近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やテレワークの普及に伴い、企業や組織における「サイバーセキュリティ」の重要性がかつてないほど高まっています。インターネット空間における脅威は日々巧妙化しており、サイバー攻撃による被害は、機密情報の漏えいや金銭的損失にとどまらず、事業の停止や社会的信用の失墜にまで発展する深刻なリスクをはらんでいます。
「サイバーセキュリティとは具体的に何を指すのか」「情報セキュリティとはどう違うのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。結論から申し上げますと、サイバーセキュリティとは、デジタル化された情報の改ざんや漏えいを防ぐための技術的・組織的な対策の総称であり、現代において企業の資産を守り、業務を継続させるために欠かせない経営課題そのものです。
本記事では、サイバーセキュリティの基礎的な定義から、情報セキュリティとの違い、ランサムウェアやフィッシングといった代表的なサイバー攻撃の種類、そして企業が実施すべき具体的な対策までを網羅的に解説します。専門的な知識がない方でも理解できるよう丁寧に説明しますので、自社のセキュリティ体制を見直し、安全なIT環境を構築するための参考にしてください。
この記事で分かること
- サイバーセキュリティの定義と情報セキュリティとの違い
- 企業がサイバー攻撃対策を講じるべき理由と法的責任
- 代表的な攻撃手法(マルウェア、不正アクセス等)とその対策
- セキュリティ対策を成功させるための具体的なポイント
サイバーセキュリティとはどのようなものか?
現代のビジネスや日常生活において、デジタル技術はなくてはならない存在となりました。しかし、インターネットやネットワークへの依存度が高まるにつれて、悪意ある第三者によるサイバー攻撃のリスクも急増しています。ここでは、サイバーセキュリティの基本的な定義や、混同されがちな情報セキュリティとの違い、そして日本における法的基盤であるサイバーセキュリティ基本法について解説します。
サイバーセキュリティの定義
サイバーセキュリティとは、インターネットやコンピュータネットワークに接続されたシステム、およびそこに含まれるデータを、悪意のある攻撃や不正アクセス、改ざん、漏えいなどから保護するための技術や対策の総称です。
具体的には、PCやスマートフォンなどの端末、サーバー、ネットワーク機器、そしてそれらを通じて扱われる情報の「機密性(Confidentiality)」「完全性(Integrity)」「可用性(Availability)」の3要素(CIA)を維持することが求められます。
日本の法律である「サイバーセキュリティ基本法」では、電子的・磁気的な記録(デジタルデータ)の漏えい等を防ぐための安全管理措置、および情報システムやネットワークの安全性・信頼性を確保することと定義されています。単にウイルスを防ぐだけでなく、システムが正常に稼働し続けられる状態を保つことも、サイバーセキュリティの重要な役割です。
情報セキュリティとサイバーセキュリティの違いは?
「情報セキュリティ」と「サイバーセキュリティ」は頻繁に同義として扱われますが、厳密には対象とする範囲と視点が異なります。
情報セキュリティは、デジタルデータだけでなく、紙の書類や会話の内容など、アナログな情報も含めた「すべての情報資産」を守るための広範な概念です。一方で、サイバーセキュリティは情報セキュリティの一部であり、特に「サイバー空間(インターネットやデジタルネットワーク)」にある情報の保護に焦点を当てています。
両者の違いを整理すると以下のようになります。
| 比較項目 | 情報セキュリティ | サイバーセキュリティ |
|---|---|---|
| 対象範囲 | アナログ・デジタルを問わないすべての情報資産(紙媒体、会話、知識などを含む) | サイバー空間(インターネット、ネットワーク、デジタルシステム)にある情報資産 |
| 主な目的 | 情報の機密性・完全性・可用性の維持(CIAの確保) | サイバー攻撃や不正アクセスからの防御、デジタルデータの保護 |
| 脅威の例 | 書類の紛失・盗難、盗聴、誤送信、災害による消失など | マルウェア、不正アクセス、DDoS攻撃、フィッシング詐欺など |
つまり、企業がセキュリティ対策を考える際は、広い意味での「情報セキュリティ」ポリシーを策定した上で、その中のデジタル領域に対する具体的な防御策として「サイバーセキュリティ」を位置づけることが重要です。
サイバーセキュリティ基本法の概要
日本国内において、サイバーセキュリティ対策の法的根拠となっているのが「サイバーセキュリティ基本法」です。2014年(平成26年)11月に成立し、サイバー空間における国家の安全と公共の利益を守るための基本理念や責務が定められました。
この法律では、国や地方公共団体だけでなく、重要社会基盤事業者(インフラ事業者)やサイバー関連事業者、そして教育研究機関などに対し、それぞれの立場で自主的かつ積極的にサイバーセキュリティの確保に努めるよう求めています。また、内閣に「サイバーセキュリティ戦略本部」を設置し、国家全体で統一的な対策を推進する体制が整備されました。
企業にとっても、この法律はセキュリティ対策が単なる自衛手段ではなく、社会的責任の一部であることを示しています。法令遵守(コンプライアンス)の観点からも、基本法の理解と適切な対応が必要です。
サイバーセキュリティの全体像や具体的なソリューションについてさらに詳しく知りたい方は、以下の資料も参考にできます。
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なぜサイバーセキュリティ対策が必要なのか?

