「IBM i(AS400)の担当を引き継いだが、そもそもどんなシステムなのかわからない」「“古いシステム”と言われるが、本当にこのまま使い続けて大丈夫なのか」――こうした疑問を抱える情報システム部門の方は少なくありません。 IBM iは数十年にわたって基幹業務を支えてきた一方で、名称の変遷が多く、体系的に学べる日本語の情報が限られているため、全体像をつかみにくいのが実情です。 この記事では、IBM iの定義・歴史・特徴から、Windows・Linuxとの違い、最新バージョンとサポートの考え方、ユーザー企業が直面している課題までを、基礎から順を追って解説します。
対象読者
- IBM i(AS/400)の基本概要を正確に理解したい方
- 社内システムの運用保守やモダナイゼーションを担当する方
- 他OS(Windows/Linux)との違いを比較したい方
課題
- AS/400とIBM iの関係性や違いがわからない
- 古いシステムという誤解があり、今後の継続利用に不安がある
- 人材不足やクラウド移行の判断基準が明確でない
この記事で分かること
- IBM iの定義とAS/400からの歴史的な歩み
- 高い互換性を維持するアーキテクチャの5つの特徴
- 最新のクラウド動向とユーザー企業が直面する課題の解決策
本記事では、過去の業務資産を活かしながら最新技術を取り入れるIBM iの全体像と、今後のシステム戦略に必要な判断材料を具体的に解説します。
IBM iとは?

IBM iとは、企業の基幹業務を支えるために開発された、高い信頼性と独自の実装を持つオペレーティングシステム(OS)です。ここでは、IBM iの基本的な定義や、過去の名称との関係、実際に活用されている業界についてわかりやすく解説します。
IBM iの定義:IBM Power上で動く業務システム向けOS
IBM iの定義:IBM Power上で動く業務システム向けOSについて説明します。IBM iは、日本アイ・ビー・エム株式会社が開発および提供を行っているOSです。同社の高性能サーバーである「IBM Power」上で稼働し、主に企業の基幹システムを構築・運用するために利用されています。
一般的なOSとは異なり、リレーショナルデータベース(Db2 for i)やセキュリティ機能、システム運用に必要なミドルウェアがあらかじめOS内部に組み込まれているのが特徴です。これにより、導入からすぐにデータベースを利用した業務アプリケーションを構築できます。ハードウェアとOS、データベースが密接に連携するように設計されているため、複雑な設定を意識することなく、安定したシステム運用を実現できます。
IBM iの読み方と、AS/400・iSeries・System iとの関係
IBM iの読み方と、AS/400・iSeries・System iとの関係について整理します。IBM iの読み方は「アイビーエム アイ」です。ビジネスの現場では、現在でも「AS/400(エーエスヨンヒャク)」と呼ばれることが少なくありませんが、これは過去のハードウェアおよびOSの名称に由来しています。
日本アイ・ビー・エム株式会社は、時代の変化やハードウェアの進化に合わせて、製品のブランド名を複数回変更してきました。現在の「IBM i」はOSの名称であり、ハードウェアは「IBM Power」として統合されています。名称の変遷を以下の表にまとめます。
| 年代 | ハードウェア名称 | OS名称 |
|---|---|---|
| 1988年〜 | AS/400 | OS/400 |
| 2000年〜 | eServer iSeries | OS/400 |
| 2006年〜 | System i | i5/OS |
| 2008年〜現在 | IBM Power | IBM i |
このように名称は変化していますが、システムの基本設計や思想は一貫して引き継がれています。そのため、過去のAS/400向けに開発されたプログラムであっても、現在のIBM i環境でそのまま動作させることができます。詳細な歴史やアーキテクチャについては後の章で解説します。
IBM iが使われている業界と業務
IBM iが使われている業界と業務について紹介します。IBM iは、システムが停止することが許されない、ミッションクリティカルな業務を担う企業から強く支持されています。
具体的には、製造業、流通・小売業、金融業、物流業など、幅広い業界で導入されています。これらの業界において、以下のような基幹業務システムとして活用されています。
- 製造業における生産管理システムや部品の在庫管理システム
- 流通・小売業における受発注管理システムや販売管理システム
- 金融業における勘定系システムや顧客情報管理システム
