企業経営において、人件費をいかに抑えるかは永遠のテーマです。無計画な人件費削減は、かえって企業に大きなダメージを与える恐れもあります。そこで本記事では、人件費削減のメリット・デメリットや注意点、具体的な方法、そして人件費削減に役立つITツールについて解説します。
人件費とは?
人件費とは、企業が従業員に支払う費用の総称です。これには、給与や賞与のような直接的な報酬だけでなく、福利厚生費や法定福利費、退職金、採用にかかる費用など、従業員に関係する多種多様な支出が含まれます。事業活動において、人件費は継続的に支払っていく必要のある固定費の一部であり、その規模は経営全体に大きな影響を与えます。したがって、人件費の管理と最適化は、経営効率を高めるうえで極めて重要な課題です。
人件費削減によるメリット
経営効率を高める方法として、固定費である人件費を削減することは有効な選択肢のひとつです。また、人件費の削減は、単なるコスト削減以上の効果をもたらすこともあります。以下では、人件費削減の具体的なメリットを解説します。
コストが削減できる
人件費削減の最も直接的な効果は、事業運営に必要なコストを削減できることです。給与をはじめとする固定費を削減することで、企業は多くの資金を節約し、その分を他の分野への再投資が可能になります。具体的には、新しい設備や技術への投資、市場拡大のためのマーケティング活動、新製品の開発などです。このような再配分は、企業の持続的な成長と競争力強化に寄与します。
銀行からの融資を受けやすくなる
コスト削減によって財務状況が改善されることで、銀行などの金融機関から融資を受けやすくなるのもメリットです。特に資金調達が必要な成長期にある企業にとって、こうした融資が受けやすくなることは非常に大きな意味を持ちます。安定した財務基盤は、企業の信頼性を高め、より良い融資条件を引き出す可能性を高めます。
株価上昇が期待できる
銀行から好条件で融資を引き出せるような安定した財務基盤は、投資家にとっても魅力的な要素です。コスト削減によって収益性が向上することで、株価にも良い影響を与える可能性があります。株価の上昇は、企業の市場価値を高め、投資家たちへの訴求力をさらに強めます。これによってキャッシュフローが改善することで、自社の持続的な成長を促進可能です。
人件費削減によるデメリット
人件費の削減は企業経営において重要な戦略のひとつですが、その実施には慎重な配慮を要します。安易に人件費を削減すると、思わぬ副作用が出て望まぬ末路を迎える恐れがあるためです。ここでは、人件費の削減によって生じうる主なデメリットを解説します。
従業員のモチベーションが下がり離職率が高くなる可能性がある
人件費削減は、従業員のモチベーションに悪影響を与える恐れがあります。内閣府の調査によれば、労働の目的としてお金を得ることを挙げた人の割合は63.3%です。そのため、給与のカットや昇給の凍結、賞与の削減などをすることは、従業員の労働意欲を根本的に奪うことになりかねません。労働意欲の喪失は、生産性や従業員満足度の低下、そして最終的には離職率の上昇へとつながり、自社の人材基盤を揺るがす恐れがあります。
参照元: 令和4年度 国民生活に関する世論調査 調査結果の概要
人材不足に陥る可能性がある
離職率の上昇が危険域に達すれば、人手不足に陥り、通常の業務遂行に支障が出るリスクも無視できません。人手不足が深刻化すると各従業員にかかる業務負担が増加し、これがさらに生産性の低下や従業員満足度の低下につながります。ひいては再び離職率の増大を招き、抜け出しがたい悪循環に陥る可能性があります。
業績悪化やイメージダウンのリスクがある
人手不足によって通常の事業運営が困難になれば、業績への悪影響は避けられません。また、大規模なリストラなどを実施することで、「従業員を大事にしない企業」という悪いイメージを世間に与えたり、投資家に財務的な健全性を疑われたりするリスクもあります。業績向上のために人件費削減をしたはずなのに、こうした事態に陥ったとしたら本末転倒です。また、企業イメージの悪化が、今後の採用活動に悪影響を与えるリスクも警戒しなければいけません。
人件費を削減するうえで注意したいポイント
上記のようなデメリットをなるべく防ぐためには、以下のポイントに注意することが大切です。
課題のある部署や業務を特定する
人件費削減を検討する際には、まず社内の現状を把握し、課題のある部署や業務を特定することが重要です。すべての業務が同じ重要度を持つわけではありません。中には、多くの時間と労力を要する目立たない仕事でありながら、ビジネスの成功に不可欠な業務も存在します。人件費の削減をする際には、こうした点に注意して、重要度の高い部署は削減の対象から外すなどの配慮が必要です。
逆に、生産性や必要性の低い業務、ないし過剰なリソースが投じられている部署は、改善の余地があると考えられます。このように、人件費削減に取り組む際は、企業全体の業務プロセスやコスト配分を見直し、課題の多い部署・業務から優先的に削減の対象とすることがポイントです。
段階的に進める
人件費削減は、慎重かつ段階的に進めることも大切です。急激な変化は従業員のモチベーション低下や業務の混乱を引き起こし、結果として業績悪化につながるリスクを高めます。例えば、業務量が多いにもかかわらず、残業時間の削減を無計画に従業員へ要求すれば、業務が滞り、プロジェクトの遅延や品質低下を招きかねません。
そのため、人件費削減にあたっては、それによって、どの業務にどの程度影響が出るのか予測したうえで計画を立て、継続的に状況を観察・調整しながら実行していくことが大切です。また、単に人手や労働時間を削減するだけでいいのか、それともその削減分を補う代替手段を講じるのかも考えましょう。こうして段階的に、変化の影響を最小限に抑えながら取り組みを進めることで、人件費削減に伴うさまざまなデメリットを抑制できます。
人件費を削減する方法
人件費削減の方法には多種多様なアプローチが存在します。必要な時間や期待できる効果などもそれぞれ異なるので、自社に適した方法を採用することが大切です。
人材育成を行って生産性を向上させる
意外に思われるかもしれませんが、人件費削減の方法のひとつには人材育成も含まれます。人材育成によって従業員ひとりひとりの生産性を高めることができれば、従来よりも少ない人員・時間で業務を行えるようになるからです。
人材育成計画の立案と実施にあたっては、組織のニーズに応じた内容を検討することが重要です。例えば、デジタル化や新しい技術の導入に必要なITスキルの習得、業務に役立つ専門的な資格の取得、マネジメントスキルの強化などが具体的に挙げられます。人材育成には研修費用など一定の費用や時間がかかると予想されますが、将来的に生産性向上というリターンを得られることを思えば、必要な投資と捉えられます。
無駄な残業を削減する
残業の削減は、人件費を減らす効果的な方法のひとつです。特に、無駄な残業が発生している場合は、事業への悪影響を最小限に抑えて人件費を削減できます。「残業ありきの業務になっていないか」「上司の顔色や人事評価を気にしての残業になっていないか」などを確認し、無駄な残業はしない企業風土を積極的に育てましょう。
必要に追われて残業しているとしても、業務フローの改善によって削減できる可能性はあります。サービス残業させて残業代を減らすことは違法なので、残業をしなくてもいい体制を整えることが重要です。また、定時内に仕事を終わらせるために従業員へ過度にプレッシャーを与えることも、従業員への負担や業務品質の維持などを考えれば控えるべきです。
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングもまた、人件費削減のために役立ちます。すべての業務を自社で完結させる必要はありません。非コア業務を外部委託し、自社はコア業務に専念できる体制を構築することで、組織のスリムアップが可能です。特に、定期的ではない業務や専門的なスキルを要する業務をアウトソーシングすることは、コスト削減だけでなく、業務品質向上への期待にもつながります。
また、アウトソーシングを利用することで、人件費を固定費から状況に応じて調整可能な変動費に変えられるのも大きなメリットです。これによって、企業は財務的な柔軟性を高め、需要の変動に応じてコストを最適化できます。ただし、アウトソーシングを行う際には、業務の品質管理や委託先とのコミュニケーションの確保など、新たな課題が生じる可能性もあるため、慎重な検討と信頼できる業者の選定が必要です。
ツールを活用して業務を効率化する
ITツールの活用による業務効率化は、人件費の削減手段として非常に有望な選択肢です。ITツールによって業務の省人化・自動化ができれば、従業員の負担を軽減しつつ、従来と同じかそれ以上の業務量を処理し続けることもできます。
自動化のターゲットとして特に適しているのは、決まった手順で行われる定型的な業務です。ツールにできる作業はツールに任せることで、従業員は人間にしかできない複雑な業務や高付加価値の業務に集中しやすくなり、さらに生産性を高めることが可能になります。このような効率化を実現するためには、既存の業務フローを洗い出して課題を明確にしたうえで、その課題解決に適したツールを選定することが重要です。
業務効率化につながるツール「AutoMate」
業務効率化を実現する具体的なツールとしては、RPAツール「AutoMate」をおすすめします。RPAツールとは、PCを使って行う定型的なバックオフィス業務の自動化に適したITツールです。
中でも「AutoMate」は、低コストでありながら高機能なRPAツールです。「AutoMate」は700項目にも及ぶ自動化機能を備えており、多様な業務の自動化を実現します。一例を挙げると、伝票処理、ECサイトへの商品登録、勤怠管理などの自動化が可能です。
「AutoMate」はライセンス購入方式なので、長期的に使用するほどコスト効率が良くなります。RPAツールによる業務の自動化を検討する際は、有力な選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
人件費の削減には、コスト削減などの効果がある一方、場合によっては副作用も大きいので注意が必要です。人件費削減を実現する主な方法としては、人材育成、無駄な残業の削減、アウトソーシング、そしてITツールの活用が挙げられます。特に「AutoMate」のようなRPAツールの活用は、業務の自動化によって人件費を削減するうえで非常に有効な手段です。
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