Webサイト改ざん検知とは?仕組み・ツール比較から対策まで徹底解説

 2025.09.11  三和コムテック

Webサイト改ざん検知とは?仕組み・ツール比較から対策まで徹底解説

Webサイトの改ざんは、企業の信用失墜や顧客情報の流出に繋がる深刻な脅威です。サイトをサイバー攻撃から守るには、改ざん検知の仕組みを理解し、自社に合った対策を講じることが不可欠です。この記事では、以下の点を網羅的に解説します。

  • Webサイト改ざんの被害事例と原因
  • 改ざん検知の4つの仕組みとツールの選び方
  • 改ざんの予防策と検知後の正しい対応フロー

この記事を読めば、自社サイトを守るための具体的な知識と取るべき行動が明確になります。

Webサイトの改ざん検知とは?その重要性と役割

Webサイトの改ざん検知とは、Webサイトのコンテンツやファイルが、攻撃者などの第三者によって不正に書き換えられていないかを定期的に監視し、異常をいち早く発見するためのセキュリティ対策です。Webサイトは企業の「顔」であり、顧客との重要な接点です。このサイトが改ざんされると、企業活動に深刻なダメージを与えかねません。改ざん検知は、その被害を未然に防いだり、発生した際に被害を最小限に食い止めたりするための重要な役割を担います。

改ざんを検知するだけでは、サイトの復旧や原因の特定が完了するわけではありません。しかし、検知は迅速な初動対応の起点となり、被害拡大を防ぐための「最後の砦」とも言える不可欠なプロセスです。

Webサイト改ざんが引き起こす深刻な被害

Webサイトが改ざんされると、サイト運営者である企業だけでなく、サイトを訪れたユーザーにも甚大な被害が及ぶ可能性があります。具体的にどのような被害が想定されるのか、それぞれの視点から見ていきましょう。

Webサイト改ざんによる被害の対象と内容
被害の対象 具体的な被害内容
企業(サイト運営者)
  • ブランドイメージの低下と社会的信用の失墜:「セキュリティ対策が甘い企業」というレッテルを貼られ、顧客や取引先からの信頼を失います。
  • 事業機会の損失:サイトの停止や復旧作業により、ECサイトの売上減少や問い合わせの機会損失に直結します。
  • 復旧・調査コストの発生:改ざん原因の特定、サイトの復旧、再発防止策の策定などに多大な時間と費用がかかります。
  • 法的責任と損害賠償:個人情報やクレジットカード情報が流出した場合、監督官庁への報告義務や被害者への損害賠償責任を問われる可能性があります。
  • 検索エンジンからのペナルティ:マルウェア配布サイトと見なされ、Googleなどの検索結果に警告が表示されたり、インデックスから削除されたりすることがあります。
サイト訪問者(ユーザー)
  • 個人情報・機密情報の窃取:偽の入力フォームに誘導され、ID、パスワード、クレジットカード情報などが盗まれます。
  • マルウェア・ウイルスへの感染:サイトを閲覧しただけで、PCやスマートフォンがウイルスに感染させられる危険性があります。
  • フィッシングサイトへの誘導:見た目は公式サイトそっくりな詐欺サイトに転送され、情報をだまし取られます。
  • 意図しない不正行為への加担:ユーザーのデバイスが、別のサイトを攻撃するための「踏み台」として悪用されることがあります。

このように、Webサイトの改ざんは、一度発生すると連鎖的に被害が拡大し、取り返しのつかない事態に発展する非常に危険なサイバー攻撃なのです。

なぜ今、改ざん検知が不可欠なのか?その背景を解説

近年、Webサイトを取り巻く脅威はますます増大しており、それに伴い改ざん検知の重要性もかつてなく高まっています。その背景には、主に以下の4つの要因が挙げられます。

  • 攻撃手法の巧妙化と自動化
    かつては専門知識を持つハッカーによる攻撃が主でしたが、現在では攻撃ツールがインターネット上で容易に入手でき、誰でも簡単に攻撃を仕掛けられるようになりました。特に、CMS(WordPressなど)の脆弱性を自動でスキャンし、無差別に攻撃を試みるプログラムが増加しており、あらゆるWebサイトが常に攻撃の危険に晒されている状況です。
  • サプライチェーン攻撃の踏み台化
    攻撃者は、セキュリティの強固な大企業を直接狙うのではなく、その取引先など、比較的セキュリティ対策が手薄な関連企業のWebサイトをまず乗っ取ります。そして、そのサイトを踏み台にして、本命のターゲット企業やその顧客へ攻撃を仕掛ける「サプライチェーン攻撃」が増えています。自社が意図せず加害者となり、取引先や顧客にまで被害を広げてしまうリスクを防ぐためにも、改ざんの早期発見が不可欠です。
  • ビジネスにおけるWebサイトの重要性の増大
    ECサイトでの商品販売、オンラインでのサービス提供、顧客とのコミュニケーションなど、Webサイトは多くの企業にとって事業の中核を担う存在となっています。サイトが改ざんされ、停止や信用失墜に追い込まれることは、ビジネスそのものの存続を揺るがす経営上の重大なリスクとなります。
  • コンプライアンスと社会的責任の強化
    個人情報保護法の改正などにより、情報漏洩が発生した際の企業の報告義務や責任がより厳格化されています。万が一、サイト改ざんによって顧客情報が流出した場合、迅速な検知と対応ができなければ、法的なペナルティだけでなく、社会的な非難を浴びることになりかねません。

これらの背景から、Webサイトの改ざん対策は「起きてから対応する」のではなく、「常に監視し、異常があれば即座に検知する」というプロアクティブな姿勢が求められています。改ざん検知は、そのための最も基本的かつ重要なセキュリティ対策なのです。

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あなたのサイトも標的に?実際に起きたWebサイト改ざんの被害事例

あなたのサイトも標的に?実際に起きたWebサイト改ざんの被害事例

Webサイトの改ざんは、決して他人事ではありません。大企業から中小企業、個人ブログに至るまで、あらゆるサイトが攻撃者の標的となり得ます。ここでは、実際に国内で発生したWebサイト改ざんの被害事例を4つ紹介します。これらの事例から、攻撃の手口や被害の深刻さを具体的に理解し、自社サイトのセキュリティ対策の重要性を再認識しましょう。

