これまで事業領域におけるコミュニケーションの手段としては、電話やメールの使用が一般的でした。しかし、近年では業務の効率化やスピード感が求められる中で、コミュニケーションツールの主流がビジネスチャットへと移行しつつあります。本記事ではビジネスチャットの概要やメリットについて解説するとともに、企業での活用事例や選び方のポイントなどを紹介します。
ビジネスチャットの概要
ビジネスチャットとは実際にどういったツールなのか、メールとの違いも含めて解説していきます。
ビジネスチャットとは?
ビジネスチャットとは、リアルタイム性の高い双方向の対話を実現するコミュニケーションツールです。業務利用を目的とするコミュニケーションツールであり、社内における情報共有や連絡の手段として機能するだけでなく、社外とのコラボレーションにも活用されています。
また、アカウント管理でアクセス権限の設定やグループの作成が可能で、特定のプロジェクトメンバーのみでメッセージのやり取りを行うことも可能です。ただし、ビジネスチャットはメッセージのやり取りがカジュアルな会話形式で進むことが多いため、顧客や取引先とのフォーマルなコミュニケーションには向いていない場合があります。
ビジネスチャットとメールの違いとは?
メールは基本的に一方向的なコミュニケーションが主で、CCやBCCを使って多数の相手に送信する手段としては最適なものの、リアルタイム性には欠ける連絡手段といえます。
また、メールでは相手が内容を確認したかが分からず返信を待つ時間も発生しやすいため、すぐに連携したい、確認したい場合には不向きなツールです。
一方で、ビジネスチャットはリアルタイム性に優れており、複数人での同時コミュニケーションが簡単に行えるのが大きな特徴です。
グループチャット機能を使用することで、特定のチームごとにスレッドを分けての会話が可能で、情報共有が行いやすくなります。
さらに、スタンプや引用機能もあるため、メールよりも気軽で分かりやすい連絡が取れる手段です。
ビジネスチャットの導入が進む社会的背景
ビジネスチャットの導入が進む社会的背景を2つの観点からそれぞれ解説していきます。
テレワーク環境での活用が広がっている
新型コロナウイルス感染症の流行以降、テレワークを導入する企業が増加し、対面でのやり取りが減少する中で、業務連絡や情報共有を円滑に行う手段としてビジネスチャットの活用が急速に広まりました。
ビジネスチャットでは、スタンプや引用機能、メンション機能などが備わっており、視認性が高く、即時に返信しやすい環境が整っています。
また、メールでは対応が難しいリアルタイムでの情報共有や、複数人との同時コミュニケーションも容易に行えるため、テレワーク時代における必須の業務ツールとして注目されています。
働き方改革やDX推進の影響が大きい
国を挙げて推進されている働き方改革の影響により、業務の効率化や柔軟な働き方への対応が求められる中で、ビジネスチャットの導入が急速に進みました。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、社内コミュニケーションのデジタル化が重要な取り組みとされ、ビジネスチャットの活用がその実現手段の1つとなっています。ビジネスチャットを導入することで、個人間のやり取りはもちろん、部署ごとの情報共有や全社的な連絡まで、スムーズかつ効率的に行うことが可能になります。
このように、コミュニケーションの質とスピードを向上させることで業務改善にもつながり、多くの企業が積極的に導入を進めているのが現状です。
ビジネスチャットのメリット
ビジネスチャットには業務効率化や情報共有を実現する以下のようなメリットがあります。
- 情報漏えいなどのセキュリティリスクを抑える
- 業務の生産性を高める
- 情報共有の効率を高める
- コミュニケーションを活発にする
- 仕事とプライベートを区別する
本章ではそれぞれ順に解説していきます。
情報漏えいなどのセキュリティリスクを抑える
セキュリティ機能が強化されたビジネスチャットは、企業の情報資産を守りつつコミュニケーションを図る手段として有効です。
ビジネスチャットでは、管理者によるユーザーアカウントの権限管理が可能であり、社内外のアクセス範囲やファイル共有の制限を自由に設定できます。さらに、データの暗号化やIPアドレス制限などのセキュリティ対策が施されたツールも多く、情報漏えいのリスクを最小限に抑えられます。
