テレワークの普及や業務効率化の必要性が高まるなか、社内外とのやりとりを円滑に進める手段として「ビジネスチャットツール」の導入が広がっています。とはいえ、導入に際してはセキュリティ要件や予算との兼ね合いから、オンプレミスとクラウド型のどちらを選ぶべきか悩む担当者も多いはずです。
本記事では、ビジネスチャットツールの基本からクラウド型とオンプレミス型それぞれのメリット・デメリット、主要ツールの特徴や価格までを分かりやすく解説します。
ビジネスチャットツールの基本
ビジネスの現場では、目的や状況に応じて多様な連絡手段が使い分けられています。近年では、電話やメールに加えて、ビジネスチャットツールを活用する動きが広がっています。ここではまず、ビジネスチャットツールの概要と注目されている背景について見ていきましょう。
ビジネスチャットツールとは
ビジネスチャットツールとは、業務での利用を前提に設計されたコミュニケーションツールです。テキストによるやり取りはもちろん、音声・ビデオ通話やファイル共有、タスク管理、カレンダー共有など、業務を円滑に進めるためのさまざまな機能が備わっています。
ビジネス向けではあるものの、個人向けSNSに近い操作感で使えるため、従来のメールと比べて気軽にやり取りできる点が大きな特徴です。
また、基本的には社内向けに使われますが、権限を制限した上で外部ユーザーを招待することも可能です。メールよりもスピーディーに意思疎通ができ、生産性向上にもつながるでしょう。
ビジネスチャットツールについては、下記の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。
なぜビジネスチャットツールが注目されているのか
ビジネスチャットツールが注目される背景には、テレワークの浸透によって対面でのやり取りが減少し、業務上の円滑な情報共有が求められるようになったことがあります。メールに比べて応答の速いチャットは、こうした課題を補う手段として広まりました。
近年はツールの種類が豊富になり、自社の規模や運用方針に応じて導入しやすくなった点も要因の1つです。さらに、サブスクリプション型の料金体系や洗練されたUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)、外部ツールとの連携機能の充実も普及を加速させています。
ビジネスチャットツールと他ツールの違いを比較
ビジネスチャットツールは他の連絡手段と何が違うのでしょうか。ここでは、メールや社内SNSと比較しながら、それぞれの特徴と用途の違いを解説していきます。
メールとの比較
これまで、ビジネスにおける主な連絡手段にはメールが広く用いられてきました。契約書の送付や意思決定に関わる正式な連絡には、今なお欠かせないツールといえます。ただし、メールは基本的に1対1のやり取りが中心となるため、広範囲にわたる情報共有には適していません。また、受信者が即座に確認するとは限らないことから、緊急性の高い内容の伝達にも不向きです。
加えて、ビジネスメールではマナーとして定型文が求められます。相手が社内の人であっても省略しないことが基本なので、その手間を煩わしいと感じる人は少なくないでしょう。
その点、ビジネスチャットツールは堅苦しい形式にとらわれず、簡潔な文章で気軽にやり取りできる点が特徴です。グループチャット機能を活用すれば、複数のメンバーとの情報共有もスムーズに行えますし、相手のオンライン状況をリアルタイムで把握できるため、緊急性の高いメッセージをタイムリーに送ることが可能になります。
社内SNSとの比較
近年、企業内のコミュニケーションツールとして社内SNSの導入が進んでいます。社内SNSは、個人向けSNSの仕組みを企業向けに最適化したもので、部署を越えた情報共有やカジュアルな意見交換、日常的な雑談など、幅広いコミュニケーションに活用されています。こうした交流を通じて従業員同士の距離が縮まり、組織全体のコミュニケーション活性化やエンゲージメントの向上が期待できる点が特徴です。
一方で、社内SNSは「交流」や「情報共有」に特化しているため、業務効率化に不可欠なプロジェクト管理やタスク管理の機能は十分に備えていません。
その点、ビジネスチャットツールは業務プロセスを前提に設計されており、案件ごとにチャネルを分けて投稿を整理できる他、メッセージからタスクを即時に登録し、進捗をチーム全体でリアルタイムに共有できます。これにより、情報と作業の流れが可視化され、プロジェクト全体の把握がしやすくなります。結果として、よりスムーズな業務遂行が可能となるのです。