各事例の概要を以下の表にまとめました。

事例タイプ 主な被害内容 想定される原因 企業・利用者への影響
動画プラットフォーム 動画サムネイル・タイトルの書き換え、動画の配信停止 プラットフォームのアカウント乗っ取り ブランドイメージの毀損、視聴者からの信頼失墜
企業公式サイト サーバーへの不正ファイル設置、マルウェア配布の踏み台化 サーバーOSやミドルウェアの脆弱性 意図せずサイバー攻撃の加害者になるリスク、サイト閉鎖による機会損失
企業・団体サイト 訪問者を不正な外部サイトへ強制的に誘導(リダイレクト) CMS(コンテンツ管理システム)の脆弱性 サイト訪問者がフィッシング詐欺やウイルス感染の被害に遭う可能性
ECサイト 顧客の個人情報・クレジットカード情報の流出、不適切なバナー表示 ECサイト構築システムの脆弱性、SQLインジェクション 顧客への損害賠償、社会的信用の完全な失墜、事業継続の危機

YouTube動画のサムネイル書き換え・配信停止

2018年、ある著名なYouTubeチャンネルで、公開されていた動画のサムネイル画像やタイトルが、第三者によって全く関係のない内容に書き換えられるという被害が発生しました。この改ざんにより、チャンネルは一時的に動画の配信を停止せざるを得ない状況に追い込まれました。

原因は、YouTubeチャンネルを管理するアカウントが不正アクセスを受け、乗っ取られたことによるものです。攻撃者はプラットフォームの脆弱性を悪用したとされています。たとえ悪意のないイタズラ目的であったとしても、企業の顔であるコンテンツが改ざんされることは、ブランドイメージを著しく損ない、ファンや視聴者からの信頼を失うことに直結します。この事例は、Webサイト本体だけでなく、連携する外部サービスのID・パスワード管理の重要性も示唆しています。

サーバーのアカウント乗っ取りと不正ファイルの設置

2019年には、WordPressで構築された企業の公式サイトが改ざんされる被害が報告されました。攻撃者はサーバーOSの脆弱性を突き、サーバー上のアカウントを乗っ取り、Webサイト内に不正なファイルを設置しました。

幸いにもこのケースでは情報漏洩などの二次被害には至りませんでしたが、設置されたファイルの内容によっては、サイトがマルウェア配布の踏み台にされたり、フィッシングサイトの一部として悪用されたりする危険性がありました。アプリケーション(CMS)だけでなく、その土台となるサーバー環境のセキュリティ管理も怠れば、知らないうちに自社サイトがサイバー犯罪の片棒を担がされる可能性があるという、非常に恐ろしい事例です。

外部サイトへ誘導する不正プログラムの組み込み

2023年、ある団体の公式サイトが改ざんされ、サイトを閲覧すると自動的に悪意のある外部サイトへ誘導(リダイレクト)される不正なプログラムが埋め込まれる被害が発生しました。この影響で、同サイトは約3時間にわたり公開を停止する事態となりました。

原因は、Webサイトの管理に使用されていたCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の脆弱性とされています。個人情報の流出は確認されなかったものの、もし誘導先が精巧なフィッシングサイトであった場合、サイト訪問者がID、パスワード、個人情報などを盗まれ、深刻な被害に遭っていた可能性がありました。サイト運営者は、自社の情報資産を守るだけでなく、サイト訪問者を危険に晒さないという社会的責任も負っています。

ECサイトでの顧客情報流出と不適切バナー表示

同じく2023年、あるECサイトがサイバー攻撃を受け、サイトの一部に不適切なバナーが表示されるとともに、顧客の注文情報(氏名、住所、クレジットカード情報など)が流出するという、極めて深刻な被害が発生しました。

ECサイトの改ざんは、単なる見た目の変更にとどまりません。偽の決済ページに誘導してクレジットカード情報を盗み取る「スキミング」や、データベースへの不正アクセスによる大規模な情報漏洩に繋がります。顧客情報、特に決済情報が流出した場合、企業は顧客への損害賠償や対応に追われるだけでなく、社会的信用を完全に失い、事業の存続そのものが危ぶまれる事態に陥ります。これは、Webサイト改ざんがもたらす最も壊滅的な被害の一つと言えるでしょう。

Webサイト改ざんの主な原因と手口

Webサイト改ざんの主な原因と手口

Webサイトが改ざんされる背景には、攻撃者が利用する様々な原因と手口が存在します。自社のサイトを守るためには、まず敵の手の内を知ることが不可欠です。ここでは、Webサイト改ざんにつながる主な原因を3つのカテゴリに分け、それぞれの手口を具体的に解説します。

CMS(WordPressなど)の脆弱性を狙った攻撃

現在、多くのWebサイトがWordPressに代表されるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を利用して構築・運用されています。その利便性と普及率の高さから、CMSは攻撃者にとって格好の標的となっています。CMSを狙った攻撃の主な原因は、ソフトウェアに存在する「脆弱性」です。

脆弱性とは、プログラムの設計ミスやバグによって生じるセキュリティ上の欠陥を指します。主な脆弱性の発生源は以下の通りです。

  • CMS本体(コア)の脆弱性: WordPressなどのCMS自体のプログラムに含まれる脆弱性です。開発元からセキュリティアップデートが提供されるため、速やかな適用が求められます。
  • プラグインの脆弱性: 機能拡張のために追加するプラグインに潜む脆弱性です。特に、更新が停止された古いプラグインや、信頼性の低いプラグインを使い続けることは、非常に高いリスクを伴います。
  • テーマの脆弱性: Webサイトのデザインを定義するテーマファイルに含まれる脆弱性です。プラグイン同様、長期間更新されていないテーマは危険です。

これらの脆弱性を放置すると、攻撃者に不正なプログラムをアップロードされたり、データベースを直接操作されたりする可能性があります。結果として、サイトのコンテンツが書き換えられたり、マルウェア配布の踏み台にされたりといった被害につながります。

