スマートフォンの普及に伴い、アプリ開発は日常生活の一部となっています。しかし、スマホアプリは便利である一方で、セキュリティの脅威も増加しています。
そのため開発者は、個人情報の漏洩や不正アクセスなどのリスクを防がなくてはなりません。セキュリティ対策を行い、安全なスマホアプリを開発しリリースする必要があります。
本記事では、スマホアプリ開発における主要なセキュリティ問題とその対策法について詳しく解説します。さらに安全で信頼性の高いアプリを作成するための方法も解説します。
スマホアプリ開発におけるセキュリティリスクとは?
スマホアプリ業界では、ネットバンキングやオンラインショッピング、オンラインゲームなど、多岐にわたるアプリが日々登場しています。5GやAIの発展もあり、学習系アプリや業務クラウド系アプリの数も急速に増加しています。
しかし、その一方で、スマホアプリが原因とされる大規模なセキュリティ事故も発生しています。QR決済アプリのリリース直後には不正アクセスが相次ぎ、ログイン情報の乗っ取りやクレジットカードの不正チャージが発生、サービス停止や補償などの対応に迫られるという事態が実際に起こっています。また、不正ログインによる個人情報の漏えいもセキュリティ事故の1つです。
スマホアプリには未だ多くのセキュリティリスクが潜んでいますが、アプリ公開時の審査に、「脆弱性の有無の検査」は含まれていません。そのため、企業は独自に脆弱性診断を行い、早期に問題を発見して修正することが求められています。
スマホアプリ開発における10のセキュリティ問題とそれらの対策方法
日常生活がスマホアプリに大きく依存するようになり、個人情報や金融データを扱うアプリのセキュリティは、開発者にとって重大な課題とされています。ここでは、スマホアプリ開発に関する10の問題とその解決法を1つずつ解説します。
1)疑わしいコードスニペットを使う
コードのコピー&ペーストは、開発者(初心者)の間で一般的な方法です。 これを行うことで時間を節約できる可能性がありますが、コードが脆弱になる可能性もあります。 攻撃者が意図的にコードを書いた可能性もあるかもしれません。
解決策:各文字を理解せずに、やみくもにコードをコピーするのは絶対にやめましょう。 また、検証済みのユーザーが作成していないフレームワークやライブラリのダウンロードは避けてください。 これらのスマホアプリ開発セキュリティのベストプラクティスは、スマホアプリのセキュリティを強化するのに役立ちます。
2)不十分な入力検証
ユーザーが入力したデータを検証しないと、アプリケーションが攻撃者の標的になりやすくなります。 適切な検証がないと、攻撃者はアプリに悪影響を与える可能性のある悪意のあるコマンドや有害なコードを入力する可能性があります。
解決策:すべての入力フィールドを可能な限り最良の方法で検証します。 以下は、検討すべき事項です。
- データ形式
- データの長さ
- 許可される文字
- 最小値と最大値 など
検証を行うことで、アプリは必要なデータを受け入れるようになり、セキュリティが向上します。
3) データ暗号化が弱い、または全くされていない
データの処理方法は、アプリの安全性に大きく影響します。 例えば、暗号化せずにデータを保存および送信する場合、これはセキュリティ上の大きな問題となります。 誰でもこのデータにアクセスし、同じものを不当な目的に使用できるからです。
解決策:保存および送信するデータは全て暗号化しましょう。 これにより、ハッカーがデータをダウンロードしても使用できなくなり、スマホアプリ開発のセキュリティを確保できます。
Pro Tip:暗号化キーは絶対にアプリに保存せず、AESやSHA256などの暗号化プロトコルを使用すると、より高い保護が得られます。
4)安全でないユーザー認証
ユーザーがアプリケーションで必要なパスワードを設定できる場合、ユーザーは危険にさらされています。 これは、攻撃者がさまざまな文字の組み合わせを試し、ユーザーのパスワードをブルートフォース攻撃してアクセスできるようにする可能性があるためです。 そして、これは一般的で簡単なパスワードに最も効果的です。
解決策:安全なスマホアプリ開発チェックリストには、必ず以下のポイントを含めてください。
- パスワードを設定するための強力な検証条件を設定する
- 一定回数以上の間違った試行の後、ユーザーをロックアウトする
- アプリケーションの2FAを有効にする
5)サーバー側のセキュリティが不十分
多くの開発者は、サーバー側のセキュリティに十分な注意を払うことなく、アプリケーションのクライアント側を保護しています。 また、特にサーバーに情報が保存されている場合には、クレジットカード情報などの機密データが危険にさらされる可能性があります。
解決策:スマホアプリ開発のセキュリティのベストプラクティスのリストに、高品質の暗号化と信頼性の高いSSLを含めてください。 こうすることで、サーバー側のセキュリティを大幅に強化できます。
6)ハードコーディング情報