ビジネスチャットツールのオンプレミス型とクラウド型の違いを比較
ビジネスチャットツールを導入する際、重要なのがクラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶかという点です。それぞれに異なる特徴があり、企業の規模や業種、セキュリティ要件によって最適な選択が変わってきます。ここからはクラウド型・オンプレミス型の特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。
オンプレミス型とは
オンプレミス型のビジネスチャットツールとは、企業が自社内にサーバやネットワーク機器を設置し、その上でビジネスチャットツールを構築・運用・管理する形態を指します。オンプレミス型では、サーバの購入からソフトウェアのインストール、ネットワークの設定まで、全て自社で行います。そのため、導入には一定の時間と技術的な知識が必要です。また、システムの保守・管理も社内で担当することになるので、IT担当者の配置が欠かせません。
一方で、全てのデータが社内に保管されるため、外部への情報漏えいリスクを最小限に抑えることができます。特に、厳格なセキュリティ要件がある企業や、既存システムとの連携が重要な企業にとっては、オンプレミス型が適している場合が多いでしょう。
オンプレミス型のメリット
オンプレミス型には主にセキュリティ面とカスタマイズ面でメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
セキュリティ性が高い
オンプレミス型とは、自社でシステムを設置・管理する運用形態です。そのため、クラウド型と比較してセキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えられる点がメリットです。特にビジネスチャットツールでは、機密性の高い情報や重要なファイルを共有する機会が多いため、厳格なセキュリティが求められる業種ではオンプレミス型の需要が高まる傾向にあります。
カスタマイズ性が高い
クラウド型のビジネスチャットツールはSaaSが主流であり、基本的な機能やプランの範囲内でしかカスタマイズを行えません。一方、オンプレミス環境でビジネスチャットツールを運用する場合は、自社のセキュリティ基準に沿って自由に設計できます。特にOSS(オープンソースソフトウェア)のビジネスチャットツールは、導入や運用コストを抑えられる上、自社の業務要件やシステム要件に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。
オンプレミス型のデメリット
続いて、オンプレミス型のビジネスチャットツールにはどのようなデメリットがあるのか、以下で詳しく解説します。
導入コストが高い
一般的なオンプレミス型は、サーバやネットワーク機器といったITリソースを全て自社で調達する必要があります。また、ITインフラの保守や運用において、継続的な管理コストも発生します。そのため、クラウド型と比較すると、導入費用と管理コストの両面で高額になりやすい点がオンプレミス型のデメリットです。
構築に時間がかかる
SaaSが主流であるクラウド型は、オンライン上で契約手続きを行えばすぐに利用を開始できます。一方、オンプレミス型のビジネスチャットツールは、導入計画の立案・策定に始まり、機能要件と非機能要件の定義、ハードウェアの設置やシステムの実装、単体テストや結合テストなど、環境の構築から運用までに多大な時間を要します。
クラウド型とは
クラウド型のビジネスチャットツールとは、インターネットを介してサービスを利用する形態のツールです。最大の特徴は、自社でサーバを購入・設置する必要がないということ。ベンダーが管理するサーバにアクセスして利用するため、ネットワーク環境とパソコン・タブレット・スマートフォンなどの端末があれば、いつでもどこからでもアクセスできます。
また、システムの保守や管理もベンダーが行ってくれるので、企業側で専門人材を配置する必要もありません。
一方で、運用環境はベンダーに完全に依存することになります。多くのサービスでは、複数の企業が同じクラウド基盤を共有する「マルチテナント方式」が採用されているため、自社に特化したセキュリティ対策を実装することはできません。
クラウド型のメリット
