紙情報はPCI DSSの対象から除外してよいか

 2023.05.08  岡山 大

「実行計画2017」には、「紙媒体のまま保存する場合は非保持となる。(P14)」と書かれています。

通販の申込みはがきやFAXに、クレジットカード番号が記入されていても、紙のままで保存するのであれば、カード情報非保持と認められます。
ところが、この事業者がPCI DSSに準拠しようとして、QSAの審査やSAQで対応する場合、「実行計画で、紙の保存は非保持としてよいことになっているから、この紙媒体は審査の対象から除外してよい」と考えるのは誤りになるので、注意が必要です。

PCI DSSでは要件9で、「媒体とは、カード会員データを含むすべての紙および電子媒体のことです」と定めています。
紙の申込書に書かれたカード番号も、非保持でなく保護の対象にしなくてはいけないのです。

「日本では、PCI DSSよりも国の実行計画のルールが優先されるのではないのか」という意見はあるでしょう。
そのとおり、カード情報を紙媒体だけでしか扱わない事業者なら、PCI DSS準拠は求められないことになっています。

しかし、PCI DSSに準拠しようとするからには、PCI DSSの要件に従う必要があるのです。
ガソリンエンジンと電気モーターを併用して、状況に応じて使い分けるというハイブリッド車のような"いいとこ取り"の適用はしないということです。
カード情報非保持なのか、PCI DSS準拠なのか、その選択は明確にしなくてはなりません。
この点は、経産省と日本クレジット協会、JCDSCのQSA部会との情報交換の場で、確認されたことでもあります。

(原稿ご提供:日本オフィス・システム㈱ 情報セキュリティ担当森大吾氏)

SCT Security Solution Book

この記事の執筆・監修者
岡山 大
三和コムテック株式会社
セキュリティソリューションプロダクトマネージャー
OEMメーカーの海外営業として10年間勤務の後、2001年三和コムテックに入社。
新規事業(WEBセキュリティ ビジネス)のきっかけとなる、自動脆弱性診断サービスを立ち上げ(2004年)から一環して、営業・企画面にて参画。 2009年に他の3社と中心になり、たち上げたJCDSC(日本カードセキュリティ協議会 / 会員企業422社)にて運営委員(現在,運営委員長)として活動。PCIDSSや非保持に関するソリューションやベンダー、また関連の審査やコンサル、などの情報に明るく、要件に応じて、弊社コンサルティングサービスにも参加。2021年4月より、業界誌(月刊消費者信用)にてコラム「セキュリティ考現学」を寄稿中。

RECENT POST「セキュリティ」の最新記事


アスクルのサイバー攻撃から考える サプライチェーンリスク管理の重要性
セキュリティ

アスクルのサイバー攻撃から考える サプライチェーンリスク管理の重要性

CSPMとは?設定ミスによる情報漏洩を防ぐ!導入メリットから製品比較まで
セキュリティ

CSPMとは?設定ミスによる情報漏洩を防ぐ!導入メリットから製品比較まで

サイバー攻撃大全|目的・種類・事例・対策を網羅的に解説【2025年最新版】
セキュリティ

サイバー攻撃大全|目的・種類・事例・対策を網羅的に解説【2025年最新版】

SBOMとは?なぜ必要?導入手順からツールの選び方まで初心者向けに徹底解説
セキュリティ

SBOMとは?なぜ必要?導入手順からツールの選び方まで初心者向けに徹底解説

紙情報はPCI DSSの対象から除外してよいか
ブログ無料購読のご案内

おすすめ資料

PAGETOP