現代のデジタル社会において、企業や組織がサイバーセキュリティ対策を講じることは、もはや選択肢ではなく必須の経営課題となっています。インターネットへの依存度が高まるにつれて、サイバー攻撃の手口は高度化・巧妙化しており、対策を怠ることで生じるリスクは計り知れません。ここでは、なぜサイバーセキュリティ対策が不可欠なのか、その理由を3つの視点から詳しく解説します。
企業データの保護と業務継続
企業にとって、顧客情報や従業員の個人情報、独自の技術情報、財務データなどは極めて重要な資産です。これらのデータが外部に漏えいした場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜といった甚大な被害を受ける可能性があります。サイバーセキュリティ対策を適切に実施することで、これらの重要データを不正アクセスや窃取から保護できます。
また、事業の継続性(BCP:Business Continuity Plan)を確保する観点からも対策は欠かせません。例えば、ランサムウェアによって基幹システムが暗号化されると、業務が完全に停止し、復旧までに多大な時間とコストを要することがあります。定期的なバックアップやネットワークの監視を行うことで、万が一攻撃を受けた際でも被害を最小限に抑え、迅速に業務を再開できます。
法的要件の遵守と社会的責任
企業活動を行う上で、国内外の法規制やガイドラインを遵守することは義務です。日本では「個人情報保護法」、欧州では「GDPR(一般データ保護規則)」など、データの取り扱いに関する規制は年々厳格化しています。適切なセキュリティ対策を講じていない場合、これらの法令違反となり、高額な制裁金や罰金が科されるリスクがあります。
さらに、企業には社会的責任(CSR)としてのセキュリティ対策も求められます。近年では、セキュリティ対策が不十分な中小企業を「踏み台」にして、取引先の大手企業を攻撃する「サプライチェーン攻撃」が増加しています。自社が被害者になるだけでなく、加害者として取引先や顧客に迷惑をかけないためにも、強固なセキュリティ体制を構築し、信頼性を確保することが重要です。
サイバー攻撃による被害はどれほど深刻か?
サイバー攻撃による被害は、金銭的な損失にとどまらず、企業の存続に関わるほど深刻な影響を及ぼす場合があります。被害の内容は多岐にわたり、主に以下のような損害が想定されます。
| 被害の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 金銭的損失 | システム復旧費用、専門家への調査依頼費、損害賠償金、身代金の支払い(ランサムウェアの場合)、業務停止による逸失利益など。 |
| 信用の失墜 | 情報漏えいやサービス停止による顧客離れ、ブランドイメージの低下、株価の下落など。 |
| 業務の長期停止 | システムの再構築やデータの復元に数週間から数ヶ月を要し、その間通常のビジネス活動ができなくなる。 |
実際に、2024年6月に発生したニコニコ動画を運営するKADOKAWAグループへのサイバー攻撃では、ランサムウェアを含む大規模な攻撃により、サービスの長期停止や個人情報の漏えいが発生しました。復旧までには約2ヶ月を要し、特別損失として数十億円規模の影響が出ると報じられています。このように、一度の攻撃が企業経営に与えるインパクトは計り知れません。
KADOKAWAグループへの攻撃事例については、以下の記事でも詳しく解説しています。
ニコニコ動画が襲われた!サイバー攻撃の恐怖と対策
また、総務省の資料によると、サイバー攻撃の検知数は年々増加傾向にあり、IoT機器を狙った攻撃なども顕著になっています。企業規模に関わらず、あらゆる組織が標的となり得るのが現状です。
代表的なサイバー攻撃の種類とは?