実際にクラウド型にはどのようなメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
導入の手間がかからない
クラウド型ビジネスチャットツールの最大のメリットは、オンプレミスと比較して導入の手間がかからないことです。オンプレミス型の場合、サーバの購入から設置、ネットワークの構築、ソフトウェアのインストールまで、多くのステップを踏まなければなりません。
しかし、クラウド型であれば物理サーバは不要なため、申し込みをしてアカウントを作成するだけで、すぐに運用を開始できます。早ければ申し込んだその日から使い始めることも可能です。また、提供される構成要素や各種サービスを組み合わせるだけで、必要なシステムを迅速に構築できるため、専門人材がいない企業でも安心して導入できます。
導入コストを抑えられる
導入コストを抑えられる点もクラウド型ビジネスチャットツールのメリットの1つです。オンプレミス型の場合、サーバやネットワーク機器の購入費用だけで数百万円かかることも珍しくありません。
一方、クラウド型は基本的に月額料金制もしくは従量課金制で、初期投資を大幅に軽減できます。多くのツールでは「1ユーザーあたり月額数百円」から提供されているため、小規模な組織でも導入を検討しやすいでしょう。また、利用人数の増減に合わせてライセンスを追加・解約でき、無駄なコストを払い続けるといった心配もありません。
クラウド型のデメリット
手軽さやコスト面での恩恵が大きいクラウド型ですが、メリットばかりというわけではありません。次に、クラウド型ビジネスチャットツールのデメリットを紹介します。
セキュリティ要件を満たしにくい
クラウド型はベンダーが用意したインフラを複数企業で利用する仕組みが一般的です。そのため、データ保存先やアクセス権限の細かな設定を自社ポリシー通りに変更できないケースがあります。
暗号化方式やバックアップ周期が自社基準に合致しないと判断された場合、追加オプションを選ぶか他サービスへ移行するしかありません。金融・医療業界のように厳格なセキュリティが求められる業種では、この制約が導入検討の障壁となりやすい点に注意が必要です。
コストが継続的にかかる
クラウド型は初期投資を抑えられる反面、利用期間中は月額または年額のコストが継続的に発生します。料金体系がユーザー・ID単位で表示されていることが多いため、一見安く感じられますが、利用人数の増加やオプション機能の追加により、想定以上にコストが膨らむ可能性があります。
したがって、導入を検討する際は実際の利用シーンを想定し、全ユーザーでどれくらいの月額・年額コストがかかるのかをしっかりと試算しておくことが重要です。
また、ツールによっては基本機能を無料で利用できるものもあります。まずはこうした無料プランから始め、必要に応じて段階的に有料プランへ移行していけば、無駄な出費を避けられるでしょう。
オンプレミス型ビジネスチャットツールの導入が広がる流れ
ビジネスチャットツールの普及とともに、セキュリティやカスタマイズのニーズの強まり、オンプレミス型への関心も高まっています。ここでは、ビジネスチャットツール導入の現状と、オンプレミス型が特に適している企業や組織の特徴について解説します。
ビジネスチャットツール導入の現状
近年、コミュニケーションツールの主流がEメールからビジネスチャットツールへと移行しつつあります。NTT西日本が運営するビジネス情報サイト「Biz Clip」の調査(※1)によると、国内企業におけるビジネスチャットツールの導入率は全体で51.1%、従業員数1万人以上の企業では82.7%でした。さらに同調査によると利用しているビジネスチャットツールの大多数がクラウド型という結果でした。
しかし、近年海外を中心にクラウドの利用をやめてITインフラ環境を自社管理へ回帰する「オンプレミス回帰」という選択肢を選ぶ企業が増えつつあります。その結果、企業や組織の特殊性からクラウドを使えない場合なども含め、オンプレミス型の需要が高まっています。
参照:企業のビジネスチャット利用実態調査2024|Biz Clip
オンプレミス型の導入がおすすめな企業・組織
オンプレミス型の利点はセキュリティ性とカスタマイズ性の高さです。クラウド型のビジネスチャットツールはオンライン上のパブリック環境でITリソースを共有する性質から、オンプレミス型と比較した場合に情報セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性が懸念されます。