特にテレワークや外部のパートナーとの連携が多い企業にとっては、使い勝手のよいツールといえるでしょう。
業務の生産性を高める
ビジネスチャットは、メールのように件名や定型文を考える手間が不要で、要件を簡潔に伝えることができます。さらに、リアルタイムでのやり取りが可能なため、業務の進行スピードを大きく向上させます。
また、複数人への一斉連絡やタスクの割り振り、進捗管理などを効率的に行える機能も備わっており、チーム全体の連携を強化するツールとしても有効です。
こうした点から、ビジネスチャットは従来のメールに比べて業務の生産性を高める上で多くの優位性を持っているといえるでしょう。
情報共有の効率を高める
情報の一括共有や検索がしやすいため、ちょっとした業務の無駄を削減できます。
ビジネスチャットは、グループ機能やファイル共有機能を活用することで、情報を対象メンバー全体に一括で届けることが可能です。
メールのように「TO」「CC」の指定ミスが起きにくく、伝達漏れを防げるのが魅力です。
また、メッセージ検索機能により過去のやり取りをすぐに確認できるため、過去履歴を見返す点においても優れています。
コミュニケーションを活発にする
ビジネスチャットは、スタンプやリアクション機能などを活用して、カジュアルなコミュニケーションができる点が特徴です。
電話やメールではためらわれがちな質問や雑談も、チャットなら気軽にやり取りできるため、業務におけるやり取りが活性化します。
その結果、普段はコミュニケーションが生まれにくい上司部下の関係や、外部チームとの連携も行いやすくなり、風通しのよい職場環境づくりにもつながります。
仕事とプライベートを区別する
LINEなど私的なチャットツールを業務に利用すると、休日や退勤後にも連絡が入りやすくなり、常に仕事に意識を引きずられる環境になってしまいがちです。また、業務連絡と私的な会話が混在することで、誰に何を送ったかが曖昧になり、トラブルの原因にもなります。
ビジネスチャットは明確に「仕事用」と切り分けられるため、業務外の時間やプライベートな空間にまで仕事が入り込むことを防げます。
ビジネスチャットのデメリット
ビジネスチャットには便利な側面がある一方で、いくつかのデメリットもあります。主なデメリットは以下の通りです。
- 情報量が多くて見逃しやすい
- 情報確認に時間がかかる
- 業務時間外の対応が発生しやすくなる
- 導入時にコストがかかる
以下で詳しく解説します。
情報量が多くて見逃しやすい
チャットによるコミュニケーションの活性化によって、情報の見逃しを引き起こしてしまうことが考えられます。
ビジネスチャットは発言しやすい特性上、情報量が膨大になりがちで、グループチャットでは雑談や補足情報が次々と投稿されるため、重要な連絡が埋もれてしまう可能性があります。
メールでは基本的に必要最低限の内容でやり取りされますが、ビジネスチャットでは便利な反面不必要な情報で溢れてしまう懸念が考えられるでしょう。
情報確認に時間がかかる
情報が集まりすぎることで、逆に確認作業が負担となる場合があります。
ビジネスチャットによって多くの情報を伝達できる一方で、その確認に時間がかかるという課題も生じてしまいます。
特に複数のプロジェクトを管理している担当者は、各チャットルームから大量の通知を受け取り、必要な情報の選別作業に追われがちです。
チャット対応だけで業務時間を圧迫してしまう場合もあり、業務効率化のはずが負荷増加につながることも考えられるため、適切なフィルタリングや通知設定が重要です。
業務時間外の対応が発生しやすくなる
ビジネスチャットはメールに比べて比較的カジュアルに送信しやすいため、業務時間外にも通知が届くことが珍しくありません。
また、メッセージの即時対応を求める空気が生まれると、従業員のストレスやワークライフバランスへの悪影響も懸念されます。
本来仕事から離れているはずの夜間や休日にも投稿が続く環境では、心身の疲労が蓄積されやすくなる可能性もあるため、通知制限や運用ルールによって、一定の歯止めをかける必要があります。
導入時にコストがかかる
システム選定や運用開始までに、費用と工数が発生してしまうことはデメリットでしょう。
