ビジネスチャットのセキュリティ事故による損害と費用
国内事例から学ぶ情報漏洩リスクと対策

 2025.10.30  島村 奉明

近年、ビジネスチャットツールは企業のコミュニケーションにおいて不可欠な存在となっています。しかし、その利便性の裏には、セキュリティリスクが潜んでいます。特に、情報漏洩不正アクセスといったセキュリティ事故が発生した場合、企業にとっては多大な損害をもたらすことがあります。本ブログでは、ビジネスチャットにおけるセキュリティ事故が引き起こす損害金額や関連費用について詳しく解説します。

この記事で分かること

  • 日本国内で発生したビジネスチャットにおけるセキュリティ事故事例
  • 企業が取るべき具体的なセキュリティ対策

この記事を読むことで、ビジネスチャットを安全に活用するために注意すべきポイントや、事故を未然に防ぐための具体的な対策が明確になります。

ビジネスチャットのセキュリティ事故がもたらす影響

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ビジネスチャットのセキュリティ事故が発生すると、以下のような影響が考えられます。

収益・業務への影響

セキュリティ事故が発生すると、業務が一時的に停止することが多く、これにより収益が減少します。特に、顧客情報が漏洩した場合、顧客の信頼を失い長期的な収益減少につながることがあります。

ブランド価値・企業イメージの低下

情報漏洩や不正アクセスが公に知られると、企業のブランドイメージが損なわれる可能性があります。顧客は、セキュリティが不十分な企業との取引を避ける傾向があるため、ブランド価値の低下は直接的な収益損失を引き起こします。

法的責任と賠償リスク

情報漏洩が発生した場合、企業は法的責任を問われることがあります。顧客や取引先からの訴訟が発生し、賠償金が発生する可能性があります。例えば、2018年の国内情報漏洩事件では、1件あたりの平均損害賠償額が約6億3,767万円に達しました。

国内企業のセキュリティ事故事例

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NTTのデータ漏洩事件

2023年に発生したNTTのデータ漏洩事件では、約18,000社の顧客情報が漏洩しました。この事件により、NTTは数十億円の損害を被ったとされています。具体的な金額は公表されていませんが、顧客の信頼を失ったことによる長期的な影響は計り知れません。

LINEのデータ侵害

2023年にLINEが経験したデータ侵害では、440,000人以上のユーザーの情報が漏洩しました。この事件により、LINEは顧客からの信頼を失い、今後のビジネスに影響を及ぼす可能性があります。具体的な損害金額は不明ですが、顧客情報の漏洩は企業にとって致命的な損失となることが多いです。

中小企業における被害実態と損害額

中小企業においても、サイバー攻撃による損害は深刻です。例えば、ある中小企業がマルウェアに感染した場合、インシデント対応や復旧作業にかかる費用が600万円を超えることがあります。さらに、顧客データが漏洩した場合、賠償金や法的費用が加算され、総額で数千万円に達することもあります。

セキュリティ事故が引き起こす「隠れたコスト」

Closeup portrait of greedy banker executive CEO boss, corporate employee funny looking man, shaking holding dollar banknotes scared to loose money, suspicious isolated on white background. Expressions

セキュリティ事故による損害は、直接的な金銭的損失だけではありません。以下のような隠れたコストも考慮する必要があります。

業務停止による生産性低下

セキュリティ事故が発生すると、業務が中断されることが多く、これにより生産性が低下します。例えば、業務が24時間以上停止した場合、損失は数十万円から数百万円に達することがあります。

再発防止・システム強化のコスト

事故後、企業は新たなセキュリティ対策を導入する必要があります。これには、セキュリティソフトウェアの購入や、専門家によるコンサルティング費用が含まれ、数十万円から数百万円の追加コストが発生することがあります。

顧客信頼回復にかかるマーケティング費用

事故後、顧客の信頼を回復するためのマーケティング活動、顧客サポートの強化にもコストがかかります。これにより、さらに数百万円の費用が発生することがあります。

ビジネスチャットのセキュリティ事故を防ぐための5つの対策

Group of business people brainstorming together in the meeting room

ビジネスチャットの利便性が高まる一方で、情報漏洩アカウント乗っ取り不正アクセスといったセキュリティリスクも増加しています。
ここでは、企業が実践すべき5つの基本的な対策を紹介します。

アクセス制御と権限管理の徹底

最も基本かつ重要なのが、「誰が」「どの情報に」アクセスできるか を明確にすることです。
チャットツールは部門横断的に利用されるため、アクセス権が緩いと、機密情報が不要なユーザーにも共有されてしまう危険があります。

  • ユーザーごと・チャンネルごとの権限設定
  • 社外ユーザー(取引先・委託業者など)との共有制御
  • 退職者・異動者のアカウント削除やアクセス制限の即時実施

これらをシステム的に自動化することで、ヒューマンエラーによる漏洩を防止できます。
特に、外部共有リンクの制御やSSO(シングルサインオン)による認証統合 が効果的です。

 オンプレミス型チャットの活用

セキュリティリスクを根本から減らすには、クラウド依存から脱却する選択肢 も有効です。
オンプレミス型のチャットシステムであれば、データをすべて自社環境に保持でき、外部のクラウドサーバーを介さないため、情報統制を自社で完結できます。

