ネット証券で急増する不正取引の実態とは?
最新データ・逮捕事例・対策まとめ

 2025.12.08  岡山 大

2024年以降、日本国内のネット証券で発生した「不正アクセス・不正取引」問題が深刻化しています。金融庁の発表によって被害は顕在化し、口座乗っ取りによる株式の不正売買・マルウェア感染・認証情報の漏洩など、多数の金融犯罪が確認されています。本記事では最新データ、逮捕事例、犯罪の手口、日本企業・証券会社が取るべきセキュリティ対策を詳しく解説します。

この記事でわかること

  • ネット証券で急増した不正アクセス・不正取引の最新動向
  • 11月に逮捕された事件から見える、証券口座乗っ取りの手口と犯罪の構造
  • 不正アクセスが「組織的犯罪」に発展している可能性と、犯人特定が困難な理由
  • 認証情報漏洩・マルウェア感染を早期に把握するために企業が取るべき実践的な対策
  • 「ZERO DARKWEB」・「OSINTサービス」・「アタックサーフェス管理」など、脅威情報監視が不正取引防止にどう貢献するか

この記事を読むことで、日本のネット証券を中心に急増している 不正アクセス・不正取引の全体像 を正しく理解できます。また、逮捕事例から読み解ける 攻撃者の手口・組織的犯罪の構造、そして企業・金融機関の セキュリティ担当者が“まず何をすべきか” が明確になります

日本国内ネット証券で発生した不正取引問題の概要

Stock market data on LED display

今年に入ってから発生したネット証券での不正取引問題は、2024年5月に金融庁が被害状況を公表したことで一気に社会問題化 しました。
金融庁がまとめた日本国内の不正アクセス・不正取引のデータは以下の通りです。

  • 6月以降は不正アクセス数・被害額が減少傾向
  • しかし 10月時点でも不正アクセス693件、被害額190億円 と依然として高水準
  • 今年の累計ではアクセス数16,641件、被害額7,000億円以上

被害の規模から見ても、ネット証券は攻撃者にとって依然として魅力的なターゲットであることが分かります。

参照: https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/chuui_phishing/20251110.pdf

SCT Security Solution Book

11月に逮捕された容疑者と、不正取引の手口とは

A confident young hacker working hard on solving online password codes concept with a computer keyboard and illustrated digital screen, numbers in the background-2

2024年11月28日、日本国内でようやく ネット証券口座を悪用した不正取引に関与した容疑者が逮捕 されした。

逮捕された容疑内容

  • 中国籍の2名を金融商品取引法違反(相場操縦)
  • 不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕

犯行手口(日本の報道で判明している内容)

  • 乗っ取った10名分の証券口座にログイン
  • 犯人が高値で売り注文を出した銘柄に対し、乗っ取り口座で買いを入れる
  • その差額 約860万円の不正利益

罰則の重さ

相場操縦の法定刑は「10年以下の拘禁刑」または「3,000万円以下の罰金(または両方)」と非常に重いものです。

しかし被害全体から見れば“氷山の一角”…
組織的犯罪の可能性も

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今回逮捕されたのは、判明している不正アクセス16,641件のうち、わずか10口座に関わるもの に過ぎません。

  • 少なくとも 100社以上の株価操作に関与した疑い
  • 海外に首謀者がいるとみられ、組織的犯罪(犯罪エコシステム) の様相
  • 犯行から逮捕まで8ヶ月以上
  • 相場操縦は時効が10年 → 捜査の困難さが極めて高い

攻撃者側から見れば「成功率の高い、リスクの低い金融犯罪」 と言えるのが現状です。

日本国内のネット証券・投資家にとって、今後も同種の攻撃が継続するリスクは高いと言えます。

参照:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD26B180W5A121C2000000/

ネット証券の口座乗っ取りを防ぐには?

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パスキーなど多要素認証の普及が急務

現在、ネット証券でも MFA(多要素認証)やパスキー対応が急速に進んでいますが、
実装コストや既存システムの問題で、全面導入はまだ難しい状況 です。

認証情報の漏洩・マルウェア感染の早期検知が重要

対策を万全にできない以上、外部に流出したクレデンシャル情報や、マルウェア感染の兆候を早期に把握する仕組み が不可欠です。

特に日本国内企業では、

  • ダークウェブ上の流出情報
  • 不正ログイン兆候
  • 攻撃者のC2通信

などの情報を収集する 脅威インテリジェンス(Threat Intelligence) の重要性が高まっています。

 

当社が提供する不正アクセス・不正取引対策サービス

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弊社では、以下の脅威検知・リスク管理サービスを提供しています。

ZERO DARKWEB(ダークウェブ・認証情報漏洩モニタリング)

自社のメールアドレスに紐づいたドメインをポータルに登録するだけで、「従業員アカウントのクレデンシャル(社員のメールアドレス・パスワード)漏洩有無」を自動で確認できるサービスです。インフォスティラーマルウェアへの感染の有無も確認可能です。

OSINTサービス(広範な脅威情報の収集・調査)

お客様の組織に関するキーワードを基に、攻撃者が収集対象とするような情報、リスクに関する情報をウェブ上から調査、報告いたします。攻撃者目線で収集した情報から自組織の対策にご活用ください。

 関連ページ
OSINTサービス紹介ページ

アタックサーフェス管理(ASM)

企業や組織が、外部からの攻撃にさらされる可能性のある全てのIT資産を把握・監視し、サイバー攻撃から防御できるようにする技術や取り組みです。攻撃対象になりうるIT資産を継続的に特定し、適切なセキュリティ対策をすることで新しい脅威から自組織を守ります。

ネット証券のように 「アカウント乗っ取りのリスクが高い業種」 においては、これらを組み合わせることで、不正アクセスの早期発見と被害最小化が可能になります。

まとめ:日本のネット証券における不正取引は「今も現在進行形」

ネット証券の不正取引は、累計 16,641件・7,000億円超 と依然深刻で、多くの事案が未解明のまま残っています。今回の逮捕も全体のごく一部にすぎず、組織的犯罪の可能性を考えると、今後も被害が続くことは避けられません。多要素認証の導入が進む一方、コストやシステム面の課題から、すぐに全社的な強化が難しい企業もあります。だからこそ、攻撃の兆候を早期に捉える“脅威情報の収集と可視化”が最も実効性のある対策 となります。

当社では、

  • クレデンシャル漏洩監視(ZERO DARKWEB)
  • OSINTサービス
  • アタックサーフェス管理

など、リスク可視化に直結するサービスを提供しています。

不正取引が現在進行形で続く今こそ、被害を未然に防ぐための“見える化”“早期対応”の仕組みづくりが不可欠です。

ZERO DARKWEB

この記事の執筆・監修者
岡山 大
三和コムテック株式会社
セキュリティソリューションプロダクトマネージャー
OEMメーカーの海外営業として10年間勤務の後、2001年三和コムテックに入社。
新規事業(WEBセキュリティ ビジネス)のきっかけとなる、自動脆弱性診断サービスを立ち上げ(2004年)から一環して、営業・企画面にて参画。 2009年に他の3社と中心になり、たち上げたJCDSC(日本カードセキュリティ協議会 / 会員企業422社)にて運営委員(現在,運営委員長)として活動。PCIDSSや非保持に関するソリューションやベンダー、また関連の審査やコンサル、などの情報に明るく、要件に応じて、弊社コンサルティングサービスにも参加。2021年4月より、業界誌(月刊消費者信用)にてコラム「セキュリティ考現学」を寄稿中。

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