またSaaS型のビジネスチャットツールは提供される機能の範囲でしかカスタマイズができないため、自社の業務要件を満たせるわけではありません。そのため、堅牢なセキュリティ要件を満たす必要があり、なおかつ自社のさまざまな要件に対応できる柔軟性を求める企業や組織にはオンプレミス型がおすすめです。
ビジネスチャットツールを比較|おすすめ7選
無料プランのあるビジネスチャットツールにはさまざまな種類があるため、選ぶ際にはポイントを押さえて比較することが大切です。特に、セキュリティ性、オンプレミス環境への対応、カスタマイズ性、導入実績、サポートの充実度などは、運用に大きく影響する重要な判断材料となります。
こうしたポイントを踏まえて検討することで、自社に適したビジネスチャットツールを選びやすくなります。以下では、日本国内で高いシェアを誇る主要な4つのサービスと、高いセキュリティ性が評価されているオンプレミス型のRocket.Chatをご紹介します。
Slack(スラック)
特徴
Slackは、アクティブユーザー数が1,000万人を超える、世界中で利用されているビジネスチャットツールです。日本でも人気が高く、大企業から中小企業まで、さまざまな規模や業種の企業で活用されています。
無料プランでは、メッセージ、会話、ファイル共有、情報共有ができるチャンネルなど、基本的な機能が利用可能です。
ただし、メッセージ検索は過去90日分まで、音声・ビデオ通話は1対1のみ、連携できる外部ツールは最大10個までなど、いくつかの機能制限があります。有料プランでは、これらの制限が解除され、さらに多くの機能が利用可能になります。
データの暗号化や、各種コンプライアンス認証を取得している高いセキュリティも、Slackの特長の1つです。サービスの提供形態はSaaS版のみで、企業独自のカスタマイズには対応していません。
価格
Slackには、チームの規模や用途に応じて選べる4つの料金プランが用意されています。プラン別の価格は以下の通りです。
プラン名 | フリー | プロ | ビジネスプラス | Enterprise Grid |
---|---|---|---|---|
料金(月額・1ユーザーあたり) | 0円 | 1,050円 | 2,160円 | 要問い合わせ |
主な機能 | 90日間のメッセージ履歴、10個のアプリインテグレーション、1対1の音声・ビデオ会議など | Slack AI、無制限のメッセージ履歴、無制限のアプリインテグレーション、グループでの音声・ビデオ会議など | ユーザーのプロビジョニングとデプロビジョニング、SAML ベースのシングルサインオン、メッセージのデータエクスポートなど | 複数のSAML設定をサポート、データ損失防止・eDiscovery・オフラインのバックアッププロバイダーに対応、組み込みの従業員ディレクトリなど |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
Chatwork(チャットワーク)
特徴
チャットワークは、導入社数が90万社を超える実績のあるビジネスチャットツールです。日本企業であるChatwork株式会社が提供しており、国内の利用者数が多いことが特徴です。
チャットでは、グループごとにタスクを作成でき、大容量のファイル送信も可能です。X(旧Twitter)やGmailなどの外部ツールと連携する機能も備えており、ビジネス利用に適した多彩な機能を利用できます。
無料プランでは、制限の範囲内で基本的な機能を利用可能です。主な制限として、ユーザー数は最大100人、メッセージ閲覧は直近40日以内、ストレージ容量は組織で10GBまで、音声・ビデオ通話は1対1のみなどがあります。
また、ISO27001などの国際的なセキュリティ規格の認証も取得しており、高いセキュリティ性が期待できます。サービスの提供は無料プランを含むSaaS版3プランで、企業独自の詳細なカスタマイズには対応していません。
価格
チャットワークでは、チームの規模やセキュリティ要件に応じて選べる3つの料金プランが提供されています。
プラン名 | フリー | ビジネス | エンタープライズ |
---|---|---|---|
料金(月額・1ユーザーあたり) ※年契約の場合 |
0円 | 700円 | 1,200円 |