開発初心者は、ユーザー名やパスワードなどの情報をコードにハードコーディングしてしまうことがあります。 簡単な回避策のように見えるかもしれませんが、このようなコーディングの誤りはユーザー情報を危険にさらすことになります。
解決策:常に高品質なコーディングを行い、情報をハードコーディングしないようにしましょう。 それでも、アプリに情報を保存する必要がある場合は、暗号化されていることを確認してください。
7)機密情報のキャッシュ
キャッシュはユーザーの時間短縮に役立ちますが、同時にリスクも伴います。 例えば、アプリがユーザーのログイン情報を保存して、ユーザーが何も入力せずにすぐにログインできるようにするとします。 これで、モバイルデバイスが盗まれた場合、誰でもそのアプリにログインして不正に利用できます。
解決策:機密データが自動的にキャッシュされないようにする条件を含めるようにしてください。
8)効果のないセッション処理
スマホアプリは通常、Webアプリよりも長いセッションを持ちます。 これにより、特にeコマースドメインでのスムーズなユーザーエクスペリエンスと売上が保証されます。 ただし、モバイル端末が盗まれてセッションの有効期限が切れない場合、泥棒は情報に簡単にアクセスでき、アプリのセキュリティが損なわれてしまいます。
解決策:再認証技術を統合します。 これにより、ユーザーは、最終的なトランザクションを行う前に、IDを確認するために再度ログインするように求められます。
9)ペネトレーションテストをしない
侵入テストは、アプリケーションのリアルタイムのセキュリティ上の欠陥や脆弱性を特定するのに役立ちます。警察庁が行ったアンケート調査によると、日本では約半数の企業がデータ侵害を防ぐためにペネトレーションテストを実施しています。
残念ながら、納期が短いことや、単なる不注意のために、開発者はこのステップを飛ばしてアプリケーションをリリースしてしまうことがあります。 そして、これはユーザーを危険にさらすことになります。
解決策:どれほど期限が迫っていても、アプリケーションに対して複数のペネトレーションテストを実行しましょう。 そうすることで、セキュリティ上の欠陥を発見し、修正することで、安全なWebサイトとスマホアプリの開発を保証するのに役立ちます。
参考:不正アクセス行為対策等の実態調査 アクセス制御機能に関する技術の研究開発の 状況等に関する調査(警視庁)
10)セキュリティパッチを頻繁にリリースしない
標準的な手順では、パッチやアップデートはユーザーからのフィードバックに基づいて頻繁に行われるはずです。しかし、 残念ながら、これらがほとんど行われない場合、ユーザーのセキュリティと会社の評判を危険にさらします。
解決策:アプリが公開されたら、適切な顧客からのフィードバックを探します。 フィードバックに対応し、パッチを適用し、改善版をリリースすることを繰り返します。 こうすれば、旧バージョンに残した抜け穴を攻撃者に利用されることはありません。 また、安全なスマホアプリの開発を保証できます。
スマホアプリが狙われる理由は?
近年、スマホアプリやWebアプリを狙ったサイバー攻撃の件数が増えています。なぜ、スマホアプリは攻撃の対象となるのでしょうか。その原因と問題点を詳しく解説します。
利用者も多く重要データの宝庫になっているため
スマホアプリは、銀行や電子決済、SNS、メッセージングなど、多岐にわたる分野で広く利用されています。このため、個人情報、金融情報、通信履歴、位置情報など、多くの重要データが集約されています。これらのデータはサイバー攻撃者にとって非常に価値が高く、盗まれたデータは不正利用や売買に使われることが多いです。
また、多くのユーザーが利用するアプリは、攻撃が成功した場合に大量のデータが1度に入手できるため、攻撃者のターゲットとされる傾向があります。
ユーザー個人の端末で十分なセキュリティ対策ができていないことが多いため
多くのスマホユーザーは、セキュリティ対策に関して十分な知識や意識を持っていないことが多いです。推測されやすい簡単なパスワードを設定したり、定期的なアップデートを怠ったりといった心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
また、アプリのインストール時に、公式のアプリストアではなく、不正なサイトやリンクからダウンロードするケースも発生しています。これにより、悪意のあるソフトウェアがスマホにインストールされ、個人データが漏洩するリスクが高まります。
スマホユーザーの多くはセキュリティソフトを導入しておらず、デバイスの保護が不十分です。このような状況が、スマホアプリを狙った攻撃を増加させる一因となっています。
外部との通信が頻繁に行われているため
スマホアプリは、クラウドサービスとのデータ同期や、リアルタイムの通知、メッセージの送受信など、外部との通信を頻繁に行います。ここで行われる通信が暗号化されていない場合や、セキュリティ対策が不十分な場合、通信の途中でデータが盗み取られるリスクが高まります。
