40ドルのPC遠隔操作ソフト「黒い闇」摘発　世界50万台が被害

他人のパソコンを簡単に乗っ取り遠隔操作ができるソフトウエアによって、世界約100カ国で50万台以上が被害に遭っていた事件が摘発されました。米連邦捜査局（FBI）と欧州16カ国の捜査当局が協力し、2014年5月20日までに開発者や利用者97人を逮捕しました。

「ブラックシェーズ（黒い闇）」と呼ばれるこのソフトはわずか40ドルで購入でき、感染させたパソコンからデータやパスワードを盗み出したり、搭載カメラで盗撮したりできるものです。日本でもパソコン遠隔操作事件が波紋を広げていますが、誰もが危険なサイバー犯罪者になれてしまうソフトの存在は衝撃的です。

「安く手に入れることができ、簡単に使えるが、機能は洗練され、侵入能力も驚異的だ」　米国のプリート・バララ連邦検事はAP通信に、ブラックシェーズについてこう語っております。

欧米メディアによると、FBIと欧州捜査当局は先週、各国で一斉摘発に踏み切り、2日間で359カ所の家宅捜索を実施しました。ソフトを開発・販売した主犯格のスウェーデン人（24）を東欧のモルドバで逮捕したほか、ハッカー90人以上を捕まえております。ハッカーたちは情報交換サイトで摘発を知ったそうですが、その時は手遅れだったそうです。

FBIの調べによると、ブラックシェーズは「リモートアクセスツール（RAT）」と呼ばれる違法ソフトの一種のようです。2010年から闇サイトなどで販売され、約35万ドル（約3500万円）の売り上げがあったそうです。

ターゲットのパソコンに交流サイト（SNS）などを通じてメッセージやメールを送信。相手が記載されたリンクをクリックすると、ウイルスがダウンロードされ乗っ取られてしまいます。

FBIのサイバー犯罪捜査チームの責任者、レオ・タデオ氏は米CNNテレビに、「簡単に（感染を）検知できないうえ、犯罪組織はソフトを次々とアップデートし、被害が広がった」と指摘しております。

ソフトを利用したハッカーたちは、保存されているデータやパスワードを盗み出し悪用しておりました。
また、パソコンを停止させ、「警告！　あなたのパソコンはロックされ、データは暗号化されました」とのメッセージとともに、復旧のための手数料を要求する脅迫状と、振込先の銀行口座を送り付ける事件も起きております。

このほか、保存写真を盗み見したり、大音量でメッセージを流して相手を驚かしたりする悪質な嫌がらせもあったようです。

それだけではなく、全米を驚愕させたのが、昨年（2013年）のミス・ティーンUSAに選ばれたキャシディ・ウルフさん（19）が遭った被害です。元同級生の男子学生（20）が彼女の寝室のパソコンを遠隔操作し、裸の画像を盗撮。それをメールで送り付け、「言うことを聞かないと画像を流出させる」と脅迫したそうです。学生は約1年間、彼女の寝室をのぞき見していたといい、今年3月に禁錮1年半の判決を言い渡されております。

バララ連邦検事は「たった40ドルで、世界中の人々を危険なサイバー犯罪者に仕立ててしまう」と警告しました。
「最もプライベートな場所をのぞき見され、心の傷になっている。これは誰の身にも起きる可能性がある事件です」CNNの報道番組に出演したウルフさんもこう訴えております。彼女はパソコンを買い換え、カメラのレンズには上からステッカーを貼ったそうです。