膨大なデータを高速かつ正確に処理する能力に優れているため、日々の取引データや在庫情報をリアルタイムで更新する業務に非常に適しています。また、堅牢なセキュリティ機能により、重要な企業データを外部の脅威から保護できます。近年では、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に伴い、既存のIBM i上のデータを活用し、Webアプリケーションから連携するといった新しい使い方も広がっています。
AS/400からIBM iへ:名称と製品の歩み

AS/400からIBM iへ:名称と製品の歩みをたどることで、このシステムがどのように進化し、現在も多くの企業で利用され続けているかがわかります。IBM iは、ハードウェアとOS(オペレーティングシステム)の名称変更を繰り返しながら、アーキテクチャの根幹を維持して発展してきました。
1988年:AS/400の登場
1988年、IBM Corporationから「AS/400(Application System/400)」が発表されました。当時の企業向けコンピューター市場において、中堅・中小企業でも導入しやすいオフィスコンピューター(オフコン)として登場したのが始まりです。
AS/400は、OSとデータベースが一体化された設計を採用しており、導入からすぐに業務アプリケーションの開発や運用を開始できます。この扱いやすさと高い信頼性から、製造業や流通業、金融業など幅広い業界の基幹システムとして急速に普及しました。
2000年代:iSeries、System iを経てIBM iへ
2000年代に入ると、IT環境の変化に合わせて製品の名称と位置づけが何度か変更されました。当初はハードウェアとOSが一体の製品として扱われていましたが、2008年の統合を機に、ハードウェアとOSの名称が明確に分離されています。
| 発表年 | ハードウェア名称 | OS名称 | 主な変更点 |
|---|---|---|---|
| 1988年〜 | AS/400 | OS/400 | 初期モデルの発表 |
| 2000年〜 | eServer iSeries | OS/400 | インターネットビジネスへの対応を強化 |
| 2006年〜 | System i | i5/OS | 他サーバー製品とのブランド統一 |
| 2008年〜現在 | IBM Power | IBM i | UNIXサーバー(System p)とハードウェアを統合し、OS名称を「IBM i」に変更 |
現在では、ハードウェアを「IBM Power」、その上で稼働するOSを「IBM i」と呼ぶのが正式な名称です。しかし、長年親しまれてきた歴史があるため、現在でも現場のエンジニアやユーザーの間では「AS/400」や「AS」という呼称が使われることが少なくありません。
「AS400=古いシステム」は誤解?いまも続くバージョンアップ
名称に「400」がついていた時代の印象から、「AS/400は過去の古いシステムである」と誤解されることがあります。しかし、実際にはハードウェアとOSの分離後も、IBM Corporationから継続的な投資と開発が行われています。
IBM iは、独自の仮想化レイヤー(TIMI)を持つアーキテクチャを採用しているため、ハードウェアの進化に依存せずに過去のプログラムをそのまま動かすことができます。これにより、数十年前の業務資産を最新のサーバー上で稼働させることが可能です。
現在も数年ごとに新しいOSのバージョンがリリースされており、最新のセキュリティ要件への対応や、オープンソース技術との連携機能などが追加されています。古いシステムにとどまることなく、最新のITトレンドを取り入れながら進化を続けているのがIBM iの現状です。
IBM iの主な特徴とは?押さえておきたい5つのポイント

IBM iの主な特徴とは、押さえておきたい5つのポイントとして以下の要素が挙げられます。企業の基幹システムとして長年支持され続けている理由を、技術的な側面から詳しく解説します。
OS・データベース・ミドルウェアが一体となった統合設計
IBM iは、OS・データベース・ミドルウェアが一体となった統合設計を採用しています。一般的なサーバー環境では、WindowsやLinuxなどのOS上に、別メーカーのデータベースやセキュリティソフトを個別にインストールして構築する必要があります。しかしIBM iでは、標準のOSである「IBM i」の中に、リレーショナルデータベースである「Db2 for i」やセキュリティ機能、Webサーバー機能などが最初から組み込まれています。