また、公衆Wi-Fiなど安全性が確保されていないネットワークを利用することで、通信内容が傍受される可能性もあります。サイバー犯罪者はこうした通信の隙を狙って攻撃を仕掛けることが多いです。このように、外部との頻繁な通信は、スマホアプリのセキュリティリスクを高める要因となっており、攻撃者にとって狙いやすいポイントとなります。
スマホアプリのセキュリティ対策に必要な脆弱性診断
脆弱性診断はスマホアプリのセキュリティ強化に不可欠です。潜在的な脆弱性を特定し、修正することで安全性を高めることができます。ここからは、スマホアプリの脆弱性診断について詳しく解説します。
スマホアプリの開発で脆弱性診断を利用するメリット
スマホアプリ開発において脆弱性診断を実施することには、多くのメリットがあります。脆弱性診断は、アプリ内に存在する脆弱性を発見し評価・対策することで、ランサムウェアやSQLインジェクションなど、脆弱性を悪用して情報漏洩や不正アクセスを行う攻撃からの被害を未然に防ぐことができます。
また、開発プロセスの早い段階で脆弱性診断を活用しておくことで、脆弱性を発見することができるため、修正にかかるコストの削減が可能です。そして、セキュリティ侵害によるブランドイメージの低下を未然に防ぐこともできます。アプリの安全性を保ち、品質を高めることで信頼感も高まり、利用ユーザー数の増加にもつながるでしょう。
スマホアプリの脆弱性診断で診断できる項目
スマホアプリの脆弱性診断では、さまざまなセキュリティ項目を評価します。主な診断項目は以下の通りです。
- アプリ自体の脆弱性
- スマホアプリに保存・蓄積しているデータに問題はないか
- デバイスが動いているOSに脆弱性があるか
- 通信の暗号化が行われているか
- 悪意のあるファイルがアップロードされる危険性がないか
上記以外にも、さまざまな脆弱性が診断されます。診断対象となる脆弱性は、アプリの種類や脆弱性診断ツールによって異なります。用途に合わせたツールを選択しましょう。
スマホアプリ開発におけるセキュリティ用語
スマホアプリ開発では、開発初期段階からセキュリティを意識することが重要です。しかし、セキュリティ関連の用語は意味が曖昧なものも多いです。ここでは、特に重要な2つのセキュリティ用語について解説します。
スマホアプリ開発のライフサイクルとは
スマホアプリの開発ライフサイクルは、ソフトウェア/アプリの作成方法を説明する一連のプロセスです。 スマホアプリ開発ライフサイクルの6つの段階は次のとおりです。
- 発見フェーズ
- デザイン
- 開発
- 品質保証
- リリース
- メンテナンス
HIPAA準拠のスマホアプリ開発とは
HIPAAは、機密性の高い医療記録と個人情報を保護するために1996年に制定された法律です。 また、HIPPAに準拠したスマホアプリ開発とは、その原則に従ったアプリケーションを開発することです。
全てのヘルスケアプロバイダー、ヘルスケアプランプロバイダー、ヘルスケアクリアリングハウス、およびヘルスケアビジネスアソシエイトは、HIPAA準拠のアプリケーションを使用しなければなりません。 それは、患者さんの個人情報を扱っているからです。
安全なスマホアプリ開発を支援するサービス「Appknox」とは?
Appknoxは、スマホアプリのセキュリティテストを自動で行うSaaS型プラットフォームです。静的アプリケーションセキュリティテスト(SAST)、動的アプリケーションセキュリティテスト(DAST)、APIテスト、手動ペネトレーションテストなど、包括的なセキュリティテスト機能を提供しています。
- スマホアプリを開発している企業
- スマホアプリのセキュリティを向上させたい企業
- 厳しいコンプライアンス要件を満たす必要がある企業
上記のような企業におすすめのツールです。
企業規模やセキュリティチェックを行いたいアプリ数に応じて、価格帯も3種類用意されています。
まとめ
本記事では、スマホアプリ開発におけるセキュリティ問題と対策法について解説しました。スマホアプリはサイバー攻撃者の攻撃対象になりやすいため、セキュリティ強化はアプリの信頼性を保つために不可欠です。
アプリ開発においては、脆弱性診断ツールの活用も有効です。アプリ開発の初期段階からアプリの脆弱性診断を行うことで、開発コストの削減、納期短縮にもつながります。セキュリティ情報にアンテナを張り、迅速に対応することで、安全で信頼性の高いアプリの提供が可能となります。
三和コムテックのSCT SECURE スマホアプリ(モバイルアプリ)診断サービスは、顧客のニーズに合わせてワンタイム診断とサブスクリプションプランを提供している脆弱性診断サービスです。静的/動的/API/手動と4種類に加え、専門の診断員による手動診断と、多様なアプローチで脆弱性診断を行っています。
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