情報セキュリティインシデントとは?
事例や対策、被害発生時の対応フローを解説

 2024.07.23  三和コムテック

情報セキュリティインシデントは、企業や組織に深刻な被害をもたらす可能性がある問題です。個人情報の漏えいやシステムの停止など、インシデントの種類や影響は多岐にわたります。

本記事では、情報セキュリティインシデントの具体例とその対策、被害が発生した際の対応フローについて詳しく解説します。

どのようにセキュリティインシデントの対策を行えばよいか知りたい。という企業のセキュリティ担当者はぜひご覧ください。

情報セキュリティインシデントとは?

情報セキュリティインシデントとは?事例や対策、被害発生時の対応フローを解説 1

情報セキュリティインシデントとは、組織や個人の情報資産に対する不正アクセスデータの漏えい改ざん破壊サービスの妨害など、情報セキュリティの侵害が発生する出来事を指します。

まずは、なぜ情報セキュリティインシデント対応が必要なのか、そしてインシデントによってどのような被害を受けるのかについて見ていきましょう。

なぜ情報セキュリティインシデント対応が必要なのか

情報セキュリティインシデント対応が必要な理由は、組織や個人に重大な損害を与える可能性があるためです。インシデントが発生した際に迅速かつ効果的に対応することで、データの損失や漏えいを最小限に抑え、システムの復旧を迅速に行えます。

また、適切な対応をとることで信頼性の回復や法的なリスクの軽減につながります。さらに、インシデント対応の計画と準備を通じて、潜在的な脅威に対する予防措置を講じることができ、将来的なインシデント発生のリスク低減も可能です。

情報セキュリティインシデントによって受ける被害

情報セキュリティインシデントが発生すると、さまざまな被害が発生する可能性があります。最も多い被害の例は、データの漏えいによる個人情報や機密情報の不正利用です。

また、システムの破壊や機能停止によって業務が中断し、経済的損失や生産性の低下が生じることもあります。さらに、顧客や取引先の信頼を失うことで、ブランドイメージの低下や市場競争力の喪失につながる恐れもあるでしょう。これらの被害を防ぐために、迅速かつ適切なインシデント対応が求められます。

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情報セキュリティインシデントにはどのようなものがあるか

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情報セキュリティインシデントは、多様な手法や目的で発生し、企業の信用や業務に重大な影響を及ぼしています。
ここでは、代表的な攻撃手法について紹介し、その対策についても詳しく解説していきます。

不正アクセス

不正アクセスとは、許可されていないユーザーがシステムやネットワークに侵入し、情報を盗み出したり、システムにダメージを与えたりする行為を指します。不正アクセスのインシデントは、一般的に弱いパスワード、未更新のソフトウェア、または脆弱なネットワーク設定を利用して行われます。攻撃者は、個人情報や企業の機密データを狙い、それを悪用したり販売したりします。

不正アクセスを防ぐためには、強力なパスワードポリシーの導入、多要素認証の実施、定期的なシステムのアップデートとセキュリティパッチの適用が必要です。

情報漏えい

情報漏えいとは、意図せずにまたは不正に、機密情報が外部に流出することを指します。このようなインシデントは、内部の従業員による不注意な行動や、悪意のある攻撃者によるデータ侵害など、さまざまな原因で発生します。

情報漏えいは企業の信用を損ない、法的な問題を引き起こす可能性があります。そのため、データの暗号化、アクセス制御、従業員へのセキュリティ教育が重要です。また、漏えいが発生した場合の迅速な対応策も不可欠です。

データ改ざん

データ改ざんとは、正当な権限を持たない者がデータを不正に変更する行為を指します。これにより、情報の信頼性が損なわれ、業務運営に支障をきたす可能性があります。改ざんされたデータが業務に使用されると、誤った判断が下されるリスクが高まります。

データ改ざんを防ぐためには、データの整合性を保つためのハッシュ関数やデジタル署名の利用、アクセスログの監視、変更履歴の追跡などの対策が求められます。

フィッシング

フィッシングは、攻撃者が信頼できる機関や人物になりすまして、個人情報や認証情報を不正に取得しようとする詐欺行為です。フィッシングメールや偽サイトを通じて、ユーザーに対して個人情報の提供や不正リンクのクリックを促します。この種の攻撃は巧妙で、一見すると正当な通信に見えるため、多くの人が騙される危険性があります。