パスワードの不正利用・リスト型攻撃

Webサイトの管理画面へアクセスするためのIDとパスワードが破られることも、改ざんの主要な原因です。単純で推測されやすいパスワードを設定している場合や、複数のサービスで同じパスワードを使い回している場合は特に危険です。攻撃者は主に以下のような手口でパスワードを不正に入手しようとします。

主なパスワード攻撃の手口
攻撃手法 概要
ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃) 考えられるすべての文字の組み合わせを機械的に試し、パスワードを割り出す手法です。「123456」や「password」のような単純なパスワードは、瞬時に破られてしまいます。
辞書攻撃 辞書に載っている単語や、よく使われるパスワードのリストをもとにログインを試行する手法です。ブルートフォース攻撃よりも効率的にパスワードを特定できます。
リスト型攻撃 他のサービスから漏洩したIDとパスワードのリストを利用して、標的のサイトへのログインを試みる手法です。多くのユーザーがパスワードを使い回しているため、非常に成功率の高い攻撃とされています。

一度管理者アカウントが乗っ取られてしまうと、攻撃者は正規の管理者としてログインし、Webサイトのコンテンツや設定を自由自在に改ざんできてしまいます。

SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング

Webサイトを構成するWebアプリケーションそのものの設計上の不備(脆弱性)を突く攻撃も、サイト改ざんの深刻な原因となります。中でも代表的なものが「SQLインジェクション」と「クロスサイトスクリプティング」です。

SQLインジェクション

Webサイトのお問い合わせフォームや検索窓など、ユーザーが情報を入力する箇所から、データベースを操作するための不正な命令文(SQL)を送り込む攻撃手法です。この攻撃が成功すると、データベースに保存されている顧客情報などの機密情報が盗まれたり、データベース内のデータが不正に書き換えられたりする可能性があります。ECサイトの情報漏洩事件など、大規模な被害につながることが多い危険な攻撃です。

クロスサイトスクリプティング(XSS)

Webサイトの脆弱性を利用して、悪意のあるスクリプトを埋め込み、サイト訪問者のブラウザ上で実行させる攻撃です。例えば、掲示板やブログのコメント欄に不正なスクリプトを書き込む手口があります。サイトを訪れた他のユーザーがそのページを閲覧すると、埋め込まれたスクリプトが実行され、Cookie情報が盗まれてアカウントが乗っ取られたり(セッションハイジャック)、偽のログインページに誘導されたり(フィッシング)する被害が発生します。この攻撃によってWebページ自体に不正なスクリプトが恒久的に埋め込まれることもあり、これもWebサイト改ざんの一種と言えます。

Webサイト改ざん検知の仕組みを4つのタイプ別に徹底解説

Webサイト改ざん検知の仕組みを4つのタイプ別に徹底解説

Webサイトの改ざん検知と一言でいっても、その仕組みやアプローチは多岐にわたります。それぞれの検知方法には特有の強みと弱点があり、自社のWebサイトの特性やセキュリティポリシーに合わせて最適なものを選ぶことが重要です。ここでは、代表的な4つの検知タイプについて、その仕組みからメリット・デメリットまでを詳しく解説します。

ソース解析型(パターンマッチ型):過去の攻撃パターンと比較

ソース解析型は、過去に発見された不正なコードやマルウェアのパターン(シグネチャ)をデータベース化し、監視対象サイトのソースコードと照合することで改ざんを検知する、最も一般的な手法の一つです。ウイルス対策ソフトが既知のウイルスのパターンを検出する仕組みと似ています。

具体的には、WebサイトのHTML、JavaScript、CSSなどのファイルを取得し、その内容をスキャンします。データベースに登録されている不正な文字列やコードの断片と一致するものが見つかった場合、「改ざんの疑いあり」と判断し、管理者にアラートを通知します。この方法は、主にWebサイトを外部から定期的に巡回してチェックする「外形監視」で用いられます。

メリット

  • 既知の攻撃手法に対して非常に高い精度で、かつ高速に検知できる。
  • 仕組みが比較的シンプルで、多くのツールやサービスで採用されている。

デメリット

  • データベースに登録されていない未知の攻撃(ゼロデイ攻撃)や、巧妙に改変された亜種のマルウェアは検知できない。
  • シグネチャデータベースの更新頻度が検知精度を左右するため、常に最新の状態を保つ必要がある。

振る舞い分析型:仮想環境での動作で不審な挙動を検知

振る舞い分析型は、Webサイトのコンテンツを直接解析するのではなく、「サンドボックス」と呼ばれる隔離された仮想環境上で実際にWebサイトを動作させ、その挙動を監視することで不正な活動を検知する高度な手法です。パターンに頼らないため、未知の脅威にも対応できる可能性があります。

例えば、改ざんによって埋め込まれたスクリプトが、ユーザー情報を外部に送信しようとしたり、別のマルウェアをダウンロードしようとしたりする「振る舞い」を捉えます。このような予期せぬ通信や不審なプロセス実行を検知することで、改ざんと判断します。ソース解析型と同様に「外形監視」で利用されることが多い技術です。

メリット

  • パターンマッチングでは検知できない未知の攻撃や、難読化された不正スクリプトも検出できる可能性がある。
  • 実際に悪意のある動作を確認してから判断するため、誤検知が比較的少ない。

デメリット

  • 仮想環境での動作解析に時間がかかる場合がある。
  • 仮想環境であることを検知して動作を停止する、高度なマルウェアには対応できないことがある。
  • 既存の記事で指摘されている通り、どのファイルが原因で不審な挙動を引き起こしているのかを特定するのが難しい場合がある。

ハッシュリスト型:ファイルの「指紋」の変化を検知

ハッシュリスト型は、Webサーバーの内部に設置したエージェントなどが、監視対象となるファイルの「ハッシュ値」を算出し、正常な状態のハッシュ値リストと比較することで変更を検知する手法です。「内部監視」で用いられる代表的な仕組みです。

