ビジネスチャットのセキュリティリスクは?
安全性を高める対策も解説

 2024.04.02  三和コムテック

ビジネスチャットは、企業でのコミュニケーションの効率化や活性化において大きな役割を果たしています。しかし、その便利さの裏側には、セキュリティリスクが潜んでいることも事実です。そこで本記事では、ビジネスチャットに付随するセキュリティリスクの具体的な内容や注意点、そして安全性を高めるための機能や対策について詳しく解説します。

ビジネスチャットのセキュリティリスクは? 安全性を高める対策も解説

ビジネスチャットの安全性を考える重要性

ビジネスチャットは企業においてさまざまな情報のやりとりに活用されています。その情報の中には、関係者以外に知られてはならない機密情報や個人情報が含まれていることも少なくありません。そのため、ビジネスチャットがサイバー攻撃を受けたり、情報漏洩につながるヒューマンエラーが起きたりすると、企業に重大な悪影響が出る恐れがあります。

もちろん、多くのビジネスチャットツールには一定のセキュリティ機能が搭載されているのが通例です。しかし、「ゼロトラスト」というセキュリティ概念が最近注目を集めているように、どのようなシステムであれ、その安全性を過信するのは避けなければいけません。

また、いくらツールに高度なセキュリティ機能が付いていても、管理運用の方法や利用者のリテラシーに問題があれば、トラブルが発生する確率は高くなります。したがって、ビジネスチャットの導入にあたっては、管理者・利用者共にビジネスチャットに潜むセキュリティリスクとその対策を考えることが重要です。

関連記事:ビジネスチャットとは? メリットや成功事例、安全性について解説

ビジネスチャットのセキュリティリスク

ビジネスチャットの運用において警戒すべきは、不正アクセスや情報漏洩などの問題が発生することです。これらの問題は、以下で紹介するようにさまざまな原因によって発生します。

情報の傍受

情報の傍受は、情報漏洩に直接つながるセキュリティリスクです。これはビジネスチャットで送受信されるメッセージやデータファイルを外部の攻撃者に盗み取られてしまうことを指します。

通常、ビジネスチャットツールには暗号化機能が付いているので、通信を傍受されても、その具体的内容まで把握されるリスクは高くはありません。しかし、暗号化機能のないビジネスチャットを利用している場合や、万一攻撃者に暗号の解読までされてしまった場合は、重要な情報が外部に漏洩してしまいます。

デバイスの紛失

ビジネスチャットを使用しているデバイスを紛失してしまい、そこから情報漏洩につながるリスクもあります。多くのビジネスチャットはモバイル対応しているので、人が行き交う社外でスマホやタブレットを使って利用している人も多いはずです。そのため、デバイスを紛失・盗難するリスクは決して侮れません。

日本ではカフェなどで持ち物を放置したまま席を外す人も珍しくありませんが、これはセキュリティ的に決して推奨されない行為です。特に、デバイスにロックをかけていない場合、紛失・盗難後に情報漏洩が起きてしまうリスクは飛躍的に高まります。

メッセージの誤送信

メッセージの誤送信は、ヒューマンエラーによって生じる典型的なセキュリティリスクです。ビジネスチャットでは通常、事前に作成したチャットルーム内で特定のグループや相手とメッセージのやりとりを行います。しかし、その際に不注意で別のチャットルームにメッセージを書き込んでしまうことがあります。ビジネスチャットは気軽にメッセージを送れる分、意外とこうしたミスが発生します。

特にメッセージを誤送信した相手が社外の人であった場合、問題が大きくなりかねません。もちろん、社内の相手であったとしても部外秘の情報を漏洩してしまうことは避けるべきです。メッセージ送信前に必ず送り先を確認するように心がけ、ミスの発生自体を防ぐに越したことはありません。

マルウェアの感染

マルウェアの感染も、特に警戒すべきリスクのひとつです。Webサイト・メール・外部端末など、マルウェアはさまざまな経路から侵入します。それはビジネスチャットも例外ではなく、チャットに添付されたファイルやURLからマルウェアに感染するリスクは否定できません。

ビジネスチャット経由でなくても、デバイスに潜んだマルウェアがビジネスチャット内の情報を外部に流出させてしまうことは十分にありえます。こうしたリスクを避けるには、「最新のウイルス対策ソフトを導入する」「ビジネスチャットの内外問わず不審なWebサイトやファイルは開かない」などの対策を徹底することが必要です。

アカウントの乗っ取り

アカウントの乗っ取りは、ビジネスチャットにおいて最も警戒すべきセキュリティリスクのひとつです。総当たり攻撃などによって第三者にアカウント情報が漏洩すると、アカウントが乗っ取られ、不正アクセスを許すことになります。特に、単純なパスワードを設定していたり、2段階認証を無効にしていたりすると、このリスクは高まります。プライベートで使用しているID・パスワードをそのままビジネスチャットに使いまわすこともリスクを高める要因です。

