業務を自動化できれば、コストの削減などにつながることはわかっているものの、どのような業務が適しているのか、コスト削減のほかにどのようなメリットがあるのかといったことに不安を感じている管理職・役員の方は少なくないはずです。本記事では、業務自動化とは何かから、自動化に適している業務、得られる具体的なメリット、実現するためのツールまでについてわかりやすく解説します。
業務自動化とは?
業務自動化とは、これまで手作業で行っていた業務をICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)ツールを活用して自動化することです。わが国では、労働力の中核をなす生産年齢人口(15歳から64歳まで)の減少によって人手不足が慢性化し、企業にとっては、労働生産性の向上が喫緊の課題となっています。この課題を解決するための有力な手段のひとつが業務の自動化です。
自動化を実現するICTツールにはRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などがあり、これらの活用によって、実際に多くの企業でルーチンワークの自動化などが実現しています。業務の自動化は生産性の向上はもとより、省人化や業務効率の向上にも有効です。
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自動化できるおもな業務
自動化できる業務としては、反復して行う業務や単純作業、データ化できる業務、パソコン上での業務などが挙げられます。具体的には以下のような業務です。
- 経理:仕訳入力、伝票入力、請求書や領収書の作成、資産管理、入金・支払業務
- 人事・総務:労働時間の管理、報告書の作成、人事評価、人事情報の管理、給与計算
- 営業:見積書や請求書の作成、受注・発注管理、販売状況の調査、営業メール送信
- 倉庫:在庫管理、発注業務、検品
- 全部門共通:日報の作成、情報収集、データ入力
一方で、そのつど担当者の判断が必要な業務やパターン化が難しい業務は自動化に適していません。
業務自動化を実現することで得られる3つのメリット
業務を自動化することにより、業務効率化が図れる、人件費を軽減できる、ヒューマンエラーを防止できるといったメリットが得られます。
1.業務効率化が図れる
企業内の業務には大きく分けて、売上に直接つながるコア業務と、売上には直接貢献しないものの、コア業務を支援するノンコア業務とがあります。いずれも企業に必要な業務ではありますが、ノンコア業務のリソースを極力減らし、コア業務により多くのリソースを割けるようにすることが理想です。ノンコア業務のなかでも単純作業やパターン化された業務を自動化できれば、業務効率化を実現でき、多くの従業員がコア業務に従事する時間を増やせます。
たとえば営業部門では、顧客情報の入力・管理などは従来、各担当者が手作業で行っていました。しかし、こうした業務を自動化することにより、空いた時間を重要な商談やマーケティング戦略の検討などにあてられるようになります。働き方に余裕が生まれることで、新しい事業やサービスが創出される可能性も高まります。
2.人件費を軽減できる
業務自動化によって業務の効率化を実現できれば、より少数または同数の人員でも、同一の業務をより短時間でこなせるようになります。結果的に、自動化された業務単位で見れば、人件費は削減されます。自動化できる業務の範囲が広ければ広いほど、人件費削減効果は高くなります。さらに、事務作業などをアウトソーシングしている場合、業務自動化によって当該業務を少ない社内従業員で行うようにすれば、外注費を削減することが可能です。同業的に考えると、業務自動化は大きな経費削減効果が期待できます。
3.ヒューマンエラーを防止できる
RPAなどの導入によって業務を自動化すれば、人の手で作業する場合に起こり得るヒューマンエラーを防止できます。従業員が手作業で業務を行う際には、注意力が散漫になっていたり、集中力が欠如したりすることもあり、どうしてもケアレスミスが発生してしまいます。ツールは、設定した手順に沿って正確に作業をこなしてくれるため、設定さえ間違えなければ、データの入力から出力までの間にミスが発生することはまずありません。さらに、ミスの発生を前提に行っていた二重チェックも不要になり、業務の効率化にもつながります。
業務を自動化するには、導入部署内すべての業務を可視化する必要があります。従来、特定の従業員のみが内容や進捗状況を把握していた「属人化された業務」も、もちろん可視化の対象になります。これにより属人化業務の防止・解消につながることはもちろん、検討の結果、当該業務に自動化を適用できれば、特定の業務を特定の従業員に頼らなければならないといったリスクからも解放されます。特定の従業員が長期不在になったり、退社したりした場合でも、すぐに対応できます。
業務自動化が実現できる代表的なツール
業務自動化を実現するためのツールには、RPAやチャットボット、マクロ、OCR・AI-OCRなどがあります。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
上述した通り、RPAはロボットによって業務を自動化できるツールで、パソコン上の単純作業や繰り返し行う作業の自動化に向いています。たとえば、Excelデータの入出力や定型メールの送信、請求書の発行、電話の転送など、幅広い業務をRPAで自動化することが可能です。プログラミングの知識やスキルがなくても利用できますが、運用・管理には相応の知識・スキルが必要です。
ひと口にRPAといっても、さまざまな種類があり、製品によって性能や導入するための費用は異なります。導入する際には、RPAによってどの業務を自動化したいのか、それによってどのような費用対効果が得られるのかといった、導入の目的を明確にする必要があります。導入目的が明確になれば、自社に適したRPAは自ずと絞り込まれてくるはずです。
チャットボット
チャットボットとは、チャット(会話)とボット(ロボット)とを組み合わせた造語であり、質問に自動で返答してくれるシステムを指します。チャットボットの導入により、一部の問い合わせ対応やカスタマーサポートを自動化できます。たとえばECサイトなどに設置すれば、24時間365日、問い合わせ対応が可能です。さらに、従業員の業務負担軽減や人件費の削減にもつながります。いつでも手軽に疑問を解消できることから、顧客満足度の向上も期待できます。さらに、チャットボットに蓄積されたデータを顧客サービスに活用することも可能です。
マクロ
マクロは、(複数の)定型作業を自動化できる機能であり、たとえばWordやExcelなどのMicrosoft Office製品などで利用できます。Microsoft Officeでマクロを実行するにはVBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語が必要ですが、VBAを習得できれば、定型業務を自動化できるため、大幅な人件費削減につながります。
自動化できる定型業務としては、WordやExcelへの入力作業やデータのチェック・集計、Web上の情報収集、ファイルの分割・統合などが挙げられます。請求書の作成やメール送信などにも利用できます。
OCR・AI-OCR
OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)とは、スキャンした画像データに含まれるテキストをテキストデータに変換できる機能です。AI-OCRはOCRにAI技術を組み合わせたもので、OCRよりも高精度に文字認識やレイアウト解析を行えます。OCRやAI-OCRによって、手作業で対応せざるを得ない紙の文書をテキストデータ化し、RPAやマクロなどによる業務自動化の前提となるデジタルデータを作成できます。紙の文書に記述された文字を手作業でデジタルデータ化するのには多くの人員・時間が必要ですが、OCRやAI-OCRであれば、この作業をほぼ自動化できます。認識率も高く、読み取り後の目視による正誤確認・修正作業も少なくてすみます。
まとめ
ICTツールの活用により、業務の一部を自動化する企業が増えています。単純作業やパソコンを使う作業などを自動化することで、業務効率化を図れるほか、ヒューマンエラーを防止したり、人件費を削減したりもできます。業務自動化を実現するためのツールには、チャットボットやRPA、マクロやOCR・AI-OCRなどがあります。それぞれの特徴を理解したうえで、自社の業務に必要なツールを導入することがおすすめです。
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