主な機能 | チャット・タスク管理・ファイル管理、1対1の音声・ビデオ通話、ユーザー管理(一部制限あり) | フリープランの機能に加え、予約送信・自分宛て一覧・リアクション全種類など便利機能、最大14人の音声・ビデオ通話、ユーザー管理 | ビジネスプランの機能に加え、セキュリティ/リスク管理の機能、管理者向けのチャットサポート |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
LINE WORKS(ラインワークス)
特徴
LINE WORKSは、LINEと連携できるLINE WORKS株式会社が提供するビジネスチャットツールです。LINEに近い使用感で、使いやすいUIが特徴です。トーク、メール、アドレス帳、掲示板、カレンダー、タスク、ファイル管理など、業務に役立つさまざまな機能を備えています。
基本機能を制限付きで利用できる無料プランもあり、ユーザー数は最大30人、ストレージ容量は5GBまで、音声・ビデオ通話は最大4人・60分までなどの条件で利用可能です。
また、ISO/IEC27001・27701などの国際認証を取得しており、高いセキュリティ環境のもとでデータや個人情報が保護されます。カスタマイズ性はそれほど高くないため、自社が求める機能に対応できない場合があります。
価格
LINE WORKSで提供している製品プランはSaaS版のみであり、無料プランを含めて3プランから選択可能です。
プラン名 | フリー | スタンダード | アドバンスト |
---|---|---|---|
料金(月額・1ユーザーあたり) ※年契約の場合 |
0円 | 450円 | 800円 |
主な機能 | 音声・ビデオ通話・画面共有(4人、最大60分)、トーク、掲示板、カレンダー、タスク、 アンケート、アドレス帳、管理者機能(制限あり) | フリープランの機能に加え、音声・ビデオ通話・画面共有(最大200人)、管理者機能、カスタマーサポート・SLA保証 | スタンダードプランの機能に加え、Drive、メール |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
Microsoft Teams(マイクロソフトチームズ)
特徴
Microsoft Teamsは、マイクロソフト社が提供するビジネスチャットツールで、直感的な操作性と業務全体を支える統合的な機能群が特徴です。チャット機能以外に、音声通話・ビデオ会議・ファイル共有・スケジュール管理など、業務に必要なツールが1つのプラットフォームに集約されています。
Microsoft365との連携性にも優れており、Outlookの予定表から会議を設定し、Plannerでタスクを割り当て、Teams上でPowerPointやExcelを共同編集するといった一連の流れがシームレスに実現できます。
また、モバイルアプリにも対応しているため、外出先からでも過去の会話履歴や関連ファイルに即時アクセスすることが可能です。
セキュリティに関しては、通信・保存時の暗号化やコンプライアンス対応、電子情報開示への準拠など、企業利用を前提とした堅牢な設計が施されているため安心安全に利用できるでしょう。なお、機能のカスタマイズ性はそれほど高くありません。
価格
Microsoft Teamsでは、利用目的や必要なOfficeアプリの範囲に応じて選べる3種類の有料プランが用意されています。以下、従業員数が1~300人までの一般法人向けプランです。301人以上向けには大企業向けプランが用意されています。詳しくは公式サイトをご確認ください。
プラン名 | Microsoft Teams Essentials | Microsoft365 Business Basic | Microsoft365 Business Standard |
---|---|---|---|
料金(月相当・1ユーザーあたり) ※年間サブスクリプション |
599円 | 899円 | 1,874円 |
主な機能 | チャット、通話、ビデオ会議、ファイル共有、タスク、投票によるリアルタイムコラボレーション、チーム会議のレコーディングなど | Team Essentialsの機能に加え、最大 300 ユーザーの ID・アクセス管理、Web とモバイル版のWord/Excel/PowerPoint/Outlookアプリ、カスタム法人メールなど | Business Basicの機能に加え、デスクトップ・Web・モバイル版のWord/Excel/PowerPoint/Outlookなどのアプリ、出席者の登録とレポート作成ができるウェビナーなど |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
