまな機能が搭載されています。
そんなビジネスチャットが企業だけでなく自治体でも導入が増えている背景として、以下の4つの理由が挙げられます。
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リモートワークが増えたため
新型コロナウイルス感染症の拡大以降、さまざまな企業がリモートワークを導入し、それに伴い円滑なコミュニケーションをとるためにビジネスチャットを利用するようになりました。自治体でも同様に職員のリモートワークを実現するために、自治体専用の商用ビジネスチャットツールを導入するところが増えました。これにより職員間の迅速な情報共有や市民とのスムーズなコミュニケーションが可能となり、業務効率化にも貢献しています。
人手不足をカバーするため
昨今の日本では少子高齢化が進み、さまざまな分野で人手不足が深刻化しています。これは自治体も例外ではありません。厚生労働省の「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-」によると、地方公共団体の総職員数は1994(平成6)年の約328万人をピークに2016(平成28)年まで減少しています。その後横ばいから微増傾向にあるものの、2022(令和4)年は約280万人と、28年間で約48万人も減少しているのが現状です。
このような状況でも、自治体職員は多くの業務をこなさなければならず、人手不足をカバーするためには、ビジネスチャットなどのITツールの活用が欠かせません。
たとえば、電話やメール、FAXといった従来のコミュニケーションでは、マナーとしての定型文が欠かせず、1対1でのやりとりが基本でした。しかし、ビジネスチャットを利用すれば、簡潔な文章でコミュニケーションが図れ、情報共有も容易であるため、作業時間の短縮につながり人手不足解消に役立ちます。
参照元:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-」(p.16)
多様・複雑な業務に素早く対応する必要があるため
人口減少や医療・介護、経済問題、災害対策など、地方自治体が抱える課題は多様化・複雑化しており、解決には膨大な労力が必要です。特に新型コロナウイルス感染症拡大以降は、緊急時における迅速な対応が求められています。このような状況下においてビジネスチャットを導入することは、業務効率化や意思決定の迅速化や、市民ニーズへの素早い対応を促します。
市民とのコミュニケーションをスムーズに行うため
これまで市民が自治体に質問があるときは、窓口や電話などで問い合わせる必要がありました。しかし、窓口が混んでいれば時間がかかり、電話でのやりとりでは聞き間違いなどのミスが生じることも少なくありません。また、休日や夜間など、受付時間外は対応してもらえないという課題もありました。
このような場合もビジネスチャットがあれば、市民は直接窓口に行かずともスムーズな問い合わせが可能になります。さらにAIを活用したチャットボットシステムを導入すれば、24時間いつでも市民からの問い合わせに対応でき、業務効率化や市民サービスの向上が図れます。ほかにも決済をデジタル化させたり、行政手続きのオンライン化を進めたりすることで、市民の利便性向上や職員の負担軽減につながります。
自治体でビジネスチャットを導入するメリット
ビジネスチャットの導入は、主にコミュニケーションの活性化や、業務効率の向上、セキュリティ面の強化などに寄与します。
スムーズに情報を共有できる
これまで自治体では電話やメールを使って連絡や情報共有を行うのが一般的でした。しかし、上述の通り電話は時間外の対応が難しいうえ、聞き間違いなどがあると認識の食い違いが起こりかねません。また、メールは大容量のデータを送付できない、パスワードを付けるなどの手間がかかります。
しかし、ビジネスチャットがあればいつでも気軽に連絡ができ、電話のような聞き間違いや認識のずれも防げます。少ない手間で複数のファイルや大容量データの共有もできるため、スムーズな情報共有が可能です。
ペーパーレス化に貢献する
ビジネスチャットの導入により、データでの情報共有が可能になるため、ペーパーレス化を推進できます。業務に関わる書類を電子化すれば、職員は書類を探す手間や時間を減らせ、利便性が向上することで業務効率も上がります。また、ペーパーレス化によって印刷にかかるコストを大幅に削減可能です。ほかにも書類の紛失リスクが減らせるので、情報漏えいのリスク低減にもつながります。
コミュニケーションがスムーズに行える
ビジネスチャットは電話やメールと比べて即時性に優れているので、職員間や市民とのコミュニケーションツールに最適です。時間や場所を気にせずにコミュニケーションを図れるので、意見交換が迅速かつスムーズに行えます。
さらにグループチャットや共有ファイル機能を利用すればプロジェクトの進捗状況が把握しやすくなり、コミュニケーションが活発化して業務を進めやすくなるという効果も期待できます。
セキュリティ面が強化される
ビジネスチャットはビジネス向けのツールです。一般的なチャットツールやメールよりも高いセキュリティ対策が備わっており、不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減できます。アクセス制限やデータを暗号化する機能が付いたツールであれば、個人情報や機密情報も安全に管理でき、紛失などの人為的ミスや外部への持ち出しといった内部不正のリスクも減らせます。
ビジネスチャットを活用する際の注意点
ビジネスチャットの活用時には、情報の見逃しや情報漏洩への対策が必要です。
情報の見逃しに注意する
ビジネスチャットは、リアルタイムで気軽にやりとりができる一方で、情報量が多くなることで重要な情報を見逃すおそれがあります。このようなミスを防ぐためには、メンション機能などを利用して送信する相手を明確にしたり、重要なメッセージにはピン留め機能やブックマーク機能、タスク機能を利用して見返せるようにしたりするなどの工夫が必要です。さらにグループの人数が多い場合には、より細分化したグループを作成することも有効です。
情報漏えいのリスクはゼロではない
多くのビジネスチャットには高度なセキュリティ機能が搭載されていますが、リスクが全くないわけではありません。使い方によっては、セキュリティが強固なツールでも情報漏えいする可能性があります。ビジネスチャットを利用する際には、使用ルールに関するマニュアルを作成する、社内研修を行うなど、職員のセキュリティに対する意識を高めましょう。
また、セキュリティレベルはビジネスチャットの提供形態によって異なります。クラウド型のビジネスチャットの場合、セキュリティレベルはベンダーごとに異なるため、業務内容に合っているかを十分に確認したうえで導入する必要があります。一方のオンプレミス型のビジネスチャットは、クラウド型よりもクローズなネットワーク環境で利用するため、不正アクセスやウイルス感染などを防げ、情報漏えいのリスクを減らせます。
「Rocket.Chat」はオンプレミス型のビジネスチャットです。クラウド型と比較してセキュリティの安全性が高く、厳格なセキュリティが求められる自治体や金融、病院などの組織や機関に向いています。基本機能に加えてビデオ会議やタスク管理機能、カレンダー連携など柔軟にカスタマイズできるので、業務に合ったコミュニケーションツールを作れます。
まとめ
リモートワークの普及や人手不足などによって、自治体ではビジネスチャットの需要が高まっています。ビジネスチャットがあれば情報共有やコミュニケーションがスムーズに行えるようになり、ペーパーレス化も促進できます。ただし、活用する際は情報漏えいや情報の見逃しに注意し、働き方に合ったチャットツールを選ぶことが大切です。
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