ビジネスチャットの導入には、初期設定費用や月額利用料がかかる場合がある他、どのプランを選定すべきかの検討も必要です。
また、導入前には操作マニュアルの整備や社内での利用方法の共有・指導が必要で、ITリテラシーに差がある組織では定着までに時間がかかってしまいます。
操作に不慣れな社員への教育コストも無視できず、予定外の部分で費用や工数を費やしてしまう可能性が考えられます。
ビジネスチャットの主な種類
用途や環境に応じて選べる、ビジネスチャットの代表的な3つの導入形態について、それぞれ解説していきます。
オンプレミス型
オンプレミス型とは、ビジネスチャットのシステムを自社サーバにインストールし、自社の閉域網内で運用・管理する方式です。
インターネット経由でのアクセスを制限し、セキュリティや機能を自社基準で設計・実装できる点が特徴です。クラウド型に比べて導入や運用には手間がかかりますが、その分自社に適した環境を構築できることが大きなメリットとなります。
特徴1.セキュリティ対策を自社で完結できる
オンプレミス型では、ビジネスチャットの通信や保存データが全て自社の閉域網内で管理されるため、外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクを大幅に抑えられます。
また、セキュリティ基準からアクセス制御、ログの監視・対応までを全て自社の裁量で運用できるため、独自のルールや要件に沿ったセキュリティ対策を徹底できます。
セキュリティ強度が要求される内容を扱う場合は、極めて有効な構成といえるでしょう。
特徴2.柔軟にカスタマイズできる
オンプレミス型の大きな利点は、自社の業務フローや運用体制に応じてシステムを自由にカスタマイズできることです。
チャット機能の追加・制限、社内システムとのAPI連携、デザインまで、自社の要件に合わせた細かな調整が可能です。そのため、特定部門専用のインターフェースを設けるなど、一般的なクラウド型ツールでは実現できない高度な拡張も行えます。
クラウド型
クラウド型とは、インターネット上のサーバを利用して提供されるビジネスチャットの形態です。
ユーザーはソフトウェアを自社で所有・設置する必要がなく、クラウドサービス事業者が用意する環境にアクセスすることで、どこからでも利用可能になります。
パソコンやスマートフォン、タブレットなど、さまざまな端末で利用でき、導入の手軽さから、多くの企業で導入されています。
特徴1.コストが安い
クラウド型は、初期費用を抑えつつ始められるのが大きなメリットです。
サーバやネットワーク機器などの物理的なインフラを自社で用意する必要がなく、利用料金は月額または使用量に応じた課金制が一般的です。導入にかかるハードルが低く、企業の成長や利用人数に応じてプランを拡張できるため、無駄な投資を避けつつ、必要なときに必要な分だけリソースを確保できる利点があります。
特徴2.手間がかからない
クラウド型は、導入から運用までの手間が少なく済むのも魅力です。
ソフトウェアのインストールや環境構築は不要で、アカウントの作成やログインだけで利用を開始できます。アップデートやセキュリティパッチの適用もサービス提供者が自動的に対応するため、管理者の負担が大幅に軽減されます。
さらに、障害発生時の対応もベンダー側が行うため、トラブル時も安心して運用可能です。
専門知識を有する人材を確保しておく必要もないため、IT人材が少ない企業でも運用しやすい点が評価されています。
オープンソース型
オープンソース型とは、ソースコードが一般に公開されており、企業や開発者が自由に利用・改良できるタイプのビジネスチャットです。
基本的には無料で提供されており、ライセンス費用が発生しません。
オンプレミス型や閉域網との親和性も高く、自社サーバに導入して独自の仕様で運用することが可能です。
また、オープンソース型は、世界中の有識者の手によってアップデートされ続けているため、より扱いやすく改良されていくのも特徴です。
特徴1.高水準なセキュリティ環境を構築しやすい
オープンソース型はソースコードが公開されているため、第三者によるセキュリティレビューや脆弱性チェックが頻繁に行われています。
これにより、セキュリティレベルの透明性が高く、自社でも独自に監査やセキュリティ強化を行えるのが特徴です。
オンプレミス環境や閉域網に導入することで、外部アクセスを遮断した高セキュリティな構成を実現しやすく、機密性の高い情報を扱う業種にも適しています。