GoogleChat(グーグルチャット)
特徴
Google Chatは、Google Workspace(旧G Suite)の一部として提供されているビジネス向けチャットツールです。個人から大規模組織まで幅広く導入されており、Gmail・Googleドライブ・カレンダーなどのGoogleサービスと連携できる点が特徴です。
情報の共有や検索、スケジュール管理までを1つの画面で完結できるため、日常的にGoogleサービスを使っている企業であれば、特別な操作を学ばなくともすぐ業務に取り入れられるでしょう。
また、迷惑メールやマルウェアを99.9%以上検知する高度なセキュリティも備えており、通信・保存は暗号化され、ブラウザ・モバイルアプリともに利用可能です。この他、スマートコンポーズやメッセージ編集機能など、AI補助を取り入れた最新機能も順次追加されており、今後の進化にも期待が高まっています。
価格
Google Chatは、Google Workspaceの各プランに含まれており、利用にあたってはプランごとの契約が必要です。
プラン名 | Starter | Standard | Plus | Enterprise Plus |
---|---|---|---|---|
料金(月額・1ユーザーあたり) ※年契約の場合 |
800円 | 1,600円 | 2,500円 | 要問い合わせ |
主な機能 | ビジネス用カスタムメール、ビデオ会議(100人まで)、AIアシスタントなど | Starterの機能に加え、ストレージ増量、ビデオ会議(150人まで)、AIリサーチアシスタントなど | Standardの機能に加え、ビデオ会議(500人まで)、Vault、セキュリティ強化など | Plusの機能に加え、データ損失防止、高度なセキュリティ、大規模なビデオ会議など |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
WowTalk(ワウトーク)
特徴
WowTalkは、クローズドな環境で充実したコミュニケーションを行えるビジネスチャットツールです。チャットや音声通話、掲示板、タスク管理、日報など、社内コミュニケーションに必要な機能を幅広く搭載。誰でも扱いやすい直感的な操作画面を採用しており、ITに不慣れな従業員が多い業種でもスムーズに導入できます。
すでに導入企業は10,000社を超え、業種・規模を問わず幅広い現場で活用されています。グループトークは最大10,000人、音声通話は最大200人まで対応しているので、部門間連携から全社規模の情報共有まで柔軟に運用できます。
さらに、WowTalkでは22言語に対応した翻訳機能を搭載しており、外国籍スタッフを含む多様な人材が在籍する組織でも、円滑なコミュニケーション環境の構築が可能です。
価格
WowTalkは、ユーザー数に応じた月額料金制となっており、用途や規模に応じて3つのプランから選択できます。
プラン名 | シンプル | スタンダード | カスタマイズ |
---|---|---|---|
料金(月額・1IDあたり) | 360円 ※最低契約数30ID〜 |
500円 ※最低契約数30ID〜 |
要問い合わせ ※最低契約数1,000ID〜 |
主な機能 | WowTalk AI、予約投稿、トーク検索(90日間)、音声・ビデオ通話(ビデオは最大5名)、共有(掲示板)、タスク管理、匿名相談、アルバム登録(最大1,000枚)など | シンプルプランの機能に加え、トーク検索(1年)、ファイルダウンロード期限(無期限)、管理画面の二段階認証、ファイルダウンロード IP制限、クラウドサービス連携など | 要問い合わせ |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
Rocket.Chat(ロケットチャット)
特徴
Rocket.Chatは、世界150カ国以上で約1,200万人に利用されている、OSS型のビジネスチャットツールです。ソースコードはGitHub上で公開されており、自社の要件に応じて自由にカスタマイズできる点が大きな特徴です。
一般的なクラウド型サービスでは仕様の柔軟性に制限がありますが、Rocket.Chatならオンプレミス環境やプライベートクラウド上にも構築でき、閉域網での安全な運用が実現できます。主な機能には、チャット、ファイル共有、ビデオ通話、タスク管理・カレンダーがあり、業務に必要なコミュニケーション機能を網羅しています。