システムを構成する主要なソフトウェアがあらかじめ統合されているため、個別の導入や設定にかかる工数を大幅に削減できます。また、OSのバージョンアップを行うだけでデータベースやミドルウェアも同時に更新されるため、ソフトウェア間のバージョン不整合によるトラブルを防ぎ、運用管理の負担を軽減できます。
単一レベル記憶とオブジェクトベースの設計
単一レベル記憶とオブジェクトベースの設計も、IBM iを語る上で欠かせない独自の特徴です。単一レベル記憶(Single Level Storage)とは、メインメモリとディスク装置(HDDやSSD)の記憶領域を区別せず、1つの巨大なメモリ空間として扱うアーキテクチャです。
この仕組みにより、開発者やシステム管理者はデータが物理的にどのディスクに保存されているかを意識することなく、データの読み書きを実行できます。システム側が自動的にデータの配置を最適化するため、複雑なストレージ管理やチューニング作業を省略できます。
また、オブジェクトベースの設計により、システム上のファイルやプログラム、ユーザープロファイルなどのあらゆる要素が「オブジェクト」として厳密に定義されています。各オブジェクトには実行可能な操作がOSレベルで規定されているため、データファイルとして定義されたオブジェクトをプログラムとして実行しようとしても、OSが自動的にブロックして不正な動作を防止できます。
TIMIによる高い互換性:過去の業務資産を動かし続けられる
TIMIによる高い互換性を備えているため、過去の業務資産を動かし続けられるのがIBM iの最大の強みです。TIMI(Technology Independent Machine Interface)とは、ハードウェアとOS・アプリケーションの間に配置された仮想的なインターフェース層のことです。
通常のシステムでは、CPUのアーキテクチャが変更されると、それに合わせてアプリケーションのプログラムを書き直したり、再コンパイルしたりする必要があります。しかしIBM iでは、アプリケーションはTIMIに向けて命令を出し、TIMIがその命令を新しいハードウェアが理解できる形式に自動で変換します。
ハードウェアの構造が根本的に変わった場合でも、過去に開発したプログラムを修正することなく最新のサーバー上でそのまま実行できます。これにより、数十年前から稼働している基幹システムのプログラム資産を無駄にすることなく、最新の処理性能の恩恵を受けることができます。
堅牢なセキュリティと安定稼働
堅牢なセキュリティと安定稼働は、企業の重要なデータを守る基幹システムにおいて極めて重要です。IBM iは前述のオブジェクトベースの設計により、ウイルスやマルウェアがシステム内部に侵入してプログラムを改ざんするのを構造的に防ぐことができます。
さらに、ユーザーごとにオブジェクトへのアクセス権限を細かく設定できる強力なセキュリティ機能を備えています。これにより、ランサムウェアなどのサイバー攻撃や、内部の不正アクセスによる情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。
また、ハードウェアであるIBM PowerとOSであるIBM iが密接に連携して設計されているため、システム障害の発生率が非常に低く設計されています。万が一ハードウェアの一部に障害が発生した場合でも、システム全体を停止させることなく該当箇所を切り離して処理を継続できるため、長期間にわたって無停止での運用を実現できます。
RPG・COBOLからJava・Python・SQLまで対応する開発環境
IBM iは、RPG・COBOLからJava・Python・SQLまで対応する開発環境を提供しています。AS/400の時代から広く使われているRPGやCOBOLといった伝統的な言語で開発されたプログラムをそのまま実行できるだけでなく、最新のオープン系技術を用いた開発も同時に行うことができます。
現在サポートされている主な開発言語と技術を以下の表にまとめます。
| 分類 | 対応する主な言語・技術 | 特徴と用途 |
|---|---|---|
| 伝統的な言語 | RPG、COBOL、C、C++ | 過去の業務資産の維持や、高速なバッチ処理・帳票出力に利用できます。 |
| オープン系言語 | Java、Python、PHP、Node.js | Webアプリケーションの開発や、外部システムとのAPI連携に活用できます。 |
| データベース言語 | SQL | 標準的なSQLを使用して、組み込みデータベース(Db2 for i)のデータを操作できます。 |
このように、従来の堅牢な基幹処理をRPGで維持しつつ、ユーザー向けの新しいWebインターフェースやAI(人工知能)との連携部分をPythonやJavaで開発するといった柔軟なシステム構築を実現できます。
IBM iとWindows・Linuxサーバーの違いは?

