データのバックアップにおけるテープ運用課題への対応策として、仮想テープライブラリ(VTL)は近年注目されています。従来の物理テープ運用と比較して、VTLは効率性や信頼性の面でメリットがあるようです。
データのバックアップにおける世代管理の重要性
現代のビジネス環境では、企業存続のためにデータの安全性を確保することが不可欠です。近年ではランサムウェア被害が猛威を振るい、被害に遭えば業務停止や巨額の復旧費用が発生し、企業にとって深刻な打撃となりかねません。
高い堅牢性を誇るIBM iにおいても、近年ではIFS(統合ファイルシステム)をファイルサーバとして活用し、Windows環境とのファイル共有に利用されるケースが増えています。このような用途の拡大により、ランサムウェアなどのマルウェアが潜伏するリスクも増加しています。
令和5年度の警察庁レポートによると、ランサムウェア被害を受けたシステムや機器の約9割がバックアップを取っていましたが、復旧を試みたうち約8割が「被害前の状態に戻せなかった」と回答しています。主な原因として、バックアップが最新でなかったことや、バックアップデータ自体がランサムウェアに感染したケースが挙げられています。これらの事例から、より確実なデータバックアップ戦略の構築が必要であることが分かります。
引用:警視庁ホームページ『令和5年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R5/R05_cyber_jousei.pdf
効果的なバックアップ戦略の一つとして「データの世代管理」があげられます。「世代管理」とは、バックアップデータを複数世代にわたり保持することを指します。複数世代のデータを保持することで、必要に応じて過去の状態に迅速に戻すことができます。この手法を採用すると、システム障害や人為的なエラーが発生した際にも、特定の状態に迅速に復元でき、業務の継続性を大幅に向上させることができます。
テープ運用における世代管理の課題
物理テープにてデータの世代管理を行う際に直面する主な課題を考えてみます。
管理の複雑化
世代管理では、明確で効率的な運用ルールが求められます。テープ運用では、ラベル付けや保管手順の管理を手作業で行うため、複雑になりやすく、運用ミスのリスクが高まります。
バックアップ時間の長期化
世代数が増加すると、バックアップデータ量が増加し、それに伴いバックアップやリストアにかかる時間も長くなります。この間システム利用が制限され、業務に影響を及ぼす可能性もあります。
テープメディアの非互換
ドライブとテープメディアの間には、互換性が存在するため、テープ装置のリプレースによって古いテープメディア資産へのアクセスができなくなるリスクが存在します。互換性を維持するためには、対応するテープドライブ、メディアの確保や、最新版への移行が必要です。
【LTOドライブ対応表】
世代管理を仮想テープライブラリ(VTL)装置で行うメリット
テープ運用における課題への対応策として、仮想テープライブラリ(VTL)は近年注目されています。従来の物理テープ運用と比較して、VTLは効率性や信頼性の面でメリットがあるようです。
自動化とエラーリスクの軽減
バックアップや世代管理の自動化により、人為的なミスが減少し、管理も簡素化されます。テープ運用では、テープの取り扱いやラベル管理、保管場所の指定が必要ですが、VTLでは自動化機能などでこれらの作業が不要となり、世代管理の精度が向上します。
業務継続と事業継続計画(BCP)の強化
VTLでは必要な世代からのデータリカバリが即座に行えるため、特にディザスタリカバリや業務継続計画(BCP)において強みを発揮します。テープ運用では、必要なバックアップデータを探す際、物理的にテープメディアを取り出し、対応するドライブに装着しなければならず、時間がかかります。迅速なアクセスと複数世代の自動管理により、即座にリカバリを可能とします。
物理的なトラブルの回避
物理的なメディアであるテープは、摩耗や破損による損傷リスクが伴います。VTLはディスクベースのため、こうした物理的リスクが低減されます。
LaserVault Backupによるデータの世代管理
LaserVault Backup(LVB)は、IBM iのデータバックアップを行うための仮想テープライブラリ(VTL)ソリューションであり、従来のテープ運用に代わる選択肢です。自動化やスケジュールによるデータ管理、視覚化された管理インターフェースを通じて、データの世代管理も容易になります。バックアップとリストアの操作はIBM iコマンドとほぼ同様に行えるため、ユーザーは従来の操作方法を大きく変えることなくバックアップ運用ができます。VTLのメリットに合わせて、LVBが提供する世代管理のメリットについて解説します。
メディア互換性の問題への対処
LVBは、データをファイル形式でディスク上に保管するため、テープ運用時に懸念されるデータの読み書きにおける物理的な制約がなく、異なる世代間での互換性を考慮する必要がありません。その結果、互換性の差異によるデータ移行などの管理の手間が軽減され、運用がさらに効率的になります。
管理の簡素化
LVBでは、自動削除機能によりデータの自動削除が可能です。この機能により運用ルールが明確化され、スムーズに世代管理を行うことができます。従来のテープ運用と比較すると、テープの入れ替え、ラベルの変更、初期化などの手作業が不要となり、運用が大幅に効率化されます。
LVBを導入することで、物理的な管理の手間を削減し効率的なバックアップ運用を実現します。企業が直面するバックアップの課題を解決する選択肢として、LVBによるデータのバックアップをぜひご検討ください。
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