フィッシングを防ぐためには、メールの送信者やリンクの正当性を確認し、不審なメールに対しては慎重に対応することが重要です。

なりすまし

なりすましは、攻撃者が他人のIDやパスワードを盗用して、その人物になりすます行為を指します。これにより、攻撃者は被害者の権限でシステムにアクセスし、情報を盗み出したり、業務を妨害したりします。なりすましは、特にソーシャルエンジニアリングやフィッシング攻撃と組み合わせて行われることが多く、被害の範囲が広がる恐れがあります。

このような攻撃を防ぐためには、多要素認証の導入、強力なパスワードの設定、ユーザーの監視とアラートシステムの活用が効果的です。

Emotetを含むマルウェア感染

Emotetを含むマルウェア感染は、コンピュータウイルスやトロイの木馬などの悪意のあるソフトウェアがシステムに侵入し、情報を盗んだり、システムを破壊したりする行為を指します。Emotetは特に広範な感染力を持ち、他のマルウェアをダウンロードする機能を持っています。マルウェア感染は、電子メールの添付ファイルや悪意のあるリンクを介して広がることが多いです。

マルウェアからシステムを守るためには、最新のウイルス対策ソフトウェアの導入、定期的なシステムのスキャン、不審なメールやリンクの取り扱いに注意することが必要です。

ランサムウェア

ランサムウェアは、攻撃者がシステムやデータを暗号化し、その解除のために身代金を要求するマルウェアの1種です。この攻撃は、企業や個人の重要なデータを人質に取り、金銭を支払わない限りアクセスできないようにします。ランサムウェアの感染経路は、フィッシングメールや悪意のあるWebサイト、セキュリティの脆弱性を突いた攻撃など多岐にわたります。

ランサムウェア攻撃を防ぐためには、データの定期的なバックアップ、最新のセキュリティパッチの適用、不審なメールやリンクのクリックを避けることが重要です。

DDoS攻撃

DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃は、複数のコンピュータから大量のリクエストを送信することで、ターゲットとなるシステムやネットワークを過負荷にし、サービスを停止させる攻撃手法です。この攻撃により、Webサイトやオンラインサービスが利用できなくなり、業務に大きな支障をきたします。

DDoS攻撃を防ぐためには、トラフィックの監視と異常検知、負荷分散技術の導入、クラウドベースのDDoS対策サービスの利用などが有効です。

USBメモリなどの紛失

USBメモリなどの紛失は、持ち運びが容易な記憶媒体が紛失または盗難されることで、内部に保存されている機密情報が漏えいするリスクを指します。特に未暗号化のデータが保存されている場合、情報が第三者の手に渡る可能性が高まります。

このようなインシデントを防ぐためには、記憶媒体に保存されるデータの暗号化、持ち運びに際しての厳重な管理、デバイスの追跡機能やリモート削除機能の活用が求められます。従業員のセキュリティ意識を高める教育も重要です。

インシデントが起きてしまった際の対応フロー

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情報システムにおけるインシデントは、業務の停滞や信用の低下を引き起こす重大な問題です。インシデントが発生した場合には、迅速かつ的確な対応が求められます。本章では、インシデント対応の基本的なフローを紹介します。このフローに従うことで、被害を最小限に抑え、再発防止に向けた具体的な対策を講じることができます。

1. 異常を検知し次第、迅速に責任者に通知する

インシデント対応の最初のステップは、異常の早期検知と責任者への迅速な通知です。異常を検知するためには、監視システムの整備が不可欠です。

システムのログやネットワークトラフィックの監視、エンドポイントのセキュリティ対策などを通じて、異常の兆候を迅速にキャッチしましょう。異常を検知した場合は、事前に定められた連絡手順に従い、担当者や管理者にすぐに報告する体制づくりが重要です。

報告内容も、異常の具体的な内容や発生時刻、影響範囲などを伝えると決めておくことで、次の対応がスムーズに進みます。この段階での迅速な対応が、被害の拡大を防ぐための重要なポイントです。

2. 被害の拡大や二次被害を防ぐための初期対応を行う

異常の検知と通知が完了したら、次に行うべきは被害の拡大や二次被害を防ぐための初期対応です。

まず、システムが稼働状態であれば、被害が拡大する可能性が高いため、システムの停止を検討しましょう。次に、被害の状況を把握し、重要なデータが損失することを防ぐための措置として、必要な範囲でデータのバックアップを行います。