IBM iとWindows・Linuxサーバーの違いは、システムの基本設計や運用思想にあります。ここでは、それぞれのOS(オペレーティングシステム)の特徴を比較しながら、どのような違いがあるのかをわかりやすく解説します。
比較表で見る基本的な違い
比較表で見る基本的な違いとして、IBM iとWindowsサーバー、Linuxサーバーの主な項目を整理しました。オープン系と呼ばれるWindowsやLinuxと比較すると、IBM iはデータベースやセキュリティ機能があらかじめ統合されている点に大きな特徴があります。
| 比較項目 | IBM i | Windowsサーバー | Linuxサーバー |
|---|---|---|---|
| システムの基本設計 | OS・データベース・セキュリティが統合された専用設計 | 汎用的なOSにソフトウェアを個別追加する設計 | 汎用的なOSにソフトウェアを個別追加する設計 |
| 運用の手間 | 統合されているため管理項目が少なく運用負担を軽減できます | パッチ適用やバージョン管理を個別に行う必要があります | パッチ適用やバージョン管理を個別に行う必要があります |
| 互換性 | ハードウェアが変わっても過去のプログラムをそのまま実行できます | OSのバージョンアップに伴いプログラムの改修が必要になることがあります | OSのバージョンアップに伴いプログラムの改修が必要になることがあります |
| 開発の柔軟性 | 基幹業務に特化した安定性を重視した開発ができます | 市販のパッケージソフトやツールを豊富に活用できます | オープンソースソフトウェアを自由に組み合わせて開発できます |
WindowsサーバーやLinuxサーバーは、必要なソフトウェアを個別に組み合わせて構築できます。一方でIBM iは、OSとデータベースが一体化して提供されているため、導入や運用の手間を大幅に削減できます。また、ハードウェアとソフトウェアが独立した設計となっているため、システムを長期間安定して稼働させることができます。
IBM iが向いている業務・向いていない業務
IBM iが向いている業務・向いていない業務には、それぞれ明確な傾向があります。システムの特性を理解したうえで、自社の業務要件に合致するかどうかを判断することが重要です。
IBM iが向いている業務
IBM iは、基幹業務システムのように高い信頼性と連続稼働が求められる領域に非常に向いています。たとえば、金融機関の勘定系システムや、製造業の生産管理システム、流通業の在庫管理システムなどで強力なパフォーマンスを発揮できます。一度開発したプログラムを長期間にわたって変更せずに使い続けることができるため、システム改修のコストを抑えたい企業にも適しています。
IBM iが向いていない業務
一方で、最新のWebテクノロジーを頻繁に取り入れたい場合や、オープンソースのソフトウェアを柔軟に組み合わせて使いたい業務には向いていないことがあります。WindowsやLinuxのほうが、市場に流通しているパッケージソフトや開発ツールの選択肢が多いため、短期間で小規模なシステムを立ち上げるような用途では、オープン系サーバーを選ぶほうが効率的に構築できます。
IBM iの最新動向:バージョン・AI・クラウド

IBM iの最新動向:バージョン・AI・クラウドについて、ここでは最新の技術トレンドやサポート状況を解説します。レガシーシステムと誤解されがちなIBM iですが、現在も継続的なアップデートが行われており、最新のIT技術を取り込んだ進化を続けています。
最新バージョンとサポート期限の考え方
最新バージョンとサポート期限の考え方について説明します。IBM iは定期的に新しいバージョンがリリースされており、長期間にわたるサポートが提供されています。サポート期限を把握し、適切なタイミングでバージョンアップを計画することが安定稼働には不可欠です。
| バージョン | リリース時期 | 通常サポート終了時期 |
|---|---|---|
| IBM i 7.5 | 2022年5月 | 未定 |
| IBM i 7.4 | 2019年6月 | 未定 |
| IBM i 7.3 | 2016年4月 | 2023年9月 |