サイバー攻撃とは、インターネットやネットワークを通じて行われる悪意のある活動の総称です。攻撃者は金銭の窃取、組織の社会的信用の失墜、政治的な目的など、さまざまな動機でシステムやデータへの不正アクセスを試みます。
攻撃の手口は日々巧妙化しており、その種類を正しく理解することが対策の第一歩です。ここでは、主要なサイバー攻撃を4つのカテゴリーに分類して解説します。
| カテゴリー | 主な攻撃手法 | 特徴 |
|---|---|---|
| マルウェア | ウイルス、ランサムウェア、トロイの木馬 | 悪意のあるプログラムに感染させ、データの破壊や窃取を行う |
| 対人攻撃 | フィッシング、ソーシャルエンジニアリング | 人の心理的な隙やミスにつけ込み情報を盗む |
| システム攻撃 | DDoS攻撃、SQLインジェクション | システムの脆弱性を突き、停止や改ざんを狙う |
| 不正アクセス | パスワードリスト攻撃、ブルートフォース攻撃 | 認証情報を突破し、本人になりすまして侵入する |
マルウェア(ウイルス/ランサムウェア)
マルウェア(Malware)は「Malicious Software(悪意のあるソフトウェア)」の略称で、コンピューターやスマートフォンに不利益をもたらすプログラムの総称です。感染すると、データの流出やシステムの破壊といった深刻な被害を引き起こします。
ウイルス
ウイルスは、他の正常なプログラムファイルの一部に自身のコードを書き込み、寄生して増殖するマルウェアです。宿主となるファイルが開かれることで活動を開始し、感染を広げます。単独では存在できず、感染対象が必要な点が生物のウイルスに似ていることから名付けられました。
ランサムウェア
ランサムウェアは、感染したコンピューター内のデータを勝手に暗号化し、復号(元に戻すこと)と引き換えに身代金(Ransom)を要求するマルウェアです。近年、企業や医療機関を狙った被害が急増しており、バックアップデータまで暗号化されるケースも少なくありません。
2024年6月に発生したKADOKAWAグループへのサイバー攻撃も、ランサムウェアによる深刻な被害事例の1つです。詳細な事例については、以下の記事で解説しています。
トロイの木馬とスパイウェア
トロイの木馬は、便利なツールや無害な画像ファイルなどを装ってコンピューター内部に侵入するマルウェアです。ウイルスとは異なり自己増殖はしませんが、バックドア(裏口)を作成し、外部からの遠隔操作を可能にします。
また、スパイウェアはユーザーが気付かないうちにインストールされ、キーボードの入力履歴や閲覧履歴などの個人情報を収集して外部へ送信します。正規のソフトウェアに同梱されて入り込むケースもあるため、インストール時には注意が必要です。
フィッシングとソーシャルエンジニアリング
技術的な脆弱性ではなく、人間の心理的な隙や行動のミス(ヒューマンエラー)を狙った攻撃手法です。セキュリティソフトだけでは防ぎきれない場合が多く、従業員一人ひとりのセキュリティ意識が問われます。
フィッシング詐欺
フィッシングは、実在する企業(銀行、クレジットカード会社、配送業者など)や公的機関を装った偽のメール(フィッシングメール)やSMS(スミッシング)を送りつけ、偽のWebサイトへ誘導する手口です。そこでID、パスワード、クレジットカード番号などを入力させ、情報を盗み取ります。
近年では、業務上の取引先や経営層になりすまして金銭を騙し取る「ビジネスメール詐欺(BEC)」も増加しており、文面が巧妙化しているため見分けるのが困難になっています。
ソーシャルエンジニアリング
ソーシャルエンジニアリングは、デジタル技術を使わずに、人間の心理操作や物理的な手段で情報を盗む手法です。代表的な例として以下のようなものがあります。