ハッシュ値とは、ファイルの内容から一定の計算手順(アルゴリズム)によって生成される、そのファイル固有の「指紋」のようなものです。ファイルの内容が1ビットでも変われば、ハッシュ値は全く異なる値になります。この性質を利用し、事前に取得した正常時のハッシュ値と、定期的に監視して取得した現在のハッシュ値を比較。値が異なっていれば、ファイルが何らかの形で変更(改ざん)されたと判断します。

メリット

  • テキストファイルだけでなく、画像やプログラムファイルなど、あらゆる種類のファイルの変更を正確に検知できる。
  • たとえ1文字の変更であっても見逃さず、検知精度が非常に高い。

デメリット

  • Webサイトの正規の更新(コンテンツの修正やプラグインのアップデートなど)も「変更」として検知してしまうため、運用において更新作業のたびに正常な状態のハッシュ値を再登録(ホワイトリストの更新)する必要がある。
  • どのファイルが変更されたかは分かるが、具体的に「どのように」変更されたかまでは分からない。

原本比較型:正しいファイルとの差異をチェック

原本比較型は、その名の通り、あらかじめ安全な場所に保管しておいた「原本ファイル」と、現在サーバー上で公開されているファイルの内容を直接比較し、差異がないかを確認する非常に確実な検知方法です。ハッシュリスト型と同様に「内部監視」で用いられます。

定期的に、あるいはファイルの更新をトリガーとして、サーバー上のファイルと原本ファイルを一つひとつ照合します。もし両者の間に違い(差分)が見つかれば、それは意図しない変更、つまり改ざんであると判断します。差分を検出するツール(diffコマンドなど)と同様の原理です。

メリット

  • 仕組みが非常にシンプルで分かりやすい。
  • 変更されたファイルを特定できるだけでなく、具体的にどの部分がどのように変更されたのかまで詳細に把握できる。
  • 復旧時には、原本ファイルをサーバー上のファイルに上書きすることで、迅速かつ確実に対応できる。

デメリット

  • ファイルの内容をすべて比較するため、ハッシュリスト型に比べて処理に時間がかかり、サーバーへの負荷が高くなる傾向がある。
  • 比較元となる原本ファイルを常に最新かつ安全な状態で管理する必要があり、運用負荷がかかる。

これらの検知方法は、それぞれ一長一短があります。そのため、多くの改ざん検知ツールやサービスでは、これらの仕組みを複数組み合わせることで、検知の精度と速度を両立させています。以下の表で各タイプの特徴をまとめます。

Webサイト改ざん検知の4つのタイプの比較
検知タイプ 検知の原理 メリット デメリット 主な監視方法
ソース解析型 (パターンマッチ型) 既知の不正パターンのデータベースと照合する
  • 既知の攻撃に強い
  • 検知が高速
  • 未知の攻撃に弱い
  • シグネチャの更新が必要
外形監視
振る舞い分析型 仮想環境で動作させ、不審な挙動を監視する
  • 未知の攻撃に対応可能
  • 誤検知が少ない
  • 解析に時間がかかる
  • 原因ファイルの特定が困難な場合がある
外形監視
ハッシュリスト型 ファイルのハッシュ値(指紋)の変化を検知する
  • あらゆるファイルの微細な変更を検知
  • 検知精度が非常に高い
  • 正規の更新も検知してしまう
  • 運用管理が煩雑になる可能性がある
内部監視
原本比較型 原本ファイルと現在のファイルを直接比較する
  • 変更箇所を具体的に特定できる
  • 仕組みがシンプルで確実
  • サーバー負荷が高い
  • 原本の厳重な管理が必要
内部監視

【失敗しない】改ざん検知ツールの選び方と比較ポイント

【失敗しない】改ざん検知ツールの選び方と比較ポイント

Webサイトの改ざん検知ツールは数多く存在し、それぞれ機能や特徴が異なります。多様な選択肢の中から自社のWebサイトの規模や運用体制、セキュリティポリシーに最適なツールを選ぶためには、いくつかの重要な比較ポイントを理解しておく必要があります。ここでは、ツール選びで失敗しないための5つのチェックポイントを詳しく解説します。

監視方法(内部監視 or 外形監視)で選ぶ

改ざん検知の監視方法には、大きく分けて「内部監視」と「外形監視」の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の要件に合った方式を選ぶことが最初のステップです。

内部監視(エージェント型)

内部監視は、監視対象のWebサーバー内に「エージェント」と呼ばれる専用ソフトウェアをインストールして、サーバー内部から直接ファイルやシステムの変更を監視する方法です。リアルタイムでの検知に優れ、Webサイトとして公開されていないファイルまで監視対象にできるのが大きな強みです。

  • メリット: リアルタイムに近い高速な検知が可能、公開前のファイルやシステムファイルも監視できる、改ざん箇所の特定が容易
  • デメリット: サーバーへの負荷が発生する可能性がある、エージェントのインストールや設定に手間がかかる、OSやサーバー環境への依存度が高い

外形監視(エージェントレス型)

外形監視は、外部の監視サーバーから定期的にWebサイトへアクセスし、一般のユーザーと同じようにコンテンツを取得して変更がないかを確認する方法です。サーバーにソフトウェアをインストールする必要がないため、手軽に導入できるのが特徴です。

  • メリット: サーバーに負荷をかけない、導入が簡単で手間がかからない、プラットフォームに依存せず様々なWebサイトを監視できる
  • デメリット: 監視間隔が空くため検知にタイムラグが生じる、公開されているページしか監視できない、動的コンテンツの検知が難しい場合がある

どちらの監視方法が適しているかは、サイトの特性によって異なります。個人情報や決済情報を扱うECサイトなど、即時性が求められる場合は内部監視が、更新頻度が低いコーポレートサイトなどで手軽に始めたい場合は外形監視が向いています。

監視方法の比較
比較項目 内部監視(エージェント型) 外形監視(エージェントレス型)
検知の速さ ◎ リアルタイムに近い △ 定期的(数分〜数時間ごと)
サーバー負荷 △ あり ◎ ほぼ無し
導入の手間 △ エージェントのインストールが必要 ◎ URL登録のみで簡単
監視範囲 ◎ Webコンテンツ、システムファイルなど広範囲 △ 公開されているWebページのみ
おすすめのサイト ECサイト、会員サイト、金融機関サイトなど コーポレートサイト、ブログ、LPなど