また、APIやWebhookによる外部ツールとの連携にも対応しており、部署ごとに異なるシステムで管理されていた情報も、Rocket.Chatを通じて一元的に整理することが可能です。
価格
Rocket.Chatは、利用規模や導入形態に応じて選べる3つのプランが提供されています。Starterはオンプレミス限定、ProとEnterpriseはオンプレミス・クラウドの両方に対応しています。
プラン名 | Starter(オンプレミスのみ) | Pro | Enterprise |
---|---|---|---|
料金 | 無料 | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
主な機能 | 1対1・グループメッセージング、ベーシックなプッシュ通知、ファイル履歴、既読機能、二要素認証、データ損失防止など | Starterの機能に加え、Rocket.Chatのウォーターマークを削除、Webフォームとメールサポート | Proの機能に加え、マイクロサービスのスケーリング、複数のインスタンスのスケーリング、カスタムロールと権限、監査パネル、デバイス管理など |
※上記は2025年6月時点の情報です。詳細な料金プランや機能については公式サイトでご確認ください。
ビジネスチャットツール導入時に比較したい5つのポイント
ビジネスチャットツールを選ぶ際は、機能面だけでなく、自社の運用に適した性能や環境への対応状況を見極めることが大切です。ここでは、導入時に比較したい5つのポイントを紹介します。
セキュリティ性
ビジネスチャットツールは、業務上の情報共有に用いられるため、高度なセキュリティが求められます。ツール内では、社内の機密情報や重要ファイルが日常的にやり取りされており、万が一マルウェア感染やアカウントの乗っ取りなどの被害が発生すれば、情報漏えいという重大なリスクにつながります。
とくに行政機関や金融機関など、機密性の高い情報を取り扱う組織では、情報漏えいを防ぐための強固なセキュリティ対策が必須です。
ツール選定時には、以下のようなセキュリティ機能の有無を確認することが重要です。
- IPアドレス制限
- 多要素認証(MFA)
- 端末認証
- 通信の暗号化
- ユーザー権限の細かな設定
- 操作ログの保存・監査機能
さらに、データが保存されるデータセンターの安全性や、ISO27001などの国際的なセキュリティ認証の取得状況も、信頼性を見極める上での重要な判断材料となります。
オンプレミス版の有無
ビジネスチャットツールは、クラウド型(SaaS)サービスが多く利用されています。クラウド型はインターネット経由でアクセスする形式で、初期コストが抑えられることから導入のハードルが低いのが特徴です。
一方、オンプレミス型は自社でサーバを構築し、社内ネットワーク(閉域網)でツールを運用します。外部ネットワークと切り離された環境で運用できるため、より強固なセキュリティを確保できる点がメリットです。高いセキュリティを求める場合には、オンプレミス版に対応しているかが重要な選定ポイントになります。
カスタマイズ性
現在は、クラウド型のビジネスチャットツールが広く利用されています。クラウド型は、導入が容易で初期コストを抑えられるといったメリットがある一方で、自社業務に特化した機能の選択やカスタマイズには制限があります。
チャット機能だけでなく、業務で使用する他ツールと連携できるかどうかも、業務効率化の観点では重要です。オンプレミス型のツールは、ソースコードが公開されたOSSであることが多く、柔軟な編集や多様なカスタマイズが可能です。ビジネスチャットツールを選ぶ際は、カスタマイズの自由度や他ツールとの連携可否を確認することが重要です。
シェア率・導入実績
シェア率や導入実績も、ビジネスチャットツールを選ぶ上で重要な要素です。導入実績が多いサービスは、不具合やバグが発生した際にも運営側が早期に把握・対応しやすく、安定した稼働が期待できます。
多くのユーザーに選ばれている背景には、必要な機能がそろっていて操作性が高いことなどが挙げられます。シェア率が高ければ、社内に利用経験のある従業員がいる可能性もあり、スムーズに導入しやすくなる点もメリットです。日常的に使用するツールだからこそシェア率や導入実績は、必ず確認しておきたいポイントの1つです。
サポート体制