IBM i 7.5などの最新バージョンでは、セキュリティ機能の強化やデータベースの性能向上が図られています。古いバージョンからの移行も、独自の仮想化レイヤーの仕組みによりスムーズに行うことができます。
IBM iとAI活用
IBM iとAI活用は、企業のデジタルトランスフォーメーションにおいて重要なテーマとなっています。長年蓄積された基幹業務のデータを活用し、AI(人工知能)による予測分析や業務効率化を実現できます。
例えば、外部のAIサービスとAPIで連携することで、在庫の最適化や需要予測を高精度に行うことができます。既存の基幹システムと最新のAI技術を組み合わせることで、新たなビジネス価値を創出できます。
クラウドで使うIBM i:Power Virtual Server
クラウドで使うIBM i:Power Virtual Serverは、オンプレミス環境からクラウド環境への移行を検討する企業にとって有力な選択肢となっています。日本アイ・ビー・エム株式会社が提供するクラウドサービスを利用することで、ハードウェアの保守やインフラの運用負荷を大幅に軽減できます。
Power Virtual Serverを利用すると、必要なときに必要なだけリソースを拡張できます。また、災害対策(DR)環境の構築も容易になるため、事業継続計画(BCP)の強化にも貢献します。
他システムとのデータ連携・API化
他システムとのデータ連携・API化により、IBM iは閉じたシステムからオープンなプラットフォームへと進化しています。REST APIを利用することで、WebアプリケーションやモバイルアプリからIBM iのデータに直接アクセスできます。
既存のプログラムを大幅に改修することなく、APIを通じて外部のクラウドサービスやSaaSと連携できます。これにより、企業全体のデータ統合が進み、リアルタイムな情報共有が実現できます。
IBM iユーザー企業が直面している4つの課題

IBM iは高い安定性と互換性を持つ優れたシステムですが、長年運用を続けているユーザー企業は現在、いくつかの深刻な課題に直面しています。ここでは、IBM iユーザー企業が直面している4つの課題について詳しく解説します。
人材不足と属人化
IBM iユーザー企業が直面している課題の1つ目は、人材不足とシステムの属人化です。IBM i(旧AS/400)の独自言語であるRPGを扱える技術者は高齢化が進んでおり、定年退職による人材の枯渇が懸念されています。
長年にわたり特定の担当者が保守開発を行ってきた結果、システムの中身がブラックボックス化している企業も少なくありません。担当者が不在になると、障害発生時の対応や新しいビジネス要件に合わせたシステム改修が困難になります。そのため、若手エンジニアでも扱えるオープン系言語(JavaやPythonなど)への移行や、ローコードツールを活用した開発環境の整備が急務となっています。
ランサムウェアなどのセキュリティリスク
2つ目の課題は、ランサムウェアなどのサイバー攻撃によるセキュリティリスクです。IBM iのOS自体は堅牢なアーキテクチャを持っていますが、連携しているWindowsサーバーや社内ネットワークから感染が広がるケースが増加しています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発表している情報セキュリティ10大脅威 2024でも、組織向けの脅威としてランサムウェアによる被害が上位に挙げられています。IBM i内の重要な業務データが暗号化されたり、外部へ流出したりするリスクを防ぐためには、OSの強固さだけに頼らず、多要素認証(MFA)の導入やネットワーク全体のセキュリティ対策を強化する必要があります。
バックアップとデータ保全
3つ目の課題は、バックアップとデータ保全の運用です。多くのIBM iユーザー企業では、長年磁気テープによる物理的なバックアップ運用が行われてきました。しかし、テープの交換や保管には人手がかかるだけでなく、災害発生時に迅速なデータ復旧が難しいという問題があります。
近年では、自然災害や予期せぬシステム障害に備える事業継続計画(BCP)の観点から、より確実で迅速なデータ保全が求められています。物理テープからクラウドストレージや遠隔地へのネットワークバックアップへ切り替えることで、運用負荷を軽減し、より安全にデータを保護できます。