特徴2.自社仕様に合わせてカスタマイズできる
オープンソース型はソースコードに手を加えられるため、社内業務フローや他システムとの連携に適したカスタマイズが可能です。
例えば、自社開発の認証基盤との連携や、部署ごとの専用機能の追加、UIの最適化など、既製品では対応が難しい要求にも幅広く対応できます。
APIやプラグインの開発も行いやすく、開発環境がある企業であれば、独自の拡張性をもたらす土台として非常に使い勝手がよいといえます。
特徴3.コストが抑えられる
オープンソース型の大きな利点は、一般的にライセンス料が不要であることです。
商用ソフトに比べて導入費用を大幅に削減でき、限られた予算内で導入したい場合に適しています。また、必要な機能だけを選定・実装することで、無駄な機能への支払いを回避できるため、費用対効果の高い利用が可能です。
自社でどの程度の機能が必要かを明確に判断できる場合で、多機能を必要としないのであれば、オープンソース型を検討してもよいでしょう。
ビジネスチャットの安全性は高い
ビジネスチャットはその手軽さゆえにセキュリティ面の脆弱性を懸念する声もあります。特に、近年主流となっているクラウド型のビジネスチャットの場合、オンラインのパブリック環境でリソースを共有するという性質上、オンプレミス型と比較するとセキュリティリスクが高い傾向にあります。
しかし、多くのビジネスチャットは業務での利用を前提としており、アクセス権限設定や多要素認証、ログの管理、通信内容の暗号化など、高度なセキュリティ機能を搭載しているのが一般的です。また、基本的に認証済みのアカウントとのみメッセージを送受信するため、Eメールを用いたやり取りよりも高い安全性が期待できます。
ビジネスチャットを安全に使うための対策
ビジネスチャットを安全に使うための対策として押さえておきたいポイントがいくつかあります。それぞれ順を追って解説していきます。
- 対策1.社内ルールやガイドラインを明確にする
- 対策2.オンプレミス型を導入する
- 対策3.複雑なパスワードを設定する
- 対策4.信頼できるツールを選ぶ
- 対策5.セキュリティ機能が充実したツールを選ぶ
- 対策6.セキュリティリテラシーを高める社員教育を行う
対策1.社内ルールやガイドラインを明確にする
ビジネスチャットのセキュリティを維持するには、従業員全員が安全な利用方法を理解して利用できる環境とルールが必要です。
チャット上で取り扱う情報の範囲、使用可能なデバイスやネットワークの条件、メッセージ送信前の確認事項など、全社で共有しておくことが重要です。
特に注意したいのは、パスワードの使いまわしやシャドーITの禁止、端末紛失時の即時報告義務の徹底などがあるでしょう。
都度セキュリティ研修を行うなど、インシデントについての危機感を持たせることが大切です。
対策2.オンプレミス型を導入する
クラウド型のビジネスチャットは利便性が高い反面、外部ネットワークを介するため、第三者からの侵入リスクが避けられません。
その点において、オンプレミス型は社内ネットワーク内で閉じた環境を構築でき、セキュリティを自社でコントロールしやすくなるため、情報の機密性が高い業種ではオンプレミス型の方が安心です。
また、サーバ構成・通信経路・暗号化レベルなどを自社要件に合わせてカスタマイズできるのもメリットといえます。
対策3.複雑なパスワードを設定する
アカウントの不正利用や乗っ取りを防ぐためには複雑なパスワードを設定することが大切です。
推測されやすい単純なパスワードでは、総当たり攻撃(ブルートフォース)により短時間で突破されてしまいます。
8文字以上で大文字・小文字・数字・記号を含む無作為な組み合わせがおすすめで、さらに定期的に設定を更新することも重要です。
システム側でもログイン失敗回数の制限やアカウントロック機能を設定すれば、さらに安全性が確保できるため、個人の意識を高めつつシステム的な制御を設けていくとよいでしょう。
対策4.信頼できるツールを選ぶ
導入を検討しているビジネスチャットが、第三者機関によるセキュリティ認証(ISO/IEC 27001など)を取得しているか、過去に重大なセキュリティ事故があったか、その際の対応が適切だったかを調査しておくと安心です。