検知の対象範囲は十分か

次に確認すべきは、ツールがどこまで検知してくれるか、その対象範囲です。WebサイトはHTMLファイルだけでなく、CSS、JavaScript、画像、PDFなど様々なファイルで構成されています。攻撃者はこれらのファイルを狙って不正なコードを埋め込むことがあります。

そのため、HTMLだけでなく、サイトを構成するすべてのファイル形式を監視対象にできるかを確認することが重要です。また、動的にページが生成されるCMS(WordPressなど)を利用している場合は、データベースの変更や不正なプラグインの追加などを検知できる機能があるかもチェックポイントになります。自社のWebサイトの構成を正確に把握し、保護すべき資産をすべてカバーできるツールを選びましょう。

改ざんチェックの頻度は適切か

改ざん検知の頻度は、セキュリティレベルとサーバーへの負荷のトレードオフ関係にあります。検知の頻度が高ければ高いほど、改ざんを早期に発見でき、被害を最小限に抑えることができます。しかし、その分サーバーへの負荷が増大する可能性があります。

一方で、検知頻度が低いとサーバーへの負荷は軽くなりますが、改ざんの発見が遅れ、その間に被害が拡大してしまうリスクが高まります。

  • 高頻度(数分ごと): 被害を即座に把握したいECサイトや重要情報を扱うサイト向け。ただし、サーバーリソースやコストへの影響を考慮する必要がある。
  • 低頻度(1日数回): 更新頻度が低く、サーバー負荷を抑えたいサイト向け。ただし、検知までのタイムラグを許容できるかどうかの判断が必要。

多くのツールでは監視頻度をカスタマイズできます。自社サイトの重要度や更新頻度、サーバーのスペックを総合的に判断し、最適な監視頻度を設定できるツールを選ぶことが肝心です。

検知後のサポート体制(復旧支援など)は万全か

万が一、改ざんが検知された場合に、どのようなサポートを受けられるかはツール選定における非常に重要な要素です。改ざん検知は、あくまで異常を発見する「きっかけ」に過ぎません。その後の原因特定、サイトの復旧、再発防止策の実施といった一連の対応が迅速かつ正確に行えなければ意味がありません。

ツールやサービスを選ぶ際には、以下のサポートが含まれているかを確認しましょう。

  • アラート通知: メールやチャットツールなど、気づきやすい方法で即時に通知してくれるか。
  • レポート機能: いつ、どのファイルが、どのように変更されたかを分かりやすく報告してくれるか。
  • 自動復旧機能: 改ざんされたファイルを、あらかじめ保存しておいた正常なファイルに自動で差し戻す機能があるか。
  • 専門家によるサポート: 原因調査や復旧作業を専門のエンジニアが代行してくれるサービスがあるか。(オプションの場合が多い)
  • 24時間365日の対応: 深夜や休日でも対応してくれる窓口があるか。

自社のセキュリティ担当者のスキルやリソースでどこまで対応可能かを見極め、不足する部分を補ってくれる手厚いサポート体制を持つツールを選ぶことが、事業継続性を確保する上で不可欠です。

コストと導入形態

改ざん検知ツールのコストは、初期費用と月額(または年額)のランニングコストで構成されます。料金体系は、監視対象のURL数やサーバー台数、機能、サポートレベルによって大きく異なります。自社の予算内で必要な機能を満たせるか、慎重に比較検討する必要があります。

また、導入形態もコストや運用に影響します。主に以下の3つの形態があります。

導入形態の比較
導入形態 特徴 メリット デメリット
SaaS(クラウド)型 サービス提供事業者の環境を利用する形態。
  • 初期投資が不要
  • インフラ管理が不要
  • 手軽に導入可能
  • カスタマイズ性が低い
  • ランニングコストが発生
ソフトウェア型 自社のサーバーにソフトウェアをインストールする形態。
  • 自社環境に合わせた柔軟な設定が可能
  • 買い切り型の場合、長期的なコストを抑えられる
  • 導入や運用に専門知識が必要
  • サーバーの維持管理コストがかかる
アプライアンス型 専用のハードウェア機器を導入する形態。
  • 高性能で安定した稼働
  • セキュリティが強固
  • 導入コストが非常に高い
  • 設置スペースが必要

近年では手軽に始められるSaaS型が主流ですが、セキュリティポリシーが厳しい大企業などではソフトウェア型やアプライアンス型が選択されることもあります。無料トライアルなどを活用して実際の使用感を確かめながら、自社の予算、運用体制、求めるセキュリティレベルに最もマッチしたツールを選びましょう。 

おすすめのWebサイト改ざん検知ツール・サービス

おすすめのWebサイト改ざん検知ツール・サービス

Webサイトの改ざん検知ツールやサービスは、その監視方法、検知の仕組み、そしてサポート体制において多岐にわたります。自社のWebサイトの規模や運用体制、そしてセキュリティポリシーに合わせて最適なものを選ぶことが重要です。ここでは、国内で広く利用され、実績のある代表的なツール・サービスを比較しながら、それぞれの特徴を詳しく解説します。

【PR】脆弱性診断から始めるなら「SCT SECURE クラウドスキャン」

Webサイトのセキュリティに脆弱性が存在すると、改ざんをはじめとした様々なサイバー攻撃の標的になりやすくなります。攻撃を受けた場合、Webサイトの停止や情報漏洩だけでなく、サイト訪問者へ被害が拡大する可能性も否定できません。

三和コムテック株式会社が提供する「SCT SECURE クラウドスキャン」は、改ざんの根本的な原因となりうるWebサイトのセキュリティ脆弱性を専門的に診断するツールです。改ざんを検知するだけでなく、そもそも改ざんされない強固なサイトを構築するための予防的アプローチとして、まず自サイトの弱点を正確に把握することが極めて重要です。