サービス事業者や導入時のベンダーのサポート体制も確認が欠かせません。利用中の疑問への対応や、カスタマイズ時のサポート、トラブル発生時の対処などに関して、ノウハウと体制が整っているベンダーを選ぶことが大切です。
サポート体制がしっかりしているベンダーを選定しておけば、導入後も安心して運用を続けられます。
ビジネスチャットツール導入を成功させるためのポイント
ビジネスチャットツールを導入しても、活用されなければ意味がありません。ここでは、導入を成功させるために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
社内ルールを決めておく
ビジネスチャットツールは便利な情報共有ツールですが、使い方を誤るとトラブルの原因になりかねません。だからこそ、ツールを導入する際は、あらかじめ社内での利用ルールを明確に定め、従業員全員に周知徹底することが大切です。
例えば、どのような情報をチャットで共有するのか(例:業務連絡、進捗報告、緊急連絡など)、メッセージに対するリアクションはどのように行うのか(例:スタンプ、返信)、利用して良い時間帯はいつまでか、といった基本的な取り決めを行います。
自社の文化や働き方に合わせてルールを調整し、従業員にしっかりと浸透させていくことで、より効果的なコミュニケーション環境を構築していきましょう。
使用目的を社内で共有する
ビジネスチャットツールの導入を成功させるには、「何のためにこのツールを使うのか」という目的を、社内でしっかりと共有することも大切です。新しいツールが導入されると、「また新しいものが増えた…」と抵抗を感じる人もいるかもしれません。そうした従業員に理解を促すためには、ただ「使ってほしい」と伝えるのではなく、導入によって得られる効果やメリットを具体的に説明する必要があります。
導入を決めるのは経営層かもしれませんが、実際に使うのは従業員です。目的を共有し、可能であれば導入前のシミュレーションなどで実際に体験してもらうことで、スムーズな浸透が期待できるでしょう。
社内研修で使い方を共有する
新しいツールを導入する際、特にデジタルツールに不慣れな従業員がいる場合は、社内研修を通じて使い方を共有することが不可欠です。ただツールを導入しただけでは、「どう使えばよいか分からない」「結局、使い慣れているメールの方が楽」といった声があがり、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあります。
基本的な操作方法(メッセージの送信、ファイルの共有、グループ作成など)はもちろんのこと、絵文字やスタンプの活用方法、通知設定の調整、特定の人へのメンションの仕方など、細かな機能まで丁寧にレクチャーすることで、従業員のITリテラシーに関わらず誰もがスムーズに使い始められるようになります。
ビジネスチャットツールは「Rocket.Chat」がおすすめ
「Rocket.Chat」は、オンプレミス環境にチャットシステムを構築できるビジネスチャットツールです。閉域網においてもビデオ会議やスマートフォンへのプッシュ通知が利用できるため、業務の効率化とリアルタイムな情報共有を両立できます。
OSSとして提供されている点も大きな特徴で、自社の要件に応じて、独自機能の追加や不要機能の削除など、柔軟なカスタマイズが可能です。
さらに、Rocket.Chatは、E2E(エンドツーエンド)暗号化、SSO(シングルサインオン)連携、二段階認証、詳細な権限管理といった高度なセキュリティ機能を備えており、ISOやGDPRなどの国際的なセキュリティ基準への対応も可能です。
また、APIやWebhook、プラグインによる拡張性にも優れており、既存の社内システムや業務ツールとの連携もスムーズに行えます。
Rocket.Chatの詳しい資料は以下よりダウンロードできます。
まとめ
ビジネスチャットツールの導入は、社内外の情報共有を円滑にし、業務効率の向上やコミュニケーションの活性化に効果的です。チャット機能はもちろん、タスク管理、ファイル共有、ビデオ会議といった多機能を備えているツールであれば、業務の進捗把握やチーム連携の強化にも役立つでしょう。
選定にあたっては、セキュリティ性やカスタマイズ性、導入実績、サポート体制など、複数の視点から比較することが大切です。各ツールの特性を正しく理解し、自社の課題や運用体制に適したツールを導入していきましょう。
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