SOC・CSIRT・MDRの違いとは?
それぞれの役割と特徴を解説 

 2024.12.20  三和コムテック

情報セキュリティの確保は、企業にとって最優先課題です。SOC、CSIRT、MDRは、それぞれ異なる役割を持ち、企業を多角的に守ります。本記事では、これら3つの組織やサービスの違いと、それぞれの重要性について詳しく解説します。

SOC・CSIRT・MDRの違いとは?それぞれの役割を解説

SOC・CSIRT・MDRの違いとは?それぞれの役割を解説
情報セキュリティの領域では、以下の三つの組織やサービスが存在し、それぞれ異なる役割を果たしています。

  • SOC(Security Operation Center)
  • CSIRT(Computer Security Incident Response Team)
  • MDR(Managed Detection and Response)

これらは全てセキュリティ対策の一環として重要ですが、その機能やアプローチは異なります。それぞれの定義と役割を詳しく解説します。

SOC(Security Operation Center)の役割

SOCは、組織の情報セキュリティを監視し、管理するための専門的なセンターです。その主な役割は、ネットワークやシステムの監視、異常な活動の検知、そしてリアルタイムでの対応です。

SOCは、セキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)ツールを使用して、全てのログデータを集約・分析し、脅威の兆候を迅速に特定します。このプロセスにより、SOCはサイバー攻撃や内部不正を早期に発見し、即座に対応が可能です。

また、SOCチームは、セキュリティインシデントが発生した際に、即座に対策を講じることで、被害の拡大を防ぎます。

一般的には24時間365日体制で運営され、サイバー攻撃の早期発見と迅速な対応が求められます。

CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の役割

CSIRTは、特にセキュリティインシデントに対応する専門チームです。その役割は、セキュリティインシデントの検出、分析、対応、報告、そして再発防止策の提案に至るまで多岐にわたります。

CSIRTは、インシデントが発生した際に、技術的な支援を提供し、インシデントの影響を最小限に抑えることを目指します。また、CSIRTは迅速かつ効果的な対応を行うため、最新のセキュリティ脅威に関する知識を常に更新し、継続的なトレーニングを受けることが必要です。

他にも、インシデント後のフォレンジック分析やレポート作成も行い、情報を組織内外に共有することが求められます。これにより、組織全体のセキュリティ体制の強化と、将来のリスクの軽減につながります。

MDR(Managed Detection and Response)の役割

MDRは、外部の専門プロバイダーによって提供されるセキュリティサービスで、特に中小企業において効果的です。MDRサービスは、監視、脅威の検出、そしてインシデント対応を一手に引き受けることが特徴です。

内部リソースが不足している企業にとって、MDRは高い専門性を持つセキュリティチームを外注する手段となります。MDRプロバイダーは、先進的な脅威検出技術を用いて、セキュリティインシデントをリアルタイムで発見し、迅速な対応が可能です。

また、MDRはセキュリティ戦略の最適化や、組織に特化したリスク分析を提供することで、長期的なセキュリティ強化にもつながるでしょう。

SCT Security Solution Book

SOCやCSIRTの必要性

SOCやCSIRTの必要性
近年、サイバーセキュリティの脅威が増加し、特にSOCやCSIRTの重要性が高まっています。これらの組織は、企業や組織が直面するさまざまな脅威から情報資産を保護するために不可欠です

サイバー攻撃の高度化や多様化により、単一の防御策では対応が難しくなっています。そのため、SOCはリアルタイムでの監視と迅速な対応を行い、CSIRTは発生したインシデントに対する専門的な対応を提供します。これらの対策を整えることで、自社の信頼性を高められるでしょう。

サイバー攻撃の高度化や多様化への対応

サイバー攻撃は年々高度化し、多様化しています。以前の攻撃はウイルスやマルウェアを用いた単純なものでしたが、現在ではフィッシング攻撃やランサムウェア、DDoS攻撃など、手口が巧妙になっています

特に、国家や犯罪組織による標的型攻撃は、特定の企業や機関を狙うケースが増えています。このような攻撃に対処するためには、SOCが常時監視を行い、異常な行動を迅速に検知することが不可欠です。

また、CSIRTはインシデント発生時に専門的な対応を行うことで、迅速な復旧を支援します。さらに、攻撃の手口や傾向を分析し、将来的な対策を講じることも重要です。高度なセキュリティ体制を整えることで脅威に対抗し、安心して業務を継続できます。

DXに伴うセキュリティ対策

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進展する中、企業は新しい技術を取り入れることで業務効率を向上させています。しかし、新しい技術の導入はサイバーセキュリティリスクも伴います

特に、クラウドサービスやIoTデバイスが普及する中で、情報漏えいや不正アクセスの危険性が増しています。これに対処するためには、SOCやCSIRTのような専門組織が必要です。

SOCは、ネットワークの監視を行い、リアルタイムでの脅威検知を通じてセキュリティを強化します。CSIRTは、インシデント発生時の対応を専門に行い、問題の根本原因を分析し、再発防止策を提案します。

DXに伴うセキュリティ対策は、単なる防御策ではなく、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。

セキュリティパッチの適用

サイバー攻撃を未然に防ぐためには、セキュリティパッチの適用が不可欠です。ソフトウェアやシステムの脆弱性は、攻撃者にとって絶好の狙い目となるため、これらの脆弱性を修正するパッチの迅速な適用が重要です。

SOCは、リアルタイムでの監視を通じて、脆弱性を持つシステムを特定し、優先順位を付けてパッチ適用を推奨します。CSIRTは、パッチ適用に際しての手順を整え、適切なタイミングでの実施をサポートします。

セキュリティパッチが適用されていないシステムは、攻撃のリスクが高まり、企業全体のセキュリティが脅かされます。そのため、定期的なパッチ管理とアップデートは、組織のセキュリティ強化において非常に重要です。

SOCの課題・注意点

SOCの課題・注意点
SOCは、企業のセキュリティを強化するための重要な要素ですが、下記のような課題や注意点も存在します。

  • インシデント対応が遅れる可能性
  • 専門知識を持った人材が必要
  • 監視対象外インシデントには非対応

インシデント対応が遅れる可能性

SOCがリアルタイムで監視を行っていても、インシデント対応に時間がかかることがあります。これは、監視対象の範囲が広がるにつれて、異常を検知する際に膨大なデータを分析する必要があるからです。

また、重大なインシデントが発生した場合、SOC内のリソースが限られているため、チーム全体が対応に追われ、優先度の判断が遅れることもあります。また、インシデント対応のプロセスが十分に整備されていないと、SOCが迅速に対応する能力を発揮できず、結果として組織に深刻な影響を与える可能性があります。

専門知識を持った人材が必要

SOCの運営には、専門的な知識を持つ人材が不可欠です。しかし、そのような人材確保は容易ではありません。サイバーセキュリティ分野は常に進化しており、最新の技術や脅威に対する理解が求められます

人材不足により、十分な監視や分析が行えない場合、脅威を見逃すリスクが高まります。また、経験豊富な人材が短期間で退職することも多く、企業の知見が失われる危険性もあります。

監視対象外インシデントには非対応

SOCは、設定された監視対象にもとづいて運用されますが、その範囲外で発生するインシデントには対応できない場合があります。特に、非公式なデバイスや外部サービスに対する脅威は、監視の対象外となることが多いです。

これにより、セキュリティ体制に穴が生じ、攻撃者にとって絶好の機会となることがあります。したがって、SOCは監視範囲を広げるだけでなく、リスク評価を行い、非公式なデバイスや外部からの脅威への対策を講じることが重要です。

SOCの編成手順

SOCの編成手順
SOCを効果的に編成するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。これにより、組織のセキュリティ体制を強化し、サイバー攻撃に迅速に対応可能です。ここでは具体的な編成手順について詳しく説明します。

1. 導入目的の明確化

SOCを導入する目的を明確にすることは、成功の鍵です。まず、企業が直面する特有のセキュリティリスクや脅威を評価し、それにもとづいてSOCの役割を定義します。例えば、データ漏えいを防ぐための監視、インシデント対応の迅速化、脅威の予測など、具体的な目標を設定します。

この目的がはっきりしないままSOCを運用すると、リソースの有効活用や効果的な運用が難しくなるでしょう。また、経営層や関係者に周知し、導入目的に対する理解と支持を得ることも重要です。これにより、SOCの設置と運用に必要なリソースや予算が確保されやすくなります。

2. セキュリティ人材を確保する

SOCの運営には、専門的な知識を持ったセキュリティ人材が不可欠です。人材確保のためには、まず必要なスキルセットを明確にし、どのような役割が求められるかを洗い出します

例えば、ネットワーク監視、脅威分析、インシデント対応など、各専門分野におけるスキルが必要です。その後、社内外から適切な人材を採用し、教育プログラムを設けてスキルの向上を図ります。

また、既存の社員に対してもトレーニングを実施し、スキルのアップグレードを促進します。さらに、セキュリティ人材の流出を防ぐために、職場環境の整備やキャリアパスの明確化も重要です。

3. 業務内容と責任の範囲を明確化

SOCの業務内容と責任の範囲を明確にすることで、効率的な運営が可能です。

まず、SOCが担当する業務の詳細を定義します。これには、ネットワーク監視、インシデント検出、脅威分析、レポート作成などが含まれます。次に、各業務に対する責任を担当者に割り当て、業務フローを明確にします。これにより、各メンバーが自分の役割を理解し、業務が円滑に進むようになります。

また、業務範囲が広がる場合は、適宜リソースを追加し、業務の重複を避けることが重要です。これにより、SOCの運営効率を高め、迅速なインシデント対応が可能となります。

4. インシデント対応を定める

インシデント対応のプロセスを明確に定めることは、SOCの運営において非常に重要です。

まず、インシデント発生時の対応フローを策定します。このフローに含まれるのは、インシデントの検知、分析、対応、報告の各ステップです。次に、具体的な手順を文書化し、全体で共有します。これにより、メンバーは迅速かつ効果的に行動できるようになります。

また、定期的にインシデント対応訓練を行い、チームの対応能力を向上させることが大切です。実際のインシデントが発生した際の経験を活かし、プロセスを改善することで、将来的なインシデントに対する準備が整います。

5. 既存セキュリティ環境の把握

SOCを効果的に運営するためには、まず既存のセキュリティ環境の把握が不可欠です。これには、現在使用しているセキュリティツールやシステムの評価が含まれます。

既存のファイアウォール、IDS/IPS(侵入検知システム/侵入防止システム)、エンドポイント保護などの機能や運用状況を詳しく分析し、セキュリティの強みや弱みを明確にしましょう。
また、過去のインシデントデータを収集し、どのような脅威があったのか、どの対策が有効であったのかを検討します。これにより、SOCがどの分野で特に重点を置くべきかが分かります。

6. 監視システムの構築

監視システムの構築はまず、どの資産やデータを監視対象とするかを明確にします。これには、ネットワークトラフィック、サーバのログ、エンドポイントデバイスの状態などが含まれます。次に、適切な監視ツールやソフトウェアを選定し、これを導入します。

SIEM(セキュリティ情報とイベント管理)システムは、異常検知やログの集約・分析に非常に有効です。監視システムはリアルタイムで動作し、異常な活動を検知した際に迅速にアラートを発信する機能を持つべきです。また、監視ポリシーを設定し、どのようなイベントを重要と見なすかを定義します。

7. 継続的に脅威情報への対応を更新

サイバーセキュリティの脅威は常に進化しているため、SOCでは継続的な脅威情報への対応が重要です。

まずは、最新の脅威情報を収集するための仕組みを整える必要があります。これに求められるのは、業界の脅威インテリジェンスサービスやフィードを利用し、最新の脅威動向や攻撃手法に関する情報を常に収集することです。

収集した情報をもとに、新たに確認された脅威に対する防御策や対応手順を追加し、既存のプロセスに組み込みます。また、定期的にセキュリティトレーニングを行い、チームメンバーが新たな脅威に対応できるスキルを維持・向上させることも重要です。

SOCをアウトソーシングする際のポイント

SOCをアウトソーシングする際のポイント
SOCのアウトソーシングは、多くの企業にとって効果的なセキュリティ戦略となり得ますが、下記3つのポイントを考慮する必要があります。

  • 自社ニーズに応えるサービスか
  • 外注先が使用するEPP・EDR製品の品質は適切か
  • コストと予算が適切か

自社ニーズに応えるサービスか

SOCをアウトソーシングする際には、自社の特性やニーズに合ったサービスを提供する外注先の選択が重要です。

まず、企業が直面するセキュリティリスクや業界特有の脅威を考慮し、それに対応できる能力を持ったSOCサービスを探します。また、提供されるサービスの内容が、自社の要求にどれだけ応えられるかを評価する必要があります。

例えば、24時間365日の監視が必要か、特定の業務に特化したサポートが求められるかなど、自社の要件に合致するかを確認します。さらに、セキュリティインシデント発生時の対応能力や、迅速なレポーティング体制が整っているかもポイントです。

適切なサービスを選ぶことは、自社のセキュリティ強化につながります。

外注先が使用するEPP・EDR製品の品質は適切か

SOCをアウトソーシングする際には、外注先が使用するEPP(エンドポイントプロテクション)やEDR(エンドポイント検出と応答)製品の品質も重要な要素です。これらのツールは、セキュリティインシデントの検出と対応に直結するため、その性能がセキュリティに大きく影響します。

具体的には、どのような脅威を検出できるのか、誤検知の率はどの程度か、また、インシデント発生時にどれだけ迅速に対応できるのかを確認する必要があります。さらに、外注先がこれらの製品を適切に運用しているか、十分なトレーニングを受けているかも重要です。

品質が高いEPP・EDRを使用することで、より効果的な脅威対策が実現し、全体的に安全性が向上します。

コストと予算が適切か

SOCのアウトソーシングを検討する際、コストと予算が適切かどうかは重要な判断基準です。外注先のサービスが自社にとってコストパフォーマンスに優れているか、提供される価値に対して過剰なコストを支払っていないかを評価する必要があります。

具体的には、サービスの内容や監視のレベル、インシデント対応の質に対する費用対効果を分析します。また、長期的な予算計画も考慮し、短期的なコスト削減だけでなく、将来的なセキュリティ投資に対するリターンを見極めることが大切です。

追加費用や契約の柔軟性についても確認し、予算内で効果的なセキュリティ対策を実現できるようにすることも重要です。

適切なコスト管理を行うことで、持続可能なセキュリティ体制を構築できます。

まとめ

SOC、CSIRT、MDRは、それぞれ異なる役割を持つ重要なセキュリティ対策の要素です。これらを適切に活用することで、組織はサイバー攻撃からの防御を強化し、迅速なインシデント対応が可能になります。

また、DXに伴う新たな脅威に対処するためにも、継続的な脅威情報の更新やセキュリティパッチの適用が欠かせません。

SCTのセキュリティソリューションでは、診断はもちろん、各種対策を取りそろえています。最適なセキュリティ対策を通じて、安心して業務に集中できる環境を実現しましょう。

SCT Security Solution Book

RECENT POST「セキュリティ」の最新記事


ソフトウェアの脆弱性とは?なぜ発生するのかや対策方法などを解説
セキュリティ

ソフトウェアの脆弱性とは?なぜ発生するのかや対策方法などを解説

CycloneDXとは?SPDXとの違いを知りどちらを作成すべきか理解しよう
セキュリティ

CycloneDXとは?SPDXとの違いを知りどちらを作成すべきか理解しよう

OSのセキュリティ対策|アップデートは必須?サポート切れのセキュリティ解説も徹底解説
セキュリティ

OSのセキュリティ対策|アップデートは必須?サポート切れのセキュリティ解説も徹底解説

SPDX Liteとは?SPDXとの違いや記載すべき内容・運用方法を解説
セキュリティ

SPDX Liteとは?SPDXとの違いや記載すべき内容・運用方法を解説

SOC・CSIRT・MDRの違いとは?それぞれの役割と特徴を解説 
ブログ無料購読のご案内

おすすめ資料

PAGETOP