アカウントが乗っ取られると、そのユーザーの権限内で閲覧できる情報が漏洩してしまうことがまず考えられます。さらに、そのユーザーになりすまして攻撃者がマルウェアを仕込んだメッセージやファイルをその他のユーザーに送信し、さらに被害が拡大していく事態も警戒されます。

シャドーITの発生

シャドーITとは、企業の許可を得ないままに従業員が業務で使用しているITツールや端末、ネットワークのことを指します。こうしたシャドーITは、企業による管理やセキュリティ対策が及んでいないので、脆弱なことが多く、マルウェアの感染やサイバー攻撃による情報漏洩のリスクを高める大きな要因です。

ビジネスチャットにおいては、「従業員がプライベート用の端末やネットワーク(シャドーIT)で業務用のビジネスチャットを利用する」「そもそもビジネスチャット自体がシャドーITである」という2通りのリスクが考えられます。特にリモートワークによって監視の目が行き届かなくなっていると、シャドーITの存在に気づきにくくなります。

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ビジネスチャットの安全性を高める対策

ビジネスチャットを安全に利用するためには、さまざまな対策が必要です。ここでは、その対策例を5つご紹介します。

ガイドラインを策定する

ビジネスチャットの安全性を高めるためには、まず従業員が遵守すべきガイドラインの策定が重要です。注意不足やリテラシーの欠如による人為的ミスが情報漏洩の大きな原因となるため、ガイドラインではチャットの適切な使用方法や、どのような行動が危険で禁止されるべきなのかを明確にする必要があります。また、従業員がガイドラインをしっかり遵守するように、セミナーや研修を定期的に実施して、セキュリティリテラシーを組織全体で高めることも重要です。

ガイドラインの内容は自社のセキュリティポリシーに基づいて設定すべきですが、ここに一例を挙げます。

  • ビジネスチャットや端末のパスワード設定を義務付ける
  • 勤務時間外のビジネスチャットの利用を制限する
  • シャドーITの使用を禁止する
  • 端末の紛失やマルウェア感染が発覚した際は速やかに報告する

オンプレミス型のツールを利用する

ビジネスチャットにはオンプレミス型とクラウド型があります。セキュリティ面を考慮すると、オンプレミス型を利用するのがおすすめです。オンプレミス型のビジネスチャットは社内のクローズドなネットワーク内で利用されることから、第三者の侵入が困難であり、情報漏洩のリスクを低減できます。一方でクラウド型は多くのユーザーが使用し、データの蓄積量が多いため、ハッキングの対象として狙われるリスクが高い傾向にあります。

また、オンプレミス型のツールの場合、社内サーバーにシステムを構築するので、自社基準でセキュリティ管理をしやすいのもメリットです。クラウド型のビジネスチャットにも暗号化やアクセス制限などさまざまなセキュリティ対策が施されていますが、より高いセキュリティを求める場合にはオンプレミス型の導入を推奨します。

強固なパスワードを設定する

強固なパスワードを設定することは、基本的でありながらも大きな効果を見込める対策です。アカウントの乗っ取りを防ぐためには、他者に推測されにくい複雑なパスワードが必要です。具体的には、第三者が容易に推測できるような単純なパスワードは避け、アルファベットの大文字と小文字、数字、記号を組み合わせた複雑なパスワードを使用します。また、定期的なパスワードの変更も、セキュリティ対策としてある程度の効果が得られます。

さらに、パスワードの管理方法にも注意が求められます。いくら複雑なパスワードを設定しても、パスワードを書いたメモをデスクの上に貼り付けるなど杜撰な管理をしていては意味がありません。パスワード情報は他人に知られることのないように安全な方法での保管が求められます。

ツールの信頼性を確認する

ビジネスチャットツールの信頼性を確認することも重要です。不正アクセスや情報漏洩などのリスクを下げるためには、セキュリティやサポートなどの信頼性に優れたシステムを選択することが欠かせません。

ツールの信頼度を図る際の基準としては、採用企業の多さをはじめとする実績、セキュリティ対策や導入事例の公開度、国際規格ISO27001(ISMS)の取得状況などが挙げられます。また、過去にセキュリティ侵害が発生していたのであれば、その場合の対応方法も確認し、適切に対処されているか検討することも重要です。

様々な機能がついたツールを選ぶ

すでに紹介したように、ビジネスチャットのセキュリティリスクはさまざまなところに潜んでいます。そのため、ビジネスチャットの安全性を高める上では、多様なリスクに対応するセキュリティ機能を備えたツールの選択が重要です。

詳細な説明は後述しますが、ビジネスチャットに期待される主なセキュリティ機能としては、二段階認証(多要素認証)、通信の暗号化、ログの保存、端末認証、IP制限などが挙げられます。ツールによっては料金プランに応じて利用できるセキュリティ機能が変わるケースもあるので、自社のニーズとコストのバランスが取れた選択を行うことが重要です。

ビジネスチャットのセキュリティ機能例

ビジネスチャットでは、さまざまなセキュリティ機能が提供されており、これらを活用することで通信の安全性を高められます。以下に、代表的なセキュリティ機能の例を挙げます。