弊社で取り扱いのあるRocket.Chat はオンプレミス環境にも対応したオープンソースのビジネスチャットです。
ログ監視・インシデント対応体制の構築サーバーを自社で運用することで、

  • データを完全に自社管理

  • 通信経路・アクセス権限を自社ポリシーで制御

  • コンプライアンス要件(金融、公共、医療など)にも柔軟に対応

といった高度なセキュリティ運用を実現できます。

さらに、クラウド版とオンプレミス版の両方に対応しているため、セキュリティ要件と運用コストのバランスを取りながら導入 することも可能です。

 定期的な脆弱性診断の実施

どれだけ優れたセキュリティ対策を行っていても、脆弱性を放置すれば攻撃者に突破口を与えることになります。そのため、定期的な脆弱性診断を実施し、システムの安全性を検証・更新していくことが重要です。

 脆弱性診断には、以下のような種類があります

  • ネットワーク診断(通信経路・外部公開サーバーなど)

  • Webアプリケーション診断(チャットツールやポータルサイト)

  • 内部システム診断(社内サーバー・端末の設定確認)

また、自動診断ツール を活用することで、人的リソースを抑えながら継続的な監視が可能なります。
脆弱性を早期に発見・修正する仕組みが、長期的なリスク低減につながります。

ログ監視・インシデント対応体制の構築

セキュリティ事故を完全にゼロにすることは難しいため、「発生を前提とした対応体制」も不可欠です。
不審なアクセスやメッセージ送信を早期に検知するために、ログ監視とアラート機能 の整備を行いましょう。

  • 不正ログイン・大量送信などの異常検知

  • ログの自動保存・エクスポート機能

  • SIEMなど外部監視システムとの連携

Rocket.Chatでは、詳細な監査ログの取得機能 に加えて、外部セキュリティツールとの連携API も提供されており、既存のセキュリティ基盤に組み込むことが容易です。

従業員教育と情報セキュリティ意識の強化

最後に、セキュリティの最も弱い部分は「人」 であることを忘れてはいけません。
いかにシステムを堅牢化しても、誤送信や認証情報の使い回しなど、従業員の不注意が原因となる事故は多発しています。

  • 定期的なセキュリティ研修の実施

  • 機密情報取り扱いのルール化

  • フィッシング対策やソーシャルエンジニアリング教育

さらに、Rocket.Chatのようにメッセージの編集履歴や削除ログを保持できるチャットツールを活用すれば、誤送信後の対応や監査も容易になります。

安全性と柔軟性を両立する「Rocket.Chat」という選択肢

ビジネスチャットにおけるセキュリティ対策を強化する上で注目すべきなのが、オンプレミス型チャットプラットフォーム「Rocket.Chat」 です。
多くのクラウド型チャットサービスでは、データが外部サーバー上に保管されるため、情報漏洩リスクや法的コンプライアンス対応に課題を抱える企業も少なくありません。

Rocket.Chatは、以下のような点で高いセキュリティ性と柔軟性を両立しています。

  • 完全オンプレミス運用が可能:自社サーバーでのデータ管理により、機密情報を外部に出さずに安全に運用。

  • きめ細やかなアクセス制御:ユーザー権限・チャンネル単位での厳格なアクセス管理が可能。

  • 暗号化通信・監査ログ対応:TLSによる通信暗号化、操作履歴の完全トレースが可能。

  • カスタマイズ性の高さ:APIやマーケットプレイスを通じて社内システムとの連携が容易。

特に、金融機関・医療・官公庁・製造業 など、機密情報を扱う業界では、クラウド型よりも 自社環境で完結できるチャット基盤 が求められています。
Rocket.Chatは、こうした要件に応える国内外の実績を持つ、安全性重視のビジネスチャットソリューションです。

まとめ — セキュリティは「コスト」ではなく「信頼への投資」

ビジネスチャットのセキュリティ対策は、単なるコストではなく、顧客・取引先・従業員からの信頼を守るための投資 です。
アクセス制御・脆弱性診断・監視体制の整備を継続的に行うことで、企業全体の情報セキュリティレベルを高めることができます。そして、その基盤となるチャットプラットフォームを選ぶ際は、機能性だけでなくセキュリティ設計の自由度と運用のしやすさ に注目することが重要です。
Rocket.Chatは、その両立を実現できるソリューションのひとつといえるでしょう。

Rocket.Chatコミュニティ版(無料版)案内URLRocket.Chat Community edition

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Rocket.Chatソリューションカタログ

この記事の執筆・監修者
島村 奉明
三和コムテック株式会社
Rocket.Chatプロダクトマネージャー
PCハードメーカーの企画営業としてエンタープライズ企業を担当、2023年三和コムテックに入社。
新規ソリューションの営業・企画面にて参画。中小企業から年商1,000億円以上の企業まで幅広く対応。
PCIDSS保持に関するセキュリティソリューションの導入を支援。脆弱性診断系を専門分野とする。
近年は、金融機関、カード会社、流通事業者へのセキュリティコミュニケーションツールとしてオンプレミスチャットの導入を推進。Security情報の啓蒙活動に従事し、お客様イベントにて講演多数。
2児の父。趣味は週末に家族でワイワイお出かけすることでリフレッシュしています!

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