APIセキュリティは、システム全体の安全を守るための重要な要素です。APIは異なるアプリケーション間でデータや機能をやり取りするための橋渡しとして機能しますが、脆弱なセキュリティは不正アクセスや情報漏えいのリスクにもつながります。
本記事では、APIセキュリティの基本、必要性、代表的な攻撃手法、そして効果的な対策について詳しく解説します。安全なシステム運用を実現するための知識を深めましょう。
APIセキュリティとは
APIセキュリティとは、APIを悪意のある攻撃から保護し、データ漏えいを防ぐための対策のことです。APIはソフトウェア同士が通信するための橋渡しとなるため、ここが狙われると、システム全体が危険にさらされる可能性があります。
APIとは
API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやアプリケーション同士が集まって通信し、データや機能を共有できる仕組みです。 API は、プログラムを直接活用できるインターフェースを提供します。例としてアプリケーションが他のシステムの機能を利用するための橋渡しが可能です。
例えば、地図アプリがレストランの位置情報を表示する際、APIを利用して外部の地図サービスとデータを活用しています。他のサービスやシステムと連携して新しい機能を簡単に追加でき、効率かつ迅速なアプリケーション開発・拡張が可能です。
APIとセキュリティの関係性
API とセキュリティの関係性は非常に重要です。API は異なるアプリケーションやサービス間でデータを遮断するための仕組みですが、この通信路が攻撃者に悪用されると、システム全体に甚大な被害を及ぼす可能性があります。
特に、適切な認証や暗号化がない API は、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高くなります。そのため、API にはセキュリティ対策が必要です。
対策の例としては、通信データの暗号化、リクエストの制限などの手法が一般的です。適切なセキュリティ対策を講じることで、APIを通じた攻撃を防ぎ、安全なシステム運用が可能になります。
APIセキュリティの必要性
API セキュリティは、システム全体が安全に接続するために非常に重要です。
API は異なるシステム上のデータや機能を接続するためのエントリとなるため、セキュリティが脆弱であれば、不正アクセスやデータ漏えいにつながります。
特に、業務アプリケーションやクラウド サービスが API を介して連携することが急増している現在、API の保護は信頼性や安全性を確保するための必須要件です。
なぜAPIが狙われるのか
APIが狙われる理由は、主にその利便性とアクセスの容易さにあります。APIは、異なるアプリケーションやサービス間でデータをやり取りする重要な役割を果たしており、開発者が迅速に機能を統合できる手段として利用されています。
しかし、適切なセキュリティ対策が講じられていないAPIは、攻撃者にとってアクセスしやすい入口です。特に、認証や権限管理が不十分な場合、重要なデータやシステム機能に不正アクセスされる危険性が高まります。また、APIは多くのシステムと連携しているため、1つのAPIが侵害されると、その影響が他のシステムにも広がる可能性があります。
このため、APIは高価値のターゲットとされ、サイバー攻撃の標的となってしまいます。
企業の信頼性を守る
企業の信頼性を守るためには、強固なセキュリティ対策が不可欠です。顧客やパートナーとの信頼関係は、データの保護やサービスの安全性によって築かれます。特に、APIやクラウドサービスを利用する企業では、これらのシステムが脆弱であれば、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まるでしょう。
そして、もしこれらインシデントが発生すると、企業の評判に深刻なダメージを与え、顧客の信頼を失う可能性があります。さらに、法的な責任や罰金も生じるため、経済的損失にもつながります。
信頼性を維持するためには、定期的なセキュリティ監査や脆弱性診断、最新のセキュリティ技術の導入が重要です。これにより、顧客データを保護し、安心して利用できる環境を提供できるのです。
サイバー攻撃の多様化
サイバー攻撃の多様化は、企業や組織にとって深刻な脅威です。攻撃者は、従来のマルウェアやフィッシング手法に加え、AIや自動化ツールを活用して新たな手法を次々と生み出しています。
これにより、攻撃の手法やターゲットが多様化し、特定のセキュリティ対策が効果を持たないケースも増えています。特に、攻撃者が重要なデータを狙って、API攻撃やデータ漏えