ソフトウェアの脆弱性とは?
なぜ発生するのかや対策方法などを解説

 2024.12.20  三和コムテック

ソフトウェアの脆弱性が発生する原因とは何でしょうか。脆弱性は、設計から運用までに発生するシステム上の欠陥です。影響範囲が広く、社会的な信頼性を脅かす深刻な問題であるため、定期的なセキュリティ対策が求められます。セキュリティリスクを最小限にするために、脆弱性情報を収集し、リスクに対する理解や診断ツールの導入が必要です。

ソフトウェアの脆弱性とは?基本知識

ソフトウェアの脆弱性とは?基本知識

ソフトウェアの脆弱性は、セキュリティリスクの大きな要因の1つであり、ソフトウェア開発や運用において重要課題です。悪意のある攻撃者により、脆弱性を利用されると、情報漏えいやシステムの不正操作などに発展する可能性があります。

脆弱性とは

脆弱性とは、ソフトウェアの設計上のミスやプログラムの不具合によって生じる、システムの欠陥です。特に、インターネットに接続されているシステムは、多くの脆弱性にさらされるリスクが高い傾向にあります。脆弱性は、プログラムのバグや不適切な設定、設計上のミスなどから発生し、外部からの攻撃に対する防御が不十分になることが原因です。

脆弱性によって、意図しない動作を引き起こし、ソフトウェアやシステムのセキュリティを脅かす可能性があります。

この脆弱性を悪用されると、システムへの不正侵入や情報漏えいが発生し、大きな影響を及ぼす可能性があります。他にも、不正アクセス、情報の改ざん、システムの破壊など、さまざまな被害が生じることがあります。

「セキュリティホール」との違い

セキュリティホールと脆弱性は、ほぼ同義語として扱われることが多いワードで、明確な違いはありません。厳密に区別すると、セキュリティホールは、脆弱性の中でも特に攻撃に悪用されやすい「穴」にフォーカスしています。例えば、システムのアカウント権限に不備があり、攻撃者が外部から侵入可能な状態が「セキュリティホール」です。

また、セキュリティホールは、攻撃者がシステムに侵入するための経路や手段を指す場合も多くあります。それに対し脆弱性は、その経路や手段の根本原因となる、ソフトウェア上の欠陥を指すという考えです。

セキュリティホールについて、詳しくは以下の記事で解説していますので参考にしてください。

「不具合情報」との違い

「不具合情報」は、セキュリティにかかわらず、システムやソフトウェアが正常に動作しない問題に対する発生条件や対策情報です。不具合は、単にシステム上の設計不備として、機能が期待した通りに動かない場合に使われる単語であり、バグともいわれます。多くの場合、不具合はシステムの機能面での問題にすぎません。

しかし、その不具合が原因でセキュリティに影響がある場合、脆弱性として強調されます。つまり、全ての不具合が脆弱性となるわけではなく、セキュリティに関連する不具合が脆弱性と位置付けられるものです。

「脅威」との違い

「脅威」とは、ソフトウェアやシステムに対して、損害を与える可能性のある行動または攻撃者の存在そのものを指します。例えば、ハッカーによるサイバー攻撃やコンピューターウイルスなどが、脅威の例です。

脆弱性が存在しても、脆弱性を攻撃対象として悪用されなければ、セキュリティ問題は発生しません。攻撃者によって実際に利用される際に、セキュリティリスクが生じ、脅威として実現します。したがって、脆弱性と脅威の違いは「システムの弱点」と「弱点を攻撃する存在や行動」です。

セキュリティリスクの脅威については以下の記事で解説していますので参考にしてください。

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ソフトウェアの脆弱性が発生する原因

ソフトウェアの脆弱性が発生する原因

ソフトウェアの脆弱性は、さまざまな要因が複合的に絡み合って発生します。主に、以下の要因が考えられます。

  • 考慮不足による設計ミス
  • 実装エラーやコーディングミス
  • 運用ミスや設定ミス
  • 外部ライブラリやフレームワークの利用
  • アップデートや修正パッチの未適用

例えば、ユーザー認証やデータの暗号化、入力値のテスト不足、メモリ管理のミスなどにより、システムに脆弱性がつくり込まれます。セキュリティ要件を十分に考慮していない設計ミスや検証不足は攻撃者に悪用されやすく、バッファオーバーフローなどの脆弱性を引き起こす要因です。

また、適切な権限管理やアップデートの適用が不十分だと脆弱性が残ります。脆弱性を放置している場合、攻撃者に狙われやすく、深刻なセキュリティインシデントにつながるでしょう

ソフトウェアの脆弱性がもたらすリスク

ソフトウェアの脆弱性がもたらすリスク

ソフトウェアの脆弱性は、サイバー攻撃の格好の標的となり、セキュリティリスクが発生しやすくなります。リスクは、システム全体の信頼性を低下させ、企業の損失に直結する要因です。

代表的なリスクについて、詳しく解説します。

マルウェア感染

マルウェアは悪意のあるプログラムであり、トロイの木馬やランサムウェアなどのサイバー攻撃の総称です。脆弱性を利用して広がることが多く、システムを無断で操作して暗号化したり、データを盗んだりすることで、被害が大規模化する恐れがあります。

マルウェア感染は脆弱性を悪用することで、システムやソフトウェアにマルウェアを送り込むサイバー攻撃です。脆弱性を経路としてシステムに侵入し、データ破壊や他のシステムへの感染拡大といった被害が生じます。

不正侵入

外部の攻撃者が脆弱性を通じてシステムに不正アクセスし、侵入することです。不正侵入を果たすと、攻撃者は認証情報を盗み出してアカウントの乗っ取りを行い、機密情報へアクセスします。さらに、管理者のアカウントに権限昇格を果たすことで、システムの操作を乗っ取る恐れがあります。

不正侵入によるなりすましや権限昇格攻撃は、システム全体のセキュリティを損ない、信用にも重大な打撃を与えるものです。

データの盗聴

暗号化されていない通信や、フリーWi-Fiなどの弱い認証プロトコルを使用している場合、データの盗聴のリスクが高い傾向にあります。脆弱性のあるシステムを介して、通信中のデータが攻撃者に盗聴され、個人情報や企業の機密情報が外部に漏れる可能性が高くなります。

例えば、個人情報の漏えいにより口座情報が盗まれたり、企業の機密情報の流出や改ざんされたりするなど、被害が深刻です。法的責任や信頼の損失だけでなく、他のサイバー攻撃につながるリスクが考えられます。

システムの停止

脆弱性が悪用されることで、DoS攻撃などが発生し、システム全体が停止するリスクがあります。システム停止により、サービスの提供が停止し、業務が中断されることで、大きな経済的な損失が発生するなどの被害が甚大です。

さらに、他のシステムやネットワークに影響を与え、大規模なシステム障害を引き起こす可能性もあります。顧客やユーザーへの信頼を損なうだけでなく、業務の中断による経済的損失をも引き起こすことになるでしょう。

Webサイトの改ざん

攻撃者がWebアプリケーションの脆弱性を突いてWebサイトにアクセスし、サイト内容を改ざんすることです。改ざんされたWebサイトでは、偽情報の発信やマルウェアの配布が行われる場合があります。さらに偽のWebサイトに誘導し、ユーザーの個人情報を不正に取得するなども手口の1つです。

このように、Webサイトの改ざんは信頼を損なうだけでなく、機密情報盗用の踏み台に使用されるなど、多くの被害を生むリスクに注意が必要です。

ソフトウェアの脆弱性を突いた攻撃の例

ソフトウェアの脆弱性を突いた攻撃の例

ソフトウェアの脆弱性は、多種多様な要因が絡み合っており、対策方法も複雑です。脆弱性を把握するために、どのような脆弱性を突いた攻撃があるか、リスクを知る必要があります。

脆弱性を突いた攻撃の例を詳しく見ていきましょう。

SQLインジェクション

SQLインジェクションは、攻撃者がデータベースに不正なSQL文を挿入し、システムのデータベースを操作する攻撃手法です。これは、ユーザー入力に対して適切な処理が不足していることが原因で、設計ミスが考えられます。この脆弱性を利用して、データの不正操作や機密情報の奪取、システムの破壊が可能です。

攻撃者が予測しやすいシステム構造にならないよう、SQL文とパラメータを分離して、パラメータにエスケープ処理を施す必要があります。入力値の十分な検証と、ファイアウォールなどのWebアプリケーションに対する攻撃防御策の導入を検討しましょう。

クロスサイト・スクリプティング

クロスサイト・スクリプティング (XSS)は、攻撃者がWebサイトに悪意のあるスクリプトを埋め込み、他のユーザーにそのスクリプトを実行させる攻撃手法です。アプリケーションの脆弱性を悪用する手口で、シェアの大きいWordPressがクロスサイト・スクリプティング攻撃されたケースもあります。

これは主に、ユーザーからの入力を適切に検証せず、直接表示してしまうことが原因です。Webブラウザの出力時に、悪意のあるスクリプトを無効化する処理を行うことや、表示内容の読み込みに制限を設けることで対策できます。

不適切なHTTPS利用

HTTPSが適切に設定されていない場合、通信が暗号化されず、脆弱性が生じます。HTTPSとはHTTP通信にSSL/TLS暗号化を行うことで、通信内容が第三者に盗聴されないようにする技術です。不適切な利用とは、例えば、証明書管理が不十分で有効期限切れのまま使い続けることや、弱い暗号化アルゴリズムの使用がある場合などです。