| バックアップ手法 | メリット | デメリット・課題 |
|---|---|---|
| 物理テープ | 導入コストが比較的安価 | 手動での交換が必要、災害時の物理的破損リスク |
| クラウド・遠隔地 | 自動化による運用負荷軽減、災害に強い | 初期設定やネットワーク環境の整備が必要 |
クラウド移行とモダナイゼーションの判断
4つ目の課題は、クラウド移行とモダナイゼーション(システムの近代化)の判断です。ハードウェアの保守期限(EOS)を迎えるタイミングで、オンプレミスのサーバーを買い替えるか、クラウド環境へ移行するかを選択しなければなりません。
既存の業務資産をそのまま活かしつつ、他システムとの連携や最新技術(AIやデータ分析など)を取り入れるためには、システムのモダナイゼーションが不可欠です。しかし、どこまでを既存のIBM iで処理し、どこからをクラウドサービスに任せるのかという見極めは非常に難しく、多くの企業が方針決定に悩んでいます。自社のビジネス要件に合わせて、適切な移行計画を策定することが重要です。
三和コムテックのIBM i支援

三和コムテック株式会社は、長年にわたり培った専門知識を活かし、IBM i環境の最適化や課題解決に向けた多様な支援を提供しています。システムの安定稼働を維持しながら、最新のIT環境へ適応するための具体的なサポート内容を解説します。
IBM i導入企業の事例
IBM i導入企業の事例から、各社がどのようにシステム課題を解決し、業務効率化やセキュリティ強化を実現しているかがわかります。三和コムテック株式会社の支援を通じて得られた成果の一部を紹介します。
| 業界 | 直面していた課題 | 導入した解決策と成果 |
|---|---|---|
| 製造業 | 属人化したRPGプログラムの保守と、若手技術者への引き継ぎの困難さ | 既存資産を活かしたモダナイゼーションツールを導入し、Webベースの開発環境へ移行することで、若手エンジニアでも直感的にシステムの改修や保守が対応できるようになりました。 |
| 流通業 | ランサムウェアなど最新のサイバー攻撃に対するIBM iの脆弱性への懸念 | IBM i専用のセキュリティ監視ソリューションを導入し、不正アクセスの検知と監査ログの自動取得を実現できます。これにより、コンプライアンス要件を満たしつつ安全な運用が可能になりました。 |
| 金融業 | 災害時のシステム停止リスクと、テープバックアップ運用の負荷 | クラウドを活用したリアルタイムのデータレプリケーション(複製)環境を構築し、万が一の災害時でも迅速に業務を再開できるBCP(事業継続計画)対策を確立できます。 |
課題別のソリューション
課題別のソリューションとして、三和コムテック株式会社ではIBM iユーザーが直面する具体的な問題に対応する専用ツールやサービスを提供しています。企業の状況に合わせて適切な対策を選択できるのが特徴です。
| 課題カテゴリ | 提供ソリューションの概要 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| セキュリティ対策 | アクセス制御、ログ監査、ランサムウェア対策ツール | IBM i上の重要データへの不正アクセスを防ぎ、誰がいつ何をしたかの記録を自動的に取得できます。 |
| バックアップとBCP | HA(ハイアベイラビリティ)ツール、クラウドバックアップサービス | 本番環境のデータを待機サーバーやクラウドへリアルタイムに複製し、障害発生時のダウンタイムを最小限に抑えることができます。 |
| モダナイゼーション | 画面のWeb化、API連携ツール、オープン言語(JavaやPythonなど)の活用支援 | 従来のキャラクターベースの画面を直感的なWebインターフェースに変換し、他システムやクラウドサービスとシームレスにデータを連携できます。 |
これらのソリューションを組み合わせることで、企業は既存の業務資産を保護しながら、変化の激しいビジネス環境にも柔軟に対応するITインフラを構築できます。
よくある質問(FAQ)
IBM iとAS400は同じものですか?