このサービスには、以下のような際立った特徴があります。

  • 脆弱性を特定するだけでなく、修正に必要な具体的な情報まで詳細に提供
  • Webアプリケーションからネットワークデバイスまで、幅広い対象の診断に対応可能
  • 専門家による運用・管理が行われるクラウド型サービスのため、自社でのメンテナンスは不要
  • クレジットカード業界の国際的なセキュリティ基準である「PCIDSS」のASV認定スキャンベンダー資格を保有

改ざん検知とあわせて、その原因となる脆弱性対策を根本から見直したい、あるいはセキュリティ対策の第一歩として何から始めるべきか検討している企業に最適なサービスです。

Gred Web改ざんチェック Cloud

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社が提供する、クラウド型のWebサイト改ざん検知サービスです。多くの企業や官公庁での豊富な導入実績があり、その信頼性の高さが大きな特徴です。

主な特徴は以下の通りです。

  • 手軽な外形監視: 実際にインターネット経由でWebサイトへアクセスして監視する「外形監視」を採用しているため、監視対象のサーバーにエージェント(監視プログラム)をインストールする必要がなく、サーバーへの負荷をかけずに導入できます。
  • 高精度な二重検知エンジン: 既知の攻撃パターンと比較する「パターンマッチング」による静的解析と、仮想ブラウザ上でサイトを実際に動作させて不審な挙動を検知する「振る舞い分析」による動的解析を組み合わせることで、未知の巧妙な攻撃も見逃しにくくなっています。
  • 迅速なアラート通知: 改ざんを検知した際には、即座に指定のメールアドレスへアラートが送信されるため、迅速な初期対応が可能になります。
  • 直感的な管理画面: 監視状況や検知履歴などを分かりやすく確認できる管理画面が提供されており、専門的な知識がなくても容易に運用できます。

サーバー側の設定変更を最小限に抑え、手軽かつ高精度な改ざん検知を始めたい場合に最適なサービスと言えるでしょう。

SiteLock(サイトロック)

SiteLockは、世界中のWebサイトで利用されている総合的なセキュリティサービスです。国内の主要なレンタルサーバー事業者で公式オプションとして提供されていることが多く、改ざん検知だけでなく、マルウェアスキャン、脆弱性診断、WAF機能などをワンパッケージで手軽に導入できる点が最大の魅力です。

プランによって機能は異なりますが、主に以下のような多層的な防御機能を提供しています。

SiteLockの主な機能
機能カテゴリ 具体的な内容
マルウェアスキャン Webサイトを構成するファイルを毎日自動でスキャンし、悪意のあるコードやマルウェアを検出します。プランによっては自動での駆除も可能です。
脆弱性診断 特に攻撃の標的となりやすいCMS(WordPressなど)本体やプラグインの脆弱性をスキャンし、アップデートが必要な箇所などを特定します。
改ざん検知(原本比較型) Webサイトのファイルが変更されていないかを継続的に監視し、万が一変更が加えられた場合は管理者に通知します。
WAF機能 SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃をリアルタイムで防御します。

複数のセキュリティ対策を個別に導入・管理する手間を省きたい場合や、特にWordPressで構築されたサイトのセキュリティを包括的に強化したいと考えている中小企業や個人事業主におすすめです。

攻撃遮断くん

株式会社サイバーセキュリティクラウドが提供する、国内導入実績No.1のクラウド型WAFサービスです。その名の通り、Webサイトへの攻撃を遮断する「WAF」が主機能ですが、Web改ざん検知機能も提供しており、WAFによるサイバー攻撃の「予防」と、改ざん検知による「早期発見・復旧」を両立できる点が大きな強みです。

「攻撃遮断くん」のWeb改ざん検知機能には、以下の特徴があります。

  • リアルタイムな内部監視: サーバー内部にエージェントを設置し、ファイルの変更をリアルタイムで検知します。これにより、攻撃者がファイルを設置した瞬間を捉えることが可能です。
  • 確実な原本比較型: あらかじめ登録した正常な状態のファイル(原本)と現在のファイルを比較することで、意図しないわずかな変更も見逃さず、誤検知が少ない高精度な検知を実現します。
  • 迅速な自動復旧(オプション): 改ざんを検知した際に、即座に正常なファイルへと自動で復旧させる機能も提供されています。この機能により、万が一改ざんされても被害の拡大を即座に防ぎ、Webサイトのダウンタイムを最小限に抑えることができます。

Webサイトへの攻撃をリアルタイムで防御しつつ、万が一の改ざんにも迅速に対応したいECサイトや、サービスの継続性が重視される企業の公式サイトに最適なソリューションです。

改ざんを未然に防ぐための予防策

 改ざんを未然に防ぐための予防策

Webサイトの改ざんを検知する仕組みを導入することは、万が一の事態に迅速に対応するために不可欠です。しかし、それと同時に、そもそも改ざん被害に遭わないための「予防策」を講じることが最も重要です。攻撃を受けてから対応するのではなく、攻撃の糸口を与えない堅牢なサイトを構築することが、ビジネスの継続性と信頼性を守る上で最善の策となります。ここでは、改ざんを未然に防ぐための効果的な予防策を3つの観点から具体的に解説します。

WAF(Web Application Firewall)の導入

Webサイト改ざんの多くは、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃によって引き起こされます。WAF(Web Application Firewall)は、こうした攻撃からWebサイトを守るための強力な防衛策です。

従来のファイアウォールがIPアドレスやポート番号といったネットワークレベルでの通信を制御するのに対し、WAFはWebアプリケーションの通信内容(HTTP/HTTPSリクエストの中身)を詳細に解析し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった不正な攻撃パターンを検知・遮断します。これにより、アプリケーション自体に脆弱性が存在していたとしても、その脆弱性を突いた攻撃がWebサーバーに到達するのを防ぐことができます。