通信の安全性を確保するために、強力な暗号化アルゴリズムを使用し、定期的に証明書を更新することが求められます。脆弱性を放置することは、攻撃者がDoS攻撃などを仕掛ける原因となるため、リスクが高い状態です。

DoS攻撃(サービス運用妨害)

DoS攻撃とは、大量のリクエストを送信することでアクセスを集中させ、システムやネットワークを意図的にダウンさせる攻撃手法です。攻撃者は、脆弱性を突いてシステム内部に侵入し、DoS攻撃を行うことで、サービスを妨害します。

さらに、DDoS攻撃は分散型のDoS攻撃で、複数のデバイスに観戦して攻撃を仕掛け、より強力な妨害を行います。

対策としては、ファイアウォールや侵入検知システムの導入など、監視と制限を行うツールが効果的です。不正アクセスを防御し、不審な動きを監視・遮断する必要があります。

ソフトウェアの脆弱性情報の収集と対策

ソフトウェアの脆弱性情報の収集と対策

ソフトウェアの脆弱性を対策するには、信頼性のある情報源から脆弱性情報の収集をすることが重要です。情報源から収集した脆弱性情報を適切に活用することで、より効果的なセキュリティ対策を講じられます。

IPA脆弱性一覧で情報収集

IPAは、国内外の脆弱性情報を収集して分析し、公式サイト上でIPA脆弱性一覧として公開しています。IPA(情報処理推進機構)とは、IT分野において、人材育成や情報セキュリティの調査、技術開発支援などを行う組織です。

IPA脆弱性一覧では、脆弱性の概要、影響範囲、対策方法などが詳細にまとめられています。IPA脆弱性一覧は安全性と信頼性の高い情報源であり、使用しているツールやアプリに脆弱性がないか確認することが可能です。

脆弱性情報の活用方法

IPAの脆弱性情報を活用することで、関係するソフトウェアの脆弱性を早期に特定し、迅速に対応することが可能です。IPA脆弱性一覧の活用方法を以下にまとめました。

  • 利用中のソフトウェアの脆弱性診断
  • 修正パッチの優先順位付け
  • セキュリティ対策の計画

IPA脆弱性一覧の情報を参考に、潜在的なリスクを把握でき、セキュリティ意識の向上にも効果的です。また、多くの脆弱性情報が同時に公開される場合、影響が大きい脆弱性から優先的に修正パッチを適用できます。

ソフトウェアの脆弱性をチェックする方法

ソフトウェアの脆弱性をチェックする方法

ソフトウェアの脆弱性は、常に新たなものが発見されており、定期的なチェックが重要です。脆弱性をチェックする方法は、以下があります。

  • ソースコードの解析(静的解析)
  • 入力値の検証(動的解析)
  • ペネトレーションテスト
  • 脆弱性スキャナ

定期的に脆弱性チェックを行い、脆弱性を発見した場合は迅速に対策を実施することで、サイバー攻撃からシステムを守れます。

ただし、手動チェックができるものの、専門知識がないと難しいのが実情です。定期チェックには、ツールの導入をおすすめします。

ソフトウェアの脆弱性をチェックするならSCTのクラウドスキャンを

ソフトウェアの脆弱性をチェックするならSCTのクラウドスキャンを

三和コムテックが提供するSCT(Security Cloud Technology)のクラウドスキャンは、クラウドベースでソフトウェアやシステムの脆弱性を簡単にチェックできます。脆弱性の特定と対策情報の提供など、効率的な脆弱性診断ができるWebアプリケーションツールです。

クラウドスキャンはクラウド上で動作するため、セットアップやメンテナンスが不要で、手軽にセキュリティ状況の調査を開始できます。脆弱性チェックの特長は以下です。

  • リアルタイムスキャン
  • ASV資格保有の品質の高い診断
  • シンプルな操作性
  • 定期スキャンの自動化
  • リスクの可視化に有効なレポート機能

SCTは、IPAなどの最新の脆弱性情報と連携しており、プラットフォーム層、アプリケーション層について脆弱性診断を行います。

効率的なセキュリティ管理の実施にご検討ください。

SCT SECURE クラウドスキャン

https://product.sct.co.jp/product/security/cloud-scan

まとめ

まとめ

ソフトウェアの脆弱性は、常に新しい欠陥の発見と修正が繰り返されており、脆弱性を狙った攻撃も巧妙化している状態です。リスクを最小限に抑えるために、最新のセキュリティ情報を常に把握し、適切な対策を取ることで、システムの安全性を確保する必要があります。

IPA脆弱性一覧からソフトウェアの脆弱性情報を活用し、定期的に脆弱性チェックを行うことで、自社のシステムを安全に運用できます。

診断ツールの導入をはじめ、継続的なセキュリティ対策を行いましょう。

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