- ショルダハッキング(ショルダーハッキング):パスワード入力時などに、後ろから肩越しにキー操作や画面を盗み見る行為。
- トラッシング(ゴミ箱漁り):ゴミ箱に捨てられた書類や記憶媒体から、機密情報を探し出す行為。
- 電話による聞き出し:システム管理者や関係者を装って電話をかけ、パスワードや内部情報を聞き出す行為。
最新のセキュリティ動向や対策手法を学びたい方へ
サイバー攻撃の手口は常に変化しています。最新の脅威トレンドや具体的な対策を知るために、専門家の知見を取り入れましょう。
ネットワークやシステムへの直接攻撃
ネットワークやサーバーの脆弱性を突き、システムそのものを停止させたり、不正に操作したりする攻撃です。企業のサービス提供を妨害し、甚大な損害を与える可能性があります。
DDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)
DDoS攻撃は、攻撃者が乗っ取った複数のコンピューター(ボットネット)から、標的となるサーバーやWebサイトに対して一斉に大量のアクセスやデータを送りつける攻撃です。サーバーの処理能力をパンクさせ、サービスをダウンさせることで、正規のユーザーが利用できない状態にします。
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、Webアプリケーションの入力フォームなどに不正なSQLコマンド(データベースへの命令文)を入力し、データベースを不正に操作する攻撃です。これにより、顧客情報の漏えいやデータの改ざん、消去といった被害が発生します。
SQLインジェクションの仕組みや対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
SQLインジェクションとは?攻撃の種類や防ぐ方法を分かりやすく解説!被害事例の紹介も
ゼロデイ攻撃
ソフトウェアやOSにセキュリティ上の欠陥(脆弱性)が発見された際、メーカーが修正プログラム(パッチ)を提供する前の無防備な期間を狙って行われる攻撃です。「修正までの日数(Day)がゼロ」であることから、ゼロデイ攻撃と呼ばれます。対策が間に合わない状態で攻撃されるため、防ぐことが非常に難しい脅威の1つです。
サプライチェーン攻撃
セキュリティ対策が強固な大企業を直接攻撃するのではなく、その取引先や関連会社、利用しているソフトウェアサービスなど、セキュリティが比較的脆弱な「サプライチェーン(供給網)」の弱点を経由して、本命の標的へ侵入する手口です。
パスワードリスト攻撃などの不正アクセス
正規のユーザーになりすましてシステムに侵入する「不正アクセス」も後を絶ちません。特にパスワード管理の甘さが狙われています。
パスワードリスト攻撃
パスワードリスト攻撃は、攻撃者が何らかの方法で入手したIDとパスワードのリスト(漏えいしたアカウント情報)を使い、別のWebサービスやシステムへのログインを試みる攻撃です。多くのユーザーが複数のサービスで「パスワードの使い回し」をしている実態を悪用した手口であり、1つのサービスで情報が漏れると、芋づる式に被害が拡大するリスクがあります。
ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)
ブルートフォース攻撃は、IDに対して考えられるパスワードの組み合わせを、「aaaa」「aaab」のように総当たりで試してログインを突破しようとする手法です。時間はかかりますが、単純で短いパスワードを設定している場合、突破される可能性が高くなります。
これらの攻撃を防ぐためには、推測されにくい複雑なパスワードの設定に加え、多要素認証(MFA)の導入が有効な対策となります。
実施すべきサイバーセキュリティ対策とは?