他の企業の導入事例を参考にしつつ、客観的な評価をもとに自社への導入を検討していくとよいでしょう。
対策5.セキュリティ機能が充実したツールを選ぶ
選定するツールがどれほど多機能でも、セキュリティ対策が脆弱であれば本末転倒です。
安全にビジネスチャットを利用していくためには、セキュリティ機能がそろっているかが重要な判断材料になります。
具体的には、エンドツーエンド暗号化、二段階認証、多要素認証、IPアドレス制限、端末認証、アクセスログの自動保存、データの自動バックアップなどの機能が考えられます。
どの機能をどの予算で利用できるのか、標準搭載でカバーされているセキュリティ対策はどのようなものなのかをツールごとに確認しておくようにしましょう。
対策6.セキュリティリテラシーを高める社員教育を行う
どれほど堅牢なシステムを構築しても、最終的なセキュリティホールは「人」に起因するケースが多く見られます。
パスワードを口頭で共有する、不審なファイルを開く、送信先の確認を怠るなど、基本的な操作ミスが重大な情報漏えいにつながることも少なくありません。
そのため、セキュリティ意識を組織全体で高める社員教育は必須です。
新人社員だけでなく、既存社員向けにもセキュリティ講習やeラーニングによる教育を実施し、最新の脅威や事例、ツールの使い方を再確認する機会を設けるようにしておきましょう。
ビジネスチャット導入時に押さえておきたい注意点
ここでは、ビジネスチャット導入時に押さえておきたい注意点についてそれぞれ解説していきます。
導入目的を明確にする
「なぜ導入するのか」という目的を明確にすることが重要です。
「メールではやり取りが煩雑で時間がかかる」「外出中やテレワーク中の社員との情報共有を早めたい」など、組織ごとに課題は異なるでしょう。
この目的が曖昧なままだと、従業員から「使い方が面倒」「既存の手段で十分」といった声が上がり、導入が形骸化してしまいます。
導入目的が経営層と現場の社員間で共通認識となっている場合、導入後の業務利用もスムーズになるため、目的は明確にしておくようにしましょう。
自社の目的に合ったツールを選ぶ
ビジネスチャットの種類は多数あるため、自社の業務スタイルや課題に合ったツールを選定することが重要です。
社外とのやり取りが多い企業であれば、外部ユーザーの招待機能やファイル共有などの機能を重視すべきですし、情報管理を徹底すべき業種であれば、ISO27001取得やオンプレミス対応などのセキュリティ要件が高いツールを優先すべきです。
また、プロジェクト管理やタスクの可視化が求められる場合は、タスク管理・通知・カレンダー連携機能などが充実しているかも確認ポイントとなるでしょう。
トライアルや無料プランを活用しつつ、複数ツールを比較検証するとより失敗の少ない導入が可能となります。
運用ルールを事前に整備する
ツールの導入と同じくらい重要なのが、運用ルールの事前整備です。
どれだけ高機能なビジネスチャットを導入しても、運用ルールが曖昧だと社内で混乱を招いてしまいます。業務外時間の通知制限、チャットで取り扱ってよい情報レベル、チャットの履歴保存範囲など、使用範囲やマナー、情報セキュリティの方針を明確にする必要があります。
さらに、ルールはあくまで現場で実践されてこそ意味があるため、教育研修やeラーニングを通じて従業員に周知徹底する仕組みも不可欠です。
一部業務での試験導入から始める
全社一斉導入をいきなり行うのではなく、まずは一部の部署などで試験導入を行うのがおすすめです。
試験導入を通じて、実際の業務フローにおいて「どの機能が使われやすいか」「どの場面で導入効果が高いか」「現場の混乱や課題がどこにあるか」といった具体的な課題や効果が見えてくるようになります。
試験導入であれば予算を限定して利用を始められるため、一括導入の前に試験導入をするようにしましょう。
ビジネスチャットの導入成功事例
ここではビジネスチャットの導入によって高い成果を創出した企業事例を紹介します。
銀行が業務効率を向上
ある金融機関では業務の効率化と顧客サポートの円滑化を目的として、さまざまなコミュニケーションツールを活用していました。しかし、多くのコミュニケーションツールを導入することでサイロ化が発生し、かえってシステム管理の煩雑化と業務負荷の増大を招く事態に陥ります。