WAFには主に3つの提供形態があり、それぞれに特徴があります。

WAFの提供形態別メリット・デメリット
提供形態 メリット デメリット
クラウド型(SaaS型) DNSの設定変更のみで導入でき、手軽で低コスト。専門家によるシグネチャ(攻撃パターン定義)の更新が自動で行われる。 提供事業者によって機能やサポート体制に差がある。
ソフトウェア型(ホスト型) Webサーバーに直接インストールするため、柔軟な設定が可能。ハードウェアの追加購入が不要。 サーバーリソースを消費する。OSやミドルウェアとの相性問題が発生する可能性がある。
アプライアンス型 専用ハードウェアのため処理性能が高く、大規模なシステムにも対応可能。既存のネットワーク構成に組み込みやすい。 導入・運用コストが高額になりがち。物理的な設置スペースが必要。

現在では、導入の手軽さとコストパフォーマンスの高さからクラウド型のWAFが主流となっています。WAFを導入することで、24時間365日、自動でWebアプリケーションを監視・防御し、改ざんのリスクを大幅に低減させることが可能です。

ソフトウェア・プラグインの定期的なアップデート

Webサイトを構成するCMS(コンテンツ管理システム)、プラグイン、テーマなどのソフトウェアは、攻撃者にとって格好の標的です。これらのソフトウェアに脆弱性が発見されると、開発元はそれを修正するためのセキュリティパッチを含んだ更新プログラム(アップデート)を配布します。ソフトウェアを常に最新の状態に保つことは、既知の脆弱性を塞ぐ最も基本的かつ重要なセキュリティ対策です。

特にWordPressのようなオープンソースのCMSは世界中で広く利用されているため、脆弱性情報が公開されると、その情報を悪用した攻撃が瞬く間に世界中に広がります。アップデートを怠り、脆弱性を放置したままサイトを運営することは、攻撃者に「どうぞ侵入してください」と扉を開けているのと同じ状態であり、極めて危険です。

以下のソフトウェアは、常にバージョン情報を確認し、アップデートが公開されたら速やかに適用するようにしましょう。

  • CMS本体(WordPress、Joomla!、Drupalなど)
  • プラグインや拡張機能
  • Webサイトのテーマ
  • Webサーバーソフトウェア(Apache、Nginxなど)
  • プログラミング言語(PHPなど)
  • データベース管理システム(MySQLなど)

ただし、アップデートを適用する際は注意が必要です。互換性の問題でサイトが正常に表示されなくなる可能性もあるため、必ず事前にサイト全体のバックアップを取得し、可能であればテスト環境で動作確認を行ってから本番環境に適用することが推奨されます。

パスワード管理の徹底と多要素認証の導入

どれだけシステムを強固にしても、管理者アカウントの認証情報が漏洩してしまえば、攻撃者は正規のルートから堂々と侵入し、サイトを自由に改ざんできてしまいます。そのため、認証セキュリティの強化は改ざん防止に直結する重要な対策です。

強力なパスワードの設定と適切な管理

Webサイトの管理者アカウントやサーバーへのログインに使用するパスワードは、セキュリティの根幹です。安易なパスワードは、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)や辞書攻撃によって容易に突破されてしまいます。以下の条件を満たす、強力なパスワードを設定しましょう。

  • 長さ: 最低でも12文字以上、できれば16文字以上を推奨します。
  • 複雑さ: 英大文字、英小文字、数字、記号をすべて組み合わせます。
  • 推測困難性: 名前、地名、誕生日、辞書に載っている単語など、推測されやすい文字列は避けます。

また、最も重要なのは「パスワードの使い回しをしない」ことです。他のサービスで漏洩したIDとパスワードのリストを使って不正ログインを試みる「リスト型攻撃」の被害を防ぐため、サービスごとに固有のパスワードを設定することが必須です。多数のパスワードを安全に管理するためには、「1Password」や「LastPass」といったパスワード管理ツールの利用が効果的です。

多要素認証(MFA)の導入

パスワードだけに頼る認証は、もはや安全とは言えません。セキュリティレベルを飛躍的に向上させるために、多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)を導入しましょう。

多要素認証とは、「知識情報(パスワードなど)」、「所持情報(スマートフォンアプリ、セキュリティキーなど)」、「生体情報(指紋、顔認証など)」のうち、2つ以上の要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。これにより、万が一パスワードが漏洩してしまっても、攻撃者は第二の認証要素(スマートフォンなど)を持っていないため、不正ログインを防ぐことができます

現在では、CMSの管理画面(WordPressではプラグインで容易に導入可能)やサーバーへのSSH接続、利用しているクラウドサービスの管理コンソールなど、多くのシステムで多要素認証が利用できます。Webサイトの管理者権限を持つアカウントには、必ず多要素認証を設定するようにしましょう。

もし改ざんを検知したら?緊急時の対応フロー

もし改ざんを検知したら?緊急時の対応フロー

Webサイトの改ざんを検知した場合、パニックに陥らず、冷静かつ迅速に対応することが被害の拡大を防ぐ鍵となります。万が一の事態に備え、事前に対応フローを理解しておくことが重要です。ここでは、改ざん検知後の具体的な緊急対応フローを4つのステップに分けて詳しく解説します。

Step1: Webサイトの隔離・公開停止

改ざんの事実を確認したら、最初に行うべきは被害の拡大を食い止めるための「隔離」です。サイトをオンラインの状態にしておくと、訪問者がマルウェアに感染したり、フィッシングサイトへ誘導されたりする二次被害が発生する危険性が高まります。

Webサイトの公開停止

まず、Webサイトへのアクセスを遮断し、一時的に公開を停止します。サーバーの管理パネルからサイトをオフラインにするか、「現在メンテナンス中です」といった静的なHTMLページを表示させるように設定します。これにより、新たな訪問者が被害に遭うのを防ぎます。

ネットワークからの隔離

次に、改ざんされたサーバーを社内ネットワークやインターネットから物理的または論理的に切り離します。この措置は、攻撃者がサーバーを踏み台にして他のシステムへ侵入したり、サーバー内に潜伏して外部と不正な通信を行ったりするのを防ぐために不可欠です。同時に、これ以上の改ざんや情報漏洩を防ぎ、調査のための証拠を保全する目的もあります。

関係者への速やかな第一報

隔離措置と並行して、社内の関係各所(情報システム部門、セキュリティ担当者、経営層、広報部門など)へ速やかに第一報を入れ、インシデント対応チームを招集します。初期段階での情報共有が、その後のスムーズな対応につながります。