暗号化

ビジネスチャットでは、通信内容の保護のためにエンドツーエンド暗号化が行われます。この暗号化は、端末、通信経路、サーバーの各段階で実施され、たとえ第三者が通信を傍受しても、内容を解読することを困難にします。そのため、暗号化機能は、情報の傍受などのサイバー攻撃に対する備えとして非常に有効です。さらに、暗号化は端末の紛失・盗難対策としても効果を発揮します。

IP制限

IP制限とは、特定のIPアドレスに対してのみ、ビジネスチャットへのアクセスを許可する機能です。IPアドレスとはネットワークに接続している各デバイスに割り当てられる識別番号のことで、しばしば「インターネット上の住所」と表現されます。

IP制限をすることで、自社ネットワーク外からの不正アクセスを防止し、なりすましや不正アクセスのリスクを低減可能です。ただし、リモートワークを導入している場合は、各従業員が別々のIPアドレスからアクセスしてくると想定されるため、IP制限を機能させるのが難しい側面もあります。

端末認証

端末認証とは、事前に許可したデバイスに対してのみビジネスチャットへのログインを許可する機能です。認証されていないデバイスからはアクセスできないため、シャドーITや第三者による不正ログインを防げます。基本的に場所単位でのアクセス管理に適しているIP制限に比べて、端末認証はリモートワーク向きです。

デバイスが紛失や盗難に遭った場合には、認証を取り消すことで、そのデバイスからのアクセスをブロックできます。デバイスが無事見つかった場合は再度認証することでアクセスが可能になります。したがって、この機能は、デバイスの紛失・盗難時に生じるセキュリティリスクへの備えとしても効果的です。

ログ保存

ログ保存機能とは、ユーザーのアクセス履歴や操作履歴を保存し、必要に応じて閲覧できる機能です。これによって、不正アクセスや情報漏洩などの問題が起きた際、漏洩したデータやその発生日時、そして問題の操作を行ったユーザーアカウントを迅速かつ正確に把握し、被害の特定や原因究明をスムーズに行えます。また、ログ機能の存在やログ監査を行っていると従業員に周知することで、内部不正の抑止力にもなり得ます。

情報のバックアップ

ビジネスチャットには、メッセージやファイルなどのデータを自動的にバックアップする機能があります。この機能を活用することで、万が一チャットデータが消失しても、迅速に復旧することが可能です。

システム障害、自然災害、サイバー攻撃、ユーザーの誤操作など、予期せずデータの消失が起こる原因は多々考えられます。どれだけ対策を積んでもこうした突発的事態が発生する可能性を完全にゼロにすることは難しいので、セーフティネットとしてバックアップ機能を備えたツールを導入することは重要です。

2段階認証

2段階認証とは、ビジネスチャットへのログイン時に、ID・パスワードに加えて、ワンタイムパスワードなどの追加の認証情報をユーザーに要求する機能です。たとえID・パスワード情報が漏洩したとしても、2段階目の認証によって不正アクセスを防げます。ユーザー目線ではログインの手間が多少増えますが、認証セキュリティを強化する方法として2段階認証は非常に有効です。

多要素認証

多要素認証とは、ビジネスチャットへのログイン時に、複数の異なった種類(要素)の認証情報をユーザーに要求する機能です。異なった種類の認証情報とは、知識情報(ID・パスワードなど)、生体情報(指紋や虹彩)、所有物の情報(スマホやICカードなど)を主に指します。

2段階認証の場合は、「指紋認証+顔認証」というように、同じ種類の情報(生体認証)同士の組み合わせもありえます。一方、多要素認証の場合は、「ID・パスワード+指紋認証」というように、情報の種類が異なったもの同士を組み合わせるのが違いです。

権限管理

権限管理とは、職階や所属部門などの属性に応じてユーザーへ異なるアクセス権限を付与する機能です。特に、「管理者」や「特権ID」といわれるユーザーアカウントには、メンバーの追加や削除、機能制限の変更・解除などの強力な操作権限が付与されます。

チャットルーム内でも、「メンバーの変更なども含めて全ての操作ができる管理者」、「メッセージのやりとりができるメンバー」、「メッセージの確認はできる一方で書き込みはできない閲覧者」など、ユーザーを分けることが可能です。このような権限管理によって、必要な人のみに重要な操作や情報へのアクセスを許可し、情報漏洩や不正操作などのリスクを低減できます。

まとめ

ビジネスチャットは企業のコミュニケーションを活性化する一方で、情報の傍受、メッセージの誤送信、アカウントの乗っ取りなどによる情報漏洩リスクを孕んでいます。こうしたセキュリティリスクを低減するには、セキュリティ面で信頼できるビジネスチャットツールの選定が重要です。

Rocket.Chat」はオンプレミス型のビジネスチャットです。Rocket.Chatは自社のクローズなネットワーク内で完全に運用されるため、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを効果的に抑えられます。セキュアなビジネスチャットツールをお探しの方は、ぜひ導入をご検討ください。

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