このような課題を解消すべく、同社は外部アプリケーションとの連携性に優れるビジネスチャットを導入し、複数のコミュニケーションツールを一元化することでパフォーマンスの大幅な向上を実現しました。
大学でさまざまなツールと連携させて活用
サウスイースタン・ルイジアナ大学のシステム管理チームでは、コミュニケーションツールにICQを導入していました。しかし、ICQは1990年代後半に開発されたメッセンジャーアプリであり、デジタル技術の進歩・発展が著しい現代においては、十分な機能を果たすのが難しくなっていました。
このような背景から導入されたのがビジネスチャットです。ビジネスチャットの利用によってチームのコラボレーションが活性化し、開発時間の短縮やアイデア伝達率の向上といった成果につながりました。
IT企業が旅行コンシェルジュアプリを開発
ドイツ鉄道の子会社であるDB Systel社では、旅行コンシェルジュとして機能するメッセンジャーアプリの開発に取り組んでいました。そこで重要課題となっていたのが、ライブチャット機能を備えるとともに、高度なセキュリティ要件を満たすチャットプラットフォームの選定です。
同社はオープンソースのWebチャットサーバRocket.Chatを導入し、旅行コンシェルジュアプリ「Derschlaue Reisebuddy」の開発に成功しました。
ビジネスチャットの選び方
ビジネスチャットを導入する際は、以下に挙げる3つのポイントに着目することが重要です。
ポイント1.初期費用・月額費用で選ぶ
ビジネスチャットの選定において、重要な検討項目の1つがコストです。後述する運用形態によって大きく異なりますが、基本的にビジネスチャットは導入時の初期費用と、継続的な運用における月額費用が発生します。サービスによって初期費用と月額費用が大きく異なるため、機能とコストのバランスを考慮しつつ、自社の組織体制やビジネスモデルに適したビジネスチャットを選定することが大切です。
ポイント2.形態で選ぶ
ビジネスチャットは大きく分けてオンプレミス型とクラウド型の2種類に分類されます。
オンプレミス型はサーバやネットワーク機器などの導入が必要で、初期費用が高い傾向にありますが、カスタマイズ性とセキュリティ性に優れる点がメリットです。一方、クラウド型は物理的なITインフラの構築が不要かつ初期費用無料のサービスが多いものの、サブスクリプションモデルが主流で、継続的な月額費用が発生するのが一般的です。
ポイント3.セキュリティの高さで選ぶ
先述したように、ビジネスチャットは業務利用を前提とするツールであり、多くの場合はアクセス権限設定や多要素認証などが搭載されています。ただし、提供元やサービスによってセキュリティ機能は異なります。また、クラウド型はインターネット経由で運用されるのに対し、オンプレミス型は社内ネットワーク上で運用されるため、セキュリティレベルにも違いが生じます。
ビジネスチャットを導入する際は自社のセキュリティ要件を明確化し、それに適したビジネスチャットを選ぶことが大切です。
ビジネスチャットなら「Rocket.Chat」
ビジネスチャットの導入を検討している方には、Rocket.Chatがおすすめです。Rocket.Chatには、クラウド型のSaaSプランに加えて、社内ネットワークで運用できるオンプレミス型も用意されており、高度なセキュリティ要件に対応できます。ビデオ会議やタスク管理、ファイル管理、リアルタイム翻訳などの豊富な機能が搭載されていると同時に、マルチデバイスへの対応も可能です。
また、Rocket.Chatはオープンソース製でソースコードが公開されており、機能の追加や削除など自由なカスタマイズが可能です。
まとめ
ビジネスチャットは業務利用を目的として開発されたシステムであり、リアルタイム性の高い双方向コミュニケーションを実現するコミュニケーションツールです。Eメールよりも手軽でスピーディーな情報共有が可能で、社内外の枠組みにとらわれないセキュアな情報共有基盤を構築できます。
ビジネスチャットを導入する際は「初期費用・月額費用」「運用形態」「セキュリティ」などの要素に着目し、自社の組織体制やニーズに合ったサービスを選定することが大切です。
閉域網で安全に利用できるRocket.Chatの資料は以下よりダウンロードできます。
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