Step2: 原因の調査と特定

サイトを隔離し、安全を確保したら、次に改ざんの原因と被害範囲を特定する調査を開始します。正確な原因究明が、適切な復旧と再発防止策の策定に不可欠です。

ログの解析

Webサーバーのアクセスログ、エラーログ、FTPの転送ログ、OSのシステムログなどを詳細に解析します。不審なIPアドレスからのアクセス、普段とは異なる時間帯のログイン、不審なコマンドの実行履歴など、攻撃の痕跡を探します。これにより、いつ、どこから、どのように侵入されたのか(侵入経路)を特定する手がかりを得られます。

ファイルの整合性チェック

改ざんされる前の正常な状態のバックアップと、現在のサーバー上のファイルを比較し、不正に追加・変更・削除されたファイルをすべて洗い出します。ファイルのタイムスタンプ(最終更新日時)を確認し、不審な日時に変更されたファイルがないかもチェックします。特に、見慣れないPHPファイルやJavaScriptファイルが設置されていないか注意深く確認が必要です。

専門家への依頼(フォレンジック調査)

自社での調査が困難な場合や、被害が深刻である場合は、速やかに外部のセキュリティ専門業者にフォレンジック調査を依頼することを検討してください。専門家は高度な技術を用いて、ログやディスクイメージから攻撃の痕跡を詳細に分析し、被害の全容を解明します。

Step3: サイトの復旧と脆弱性の修正

原因と被害範囲が特定できたら、サイトの復旧作業に移ります。単に元の状態に戻すだけでなく、侵入の原因となった脆弱性を確実に修正することが最も重要です。

クリーンな環境での再構築

最も安全な復旧方法は、サーバーを初期化し、OSから再インストールしてクリーンな環境を再構築することです。攻撃者によってバックドアなどが仕掛けられている可能性を完全に排除するため、既存の環境をそのまま利用するのは避けるべきです。

バックアップからの復元

再構築したクリーンなサーバーに、改ざん被害を受ける前であることが確認できている、健全なバックアップデータを使ってWebサイトのコンテンツ(ファイルやデータベース)を復元します。どの時点のバックアップが安全かを慎重に見極める必要があります。

脆弱性の修正

調査で特定された脆弱性をすべて修正します。具体的な修正作業には以下のようなものがあります。

  • CMS(WordPressなど)、プラグイン、テーマをすべて最新バージョンにアップデートする。
  • 推測されやすいパスワードを使用していた場合は、すべてのパスワード(サーバーの管理者、CMS、データベース、FTPなど)を複雑で強固なものに変更する。
  • 不要なプラグインやテーマ、FTPアカウントなどは削除する。
  • SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの脆弱性があった場合は、アプリケーションのソースコードを修正する。

復旧作業が完了したら、サイトを公開する前にテスト環境で十分な動作確認とセキュリティチェックを行い、脆弱性が完全に解消されていることを確認します。

Step4: 関係各所への報告と再発防止策の策定

サイトの復旧と並行して、関係各所への報告と、今後の再発防止策の策定を進めます。誠実な対応が、失われた信頼を回復するための第一歩です。

関係機関への報告

被害の状況に応じて、以下の機関への報告や相談を行います。特に個人情報の漏洩があった場合は、個人情報保護委員会への報告が法律で義務付けられています。

報告先 主な報告・相談内容
警察(サイバー犯罪相談窓口) 不正アクセス禁止法違反などの被害に関する相談・被害届の提出
IPA(情報処理推進機構) コンピュータウイルス・不正アクセスに関する届出
個人情報保護委員会 個人情報の漏洩またはそのおそれがある場合の報告(法的義務)
JPCERT/CC インシデントに関する情報提供・調整依頼

クレジットカード会社

カード情報が漏洩した可能性がある場合の報告

顧客・取引先への公表と謝罪

Webサイト上で、改ざんの事実、被害の状況、原因、現在の対応、そして再発防止策について、誠意をもって公表します。情報漏洩など、顧客に直接的な影響が及ぶ可能性がある場合は、個別に連絡を取り、謝罪と今後の対応について説明する必要があります。専用の問い合わせ窓口を設置することも有効です。

再発防止策の策定と実施

今回のインシデントを教訓とし、恒久的な再発防止策を策定・実施します。これには、以下のような対策が含まれます。

  • WAF(Web Application Firewall)の導入による攻撃の防御
  • セキュリティ診断(脆弱性診断)の定期的な実施
  • ソフトウェアやプラグインのアップデート運用の徹底
  • パスワードポリシーの強化と多要素認証の導入
  • 従業員に対するセキュリティ教育の実施
  • インシデント発生時の対応体制(CSIRTなど)の見直しと訓練

これらのフローを確実に実行することで、被害を最小限に抑え、企業の信頼回復とセキュリティレベルの向上につなげることができます。

まとめ

本記事では、Webサイト改ざんの深刻な被害から、その原因、検知の仕組み、ツールの選び方、そして予防策と緊急時対応までを解説しました。Webサイトの改ざんは、顧客情報の流出やブランドイメージの低下など、ビジネスに致命的な影響を与えかねません。そのため、自社のサイトに合った改ざん検知ツールを導入し、WAFの活用やソフトウェアの定期的な更新といった予防策を講じることが極めて重要です。

Webサイトの改ざんはセキュリティの脆弱性を突いて行われることが一般的です。よってセキュリティの脆弱性を防ぐために日頃から十分な対策をしておきましょう。弊社が提供するSCT SECURE クラウドスキャンで脆弱性診断を行い、改ざんできないWebサイトとして運営できるように対策してみてはいかがでしょうか。

<SCT SECURE クラウドスキャンの特徴>

  • 脆弱性を特定に加え、修正に必要な情報を提供
  • ネットワークデバイス、Webアプリケーションに対して利用可能
  • メンテナンス不要
  • カード業界のセキュリティ基準であるPCIDSS ASV資格を持つ

Webサイトのセキュリティ脆弱性診断を行いたい企業はぜひ下記リンクからお問い合わせください。
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