また、ネットワークのセグメント分割やファイアウォールの設定変更など、攻撃の拡大を防ぐための対応も重要となります。これらの初期対応により、被害の範囲を最小限に抑えることができます。

3. インシデントの発生経緯や被害範囲を調査する

初期対応が完了した後は、インシデントの発生経緯や被害範囲を詳細に調査するフェーズに移ります。この調査は、インシデントの再発防止や対応策の評価に欠かせないものです。

まず、システムログやネットワークトラフィックの解析を行い、攻撃者がどのようにシステムに侵入したのかを明確にしましょう。また、攻撃の手法や使用されたマルウェアの特定も重要です。

次に、被害を受けたデータやシステムの範囲を正確に把握し、影響を受けたユーザーや取引先に対しても情報を提供します。情報を公開することで、関係者も適切な対応策を講じることができます。

4. 警察やIPAへの通知、被害者への報告を行う

インシデントの詳細が明らかになった段階で、法的な手続きを進める必要があります。

まず、警察や情報処理推進機構(IPA)などの関係機関に対して、インシデントの報告を行います。これにより、法的な支援を受けることができ、さらに同様の被害が他の組織にも広がることを防ぐための情報共有が可能になります。

また、被害を受けたユーザーや取引先に対しても、速やかに状況を報告し、謝罪と説明を行います。この際、具体的な被害内容や今後の対応策についても明確に伝えることで、信頼関係の維持に努めます。透明性のあるコミュニケーションが、信頼回復の第一歩となります。

5. 被害者への対応やシステム復旧などを行う

インシデントによって被害を受けたユーザーや取引先への対応も重要なステップです。まず、被害者の状況を把握しましょう。

そして、被害を受けたデータの復旧や、セキュリティの強化に向けたアドバイスを行います。また、システムの復旧作業も並行して進めます。代替手段の用意が可能であれば、システムが正常に稼働するまでの間、代替手段を提供しましょう。

復旧作業では、バックアップからのデータ復元や、セキュリティ対策の再設定を行います。これらの対応を通じて、被害者の信頼を取り戻し、システムの安定稼働を早期に実現することを目指します。

6. 同じ被害を繰り返さないための対策を講じる

最後に、インシデントの再発防止に向けた対策を講じることが重要です。まず、インシデントの原因を徹底的に分析し、脆弱性の修正やセキュリティ対策の強化を図ります。例えば、システムのパッチ適用や、セキュリティ設定の見直しを行います。

また、従業員のセキュリティ意識を向上させるための教育や訓練も必要です。さらに、定期的なセキュリティ監査やペネトレーションテストを実施し、常にシステムの安全性を確認します。

これらの対策を講じることで、同じようなインシデントの発生を未然に防ぎ、組織全体のセキュリティレベルを向上させることができます。

インシデントの被害を最小限に抑えるためには

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企業がサイバーセキュリティインシデントの被害を最小限に抑えるためには、総合的なセキュリティ対策が必要です。

具体的には、攻撃される可能性のある情報資産の把握、セキュリティ対策の行動指針やルールの策定と浸透、インシデント対応体制の整備、ガイドラインの活用、そして適切なセキュリティ対策ツールの導入が挙げられます。これらの各要素について詳しく説明します。

攻撃される可能性のある情報資産を把握しておく

まず、企業は自社が保有する情報資産の全体像を把握する必要があります。具体的な情報資産は以下のようなものがあります。

  • 顧客データ:氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど
  • 支払い情報:クレジットカード情報や銀行口座情報など
  • 知的財産:企業の技術情報や製品の設計図、ソースコードなど
  • 経営情報:企業の経営戦略、財務データ、人事情報、経営層のメールアカウント
  • サプライチェーン情報:取引先情報、契約内容、物流情報など
  • 従業員データ:従業員の個人情報や給与情報、健康情報
  • ITインフラの情報:ネットワーク構成、サーバー設定、セキュリティポリシー
  • ログデータ:システムの稼働状況やユーザーのアクセス履歴
  • クラウドストレージ:クラウド上に保存されたデータ
  • 移動デバイス:ノートパソコン、スマートフォン、USBメモリ