企業や組織がサイバー攻撃から情報資産を守るためには、攻撃の侵入を防ぐ「入口対策」、侵入後の被害拡大を防ぐ「内部対策」、そして万が一の事態に備える「出口対策」などを組み合わせた多層的な防御が必要です。ここでは、企業が優先的に実施すべき具体的なサイバーセキュリティ対策について解説します。
ファイアウォールとウイルス対策ソフトの導入
基本的なセキュリティ対策として、ネットワークの境界を守るファイアウォールと、個々のデバイスを守るウイルス対策ソフトの導入が挙げられます。
ファイアウォールは、外部ネットワーク(インターネットなど)と社内ネットワークの間に設置し、不正なアクセスや通信を遮断する役割を果たします。許可された通信のみを通すことで、外部からの攻撃を防ぐことができます。企業では、外部からの攻撃だけでなく、内部からの不正な通信も監視し、ネットワーク全体を守るために利用されています。
一方、ウイルス対策ソフトは、PCやサーバーなどのエンドポイントに導入し、マルウェアの侵入検知や駆除を行います。ファイアウォールをすり抜けて侵入した脅威や、USBメモリなどから感染するリスクに対処できます。リアルタイムでのシステム監視や定期的なスキャンを通じて、既知の脅威を検出し、感染したファイルを隔離または削除します。
両者の違いと役割は以下の通りです。
| 対策の種類 | 主な役割 | 防御対象 |
|---|---|---|
| ファイアウォール | 不正アクセスの遮断、通信制御 | ネットワーク全体 |
| ウイルス対策ソフト | マルウェアの検知・駆除 | 個々のデバイス(PC、サーバーなど) |
多要素認証(MFA)とアクセス制御の強化
IDとパスワードによる認証だけでは、情報漏えいのリスクを完全に防ぐことは困難です。そこで重要となるのが、多要素認証(MFA)の導入とアクセス制御の強化です。
多要素認証(MFA)とは、パスワード(知識情報)に加え、スマートフォンへの通知(所持情報)や指紋・顔認証(生体情報)など、異なる2つ以上の要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。これにより、万が一パスワードが盗まれた場合でも、攻撃者は追加の認証要素を持っていない限りシステムにアクセスできないため、アカウントのセキュリティが大幅に強化されます。
また、システムやデータへのアクセス権限を必要最小限に絞る「アクセス制御」も重要です。これを「最小権限の原則」と呼びます。従業員の役割や業務内容に応じて適切な権限を付与し、退職者や異動者のIDは速やかに削除・変更することで、内部不正や不正利用のリスクを低減できます。
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データの暗号化とバックアップ
情報漏えいやランサムウェア被害に備え、データの暗号化と定期的なバックアップを実施することも不可欠です。
データの暗号化を実施することで、PCの紛失や盗難、あるいはサイバー攻撃によってデータが持ち出された場合でも、第三者による解読を困難にし、情報漏えいの被害を最小限に抑えられます。PCのハードディスク全体の暗号化や、通信経路(SSL/TLS)の暗号化などが有効です。
また、ランサムウェアによってデータが暗号化され、利用できなくなるケースが増えています。こうした事態に備え、定期的にデータをバックアップし、システムを復旧できる体制を整えておくことが重要です。バックアップデータ自体が感染しないよう、ネットワークから切り離した場所に保管するなどの対策も推奨されます。
ネットワークセグメンテーションの活用
ネットワークセグメンテーションとは、社内ネットワークを部署やシステムごとに分割(セグメント化)する手法です。
ネットワークを細分化することで、万が一ある部門のPCがマルウェアに感染しても、他のセグメントへの感染拡大(ラテラルムーブメント)を防ぐことができます。例えば、機密情報を扱う人事・経理部門のネットワークと、インターネット接続が多い営業部門のネットワークを分離することで、リスクを局所化できます。
VLAN(仮想LAN)などの技術を活用し、セグメント間の通信をファイアウォールで厳密に制御することで、セキュリティレベルを向上させることが可能です。
セキュリティ対策を成功させるポイントは?

サイバーセキュリティ対策を成功させるためには、ファイアウォールやウイルス対策ソフトといった技術的なツールの導入だけでは不十分です。日々の運用管理や、システムを利用する「人」の意識改革を含めた包括的な取り組みが求められます。ここでは、セキュリティレベルを維持し、リスクを最小限に抑えるために組織として実施すべき重要なポイントを解説します。
強力なパスワード設定と管理
パスワードは、システムやデータへのアクセスを守るための最初の砦です。しかし、推測されやすいパスワードや複数のサービスでの使い回しは、不正アクセスの主要な原因となっています。セキュリティ対策を成功させるためには、第三者に特定されにくい強力なパスワードの設定と適切な管理が不可欠です。
具体的には、以下の要素を満たすパスワードの使用が推奨されます。
- 十分な長さを確保する:英大文字・小文字・数字・記号を混在させ、推測困難な文字列にする。
- 使い回しをしない:1つのサービスでパスワードが漏えいしても、他のサービスへの被害拡大を防ぐため、サービスごとに異なるパスワードを設定する。
- 多要素認証(MFA)と組み合わせる:パスワードだけに依存せず、スマートフォンなどの別端末を用いた認証を追加する。
また、従業員が多数の複雑なパスワードを記憶することは困難であるため、信頼性の高いパスワード管理ツール(パスワードマネージャー)の導入も有効な手段です。これにより、安全性を保ちながら利便性を損なわずに運用できます。
参考:不正アクセス対策の基本(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)
脆弱性を防ぐパッチ管理の徹底
サイバー攻撃の多くは、OS(オペレーティングシステム)やソフトウェアの「脆弱性(セキュリティ上の欠陥)」を悪用して行われます。ベンダーから提供される修正プログラム(パッチ)を適用せずに放置していると、攻撃者にとって格好の標的となります。
特に近年では、脆弱性が発見されてから実際に攻撃が行われるまでの期間が短縮化しているため、迅速な対応が必要です。パッチ管理を徹底するためには、以下の運用を確立することが重要です。
- 資産の把握:社内で利用しているハードウェア、ソフトウェア、バージョン情報を正確に管理する。
- 情報の収集:ベンダーやセキュリティ機関から発信される脆弱性情報を常にチェックする体制を作る。
- 迅速な適用:重要なセキュリティ更新プログラムは、検証を行った上で速やかに適用する。可能な場合は自動更新機能を有効にする。
VPN機器やサーバーだけでなく、従業員が使用するPCや業務アプリケーションのアップデートも忘れずに行うことで、システム全体の堅牢性を高めることができます。
従業員へのセキュリティ教育はどう行うべきか?
どれほど高度なセキュリティシステムを導入しても、従業員の不注意や知識不足によるミスを完全に防ぐことはできません。フィッシングメールの開封や、許可されていない外部サービスの利用(シャドーIT)、USBメモリの紛失など、人的な要因によるセキュリティ事故は後を絶たないのが現状です。
そのため、全従業員を対象とした定期的なセキュリティ教育の実施が不可欠です。教育を行う際は、単にルールを伝えるだけでなく、以下のような実践的な内容を取り入れると効果的です。
- 最新の攻撃手口の共有:実際に起きているサイバー攻撃の事例や、巧妙化するフィッシングメールの特徴を具体的に紹介し、自分事として捉えてもらう。
- 標的型攻撃メール訓練:擬似的な攻撃メールを従業員に送信し、不審なメールを見分ける力や、誤って開封した際の報告手順を確認する。
- ルールの再確認:パスワードの取り扱いや機密情報の管理方法など、基本的なセキュリティポリシーを定期的に周知する。
従業員一人ひとりがセキュリティに対する意識を高め、「怪しい」と感じたときに適切な行動が取れるようになることが、組織を守る強力な防御壁となります。
インシデント対応計画とチェックリストの作成
万全な対策を講じていても、サイバー攻撃を100%防ぐことは困難です。そのため、「攻撃を受ける可能性がある」という前提に立ち、万が一インシデント(事故)が発生した際に被害を最小限に抑えるための準備をしておくことが重要です。
具体的には、インシデント対応計画(インシデントレスポンスプラン)を策定し、緊急時の連絡体制や対応フローを明確にしておきます。誰が・いつ・何を判断し行動するのかを決めておくことで、混乱を防ぎ迅速な復旧が可能になります。
また、日常的なセキュリティ対策が適切に実施されているかを確認するために、チェックリストを作成し活用することをおすすめします。以下は、企業が確認すべき基本的なセキュリティ対策のチェックリスト例です。
| カテゴリ | チェック項目 |
|---|---|
| 体制・運用 |
|
| 技術的対策 |
|
| 認証・アクセス管理 |
|
このようなリストを用いて定期的に自己点検を行い、不足している対策があれば速やかに改善することで、セキュリティレベルを継続的に維持できます。
セキュリティに関する最新情報は日々更新されています。自社の対策状況を客観的に把握し、知識を深めるために、以下のリソースもぜひご活用ください。
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分かりやすいセキュリティ用語集を見るよくある質問(FAQ)
サイバーセキュリティと情報セキュリティの違いは何ですか?