IBM iとAS400は同じものですか?という疑問をお持ちの方も多いですが、実質的には同じシステムの系譜に属するものです。AS/400は1988年に日本アイ・ビー・エム株式会社から発表されたハードウェアとOSの総称であり、そのOS部分が名称変更を経て現在のIBM iとなっています。ハードウェアの名称も変遷していますが、過去の資産をそのまま動かすことができる高い互換性を持っています。
IBM iのサポートはいつまでですか?バージョンによって違いますか?
IBM iのサポートはいつまでですか?バージョンによって違いますか?という質問に対しては、バージョンごとにサポート期限が異なるとお答えします。日本アイ・ビー・エム株式会社は定期的に新しいバージョンをリリースしており、それぞれのバージョンに対して標準サポート期間と延長サポート期間を設定しています。
| バージョン | 標準サポート終了日 |
|---|---|
| IBM i 7.3 | 2023年9月30日(延長サポートあり) |
| IBM i 7.4 | 未定 |
| IBM i 7.5 | 未定 |
古いバージョンを使用している場合は、セキュリティや機能更新の観点から、最新バージョンへの計画的な移行をおすすめします。
IBM iはクラウドでも使えますか?
IBM iはクラウドでも使えますか?という疑問についてですが、クラウド環境でも利用できます。日本アイ・ビー・エム株式会社が提供するPower Virtual Serverなどを活用することで、オンプレミス環境からクラウド環境へシステムを移行できます。これにより、ハードウェアの保守運用にかかる手間を削減し、柔軟なリソース管理を実現できます。
IBM iの開発言語はRPGしか使えないのですか?
IBM iの開発言語はRPGしか使えないのですか?と誤解されることがありますが、多様なプログラミング言語を使用できます。伝統的なRPGやCOBOLに加えて、現在ではJava、Python、PHP、Node.jsなどのオープン系言語を用いた開発も可能です。これにより、最新の技術トレンドを取り入れたアプリケーション開発や、他システムとの連携を柔軟に行うことができます。
IBM iは今後なくなる可能性はありますか?
IBM iは今後なくなる可能性はありますか?と不安に感じる方もいらっしゃいますが、直近でなくなる可能性は極めて低いといえます。日本アイ・ビー・エム株式会社はIBM iに関する長期的なロードマップを公開しており、2030年代以降も継続的な投資と機能拡張を行うことを表明しています。世界中の多くの企業で基幹システムとして稼働し続けているため、今後も安定したサポートが期待できます。
まとめ

IBM iは、AS/400をルーツに持ち、現在もIBM Power上で稼働する業務システム向けOSです。OSとデータベースの統合設計や、過去のプログラム資産を継承できる高い互換性、堅牢なセキュリティを特徴としています。
最新環境ではPythonなどのオープン系言語やAI活用、クラウド(Power Virtual Server)にも対応し、進化を続けています。一方で、技術者の不足や属人化、モダナイゼーションの判断といった課題も存在します。IBM iの安定した基盤を将来にわたって活かすためには、自社の状況に合わせた適切なソリューションの導入が重要です。
DXやRPA、IBMi、セキュリティなど多彩な領域でソフトウェア開発・導入支援・コンサルティングを行い、
技術と発想の力で企業の課題解決と新たな価値創造を支援しています。
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