これらの資産がどこに存在し、どのように利用されているかを正確に把握することで、潜在的なリスクを特定しやすくなります。

セキュリティ対策の行動指針やルールを定め社内に浸透させる

セキュリティ対策の行動指針やルールを明確に定め、社内に浸透させることも重要です。全社員が共通の理解を持ち、適切な行動を取ることが求められます。以下の手順が効果的です。

  1. セキュリティポリシーを策定し、全社員に周知する。
  2. 定期的なセキュリティトレーニングを実施し、最新の脅威や対策について教育する。
  3. インシデント発生時の対応手順を明確にし、緊急連絡先や役割分担を明示する。
  4. セキュリティポリシーや手順の遵守状況を定期的に監査し、必要に応じて改善する。

これにより、全社員がセキュリティ意識を高め、統一された対応が可能になります。

インシデントに対応できる体制を整えておく

セキュリティインシデントに迅速かつ効果的に対応するための体制を整備することも重要です。具体的には、以下のステップを踏むとよいでしょう。

  1. インシデント対策チームを編成し、役割と責任を明確にする。
  2. インシデント対応のプロセスと手順を文書化し、全社員に周知する。
  3. 定期的にインシデント対応の訓練を実施し、実際の状況に即した対応能力を向上させる。
  4. 外部のセキュリティ専門家やサービスプロバイダーと連携し、必要な場合には支援を受ける準備をしておく。

このようにして、インシデント発生時には迅速な対応が可能となり、被害を最小限に抑えることができます。

セキュリティインシデント対策に関するガイドラインを参考にする

セキュリティインシデント対策のガイドラインを活用することも有効です。国内外の信頼性の高い機関が提供するガイドラインを参考にすることで、最新の知見とベストプラクティスを取り入れることができます。例えば、以下のようなガイドラインがあります。

  1. NIST(National Institute of Standards and Technology)の「サイバーセキュリティフレームワーク」
  2. ISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格)
  3. 日本国内のセキュリティガイドライン(例:JPCERT/CCのガイドライン)

これらのガイドラインを参考にすることで、自社のセキュリティ対策のレベルを客観的に評価し、改善点を特定することができます。

セキュリティ対策ツールを導入する

効果的なセキュリティ対策には、適切なツールの導入が欠かせません。セキュリティ対策ツールには多様な種類があり、それぞれ異なる目的と機能を持ちます。ここでは、代表的なツールの種類について詳しく説明します。

IT機器や自社システムのセキュリティ診断ツール

IT機器や自社システムのセキュリティ診断ツールは、潜在的な脆弱性を検出し、修正するために使用されます。

例えば、脆弱性スキャナーは、ネットワークやアプリケーションの脆弱性を自動的に検出し、レポートを生成できます。そして、ペネトレーションテストツールを利用すると、攻撃者の視点からシステムをテストし、実際の攻撃シナリオを模倣してセキュリティの弱点を明らかにできます。

サイバー攻撃から情報を守るためのセキュリティ強化ツール

サイバー攻撃から情報を守るためのセキュリティ強化ツールは、企業の重要なデータを保護するために不可欠です。

例えば、ファイアウォールは、不正なアクセスを防止するための基本的なツールで、ネットワークトラフィックを監視し、不審な活動をブロックします。また、侵入検知システム(IDS)侵入防止システム(IPS)は、異常なネットワーク活動をリアルタイムで検知し、必要な対策を自動的に実行可能です。さらに、暗号化ツールは、データを暗号化することで不正アクセス時でも情報漏えいを防ぐ効果があります。

社員のセキュリティ意識を高める学習ツール

セキュリティ対策は技術的なツールだけでなく、社員の意識向上も重要です。社員のセキュリティ意識を高める学習ツールとして、セキュリティ教育プラットフォームがあります。これらのプラットフォームは、インタラクティブなトレーニングやシミュレーションを提供し、社員が実際の攻撃シナリオに対処するスキルを身に付けられるよう支援してくれます。

まとめ

情報セキュリティインシデントは、企業にとって深刻な問題を引き起こす可能性があります。事前の対策と迅速な対応が被害を最小限に抑える鍵です。セキュリティインシデントへの適切な対応は、企業の信頼性と存続に直結します。

三和コムテック株式会社では、包括的なセキュリティソリューションを提供しており、企業の安全を支援しています。詳細については、ぜひサービスサイトをご覧ください。

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