情報セキュリティは、紙媒体を含むすべての情報の「機密性・完全性・可用性」を守る広い概念です。一方、サイバーセキュリティはその中でも「デジタル空間(サイバー空間)」にある情報の保護や、ITシステムへの攻撃を防ぐことに特化した分野を指します。つまり、サイバーセキュリティは情報セキュリティの一部であると言えます。
個人ができるサイバーセキュリティ対策にはどのようなものがありますか?
個人レベルでも実施すべき基本的な対策はいくつかあります。OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つこと、ウイルス対策ソフトを導入すること、推測されにくい複雑なパスワードを設定し使い回さないこと、そして不審なメールやリンクを安易にクリックしないことが重要です。また、重要なデータは定期的にバックアップを取る習慣をつけましょう。
サイバーセキュリティ基本法とは何ですか?
2014年に成立した日本の法律で、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本理念を定めたものです。国、地方公共団体、重要社会基盤事業者(インフラ企業など)、サイバー関連事業者などの責務を明確化し、官民が連携して対策を強化することを目的としています。
中小企業でもサイバーセキュリティ対策は必要ですか?
はい、非常に重要です。近年、大企業への攻撃の足がかりとして、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業や取引先が狙われる「サプライチェーン攻撃」が増加しています。企業規模に関わらず、情報漏洩やシステム停止は信用の失墜や多額の損害賠償につながるリスクがあるため、適切な対策が求められます。
サイバー攻撃を受けた場合、最初に何をすべきですか?
まず被害の拡大を防ぐために、感染が疑われる端末をネットワークから切断(LANケーブルを抜く、Wi-Fiを切るなど)してください。その後、速やかに組織内のセキュリティ担当者や責任者に報告し、事前に策定したインシデント対応計画(対応フロー)に従って行動します。状況に応じて警察や専門機関への相談も検討が必要です。
セキュリティ対策ソフトを入れるだけで十分ですか?
セキュリティ対策ソフトは重要ですが、それだけでは十分とは言えません。近年の攻撃手法は高度化しており、ソフトウェアの脆弱性を突く攻撃や、人の心理を巧みに操るソーシャルエンジニアリングなどは、ソフトだけでは防ぎきれない場合があります。従業員への教育、OSのアップデート、多要素認証の導入など、技術と人の両面から多層的な防御を行うことが不可欠です。
まとめ
本記事では、サイバーセキュリティの定義から、その必要性、代表的な脅威の種類、そして具体的な対策手法までを解説しました。デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、サイバーセキュリティは単なるITの問題ではなく、企業の経営課題そのものです。サイバー攻撃による被害は、業務の停止や金銭的な損失だけでなく、長年築き上げた社会的信用を一瞬で失うリスクを孕んでいます。
効果的なセキュリティ対策を実現するためには、ファイアウォールやウイルス対策ソフトといった技術的な導入に加え、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高める教育や、万が一の事態に備えたインシデント対応計画の策定が不可欠です。脅威は日々進化しているため、一度対策して終わりではなく、継続的な見直しと改善を行うことが、企業データを守り、ビジネスを継続させるための結論と言えます。
自社のセキュリティ対策を強化したい、あるいは何から始めるべきか迷っているという方は、ぜひ専門的な資料や情報を活用してください。包括的な対策ソリューションについては三和コムテック Security Solution Bookにて詳しくご紹介しています。また、最新の脅威動向や対策手法を学びたい方は、定期的に開催されているセキュリティ関連イベント・セミナー情報をチェックすることをお勧めします。
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セキュリティソリューションプロダクトマネージャー OEMメーカーの海外営業として10年間勤務の後、2001年三和コムテックに入社。
新規事業(WEBセキュリティ ビジネス)のきっかけとなる、自動脆弱性診断サービスを立ち上げ(2004年)から一環して、営業・企画面にて参画。 2009年に他の3社と中心になり、たち上げたJCDSC(日本カードセキュリティ協議会 / 会員企業422社)にて運営委員(現在,運営委員長)として活動。PCIDSSや非保持に関するソリューションやベンダー、また関連の審査やコンサル、などの情報に明るく、要件に応じて、弊社コンサルティングサービスにも参加。2021年4月より、業界誌(月刊消費者信用)にてコラム「セキュリティ考現学」を寄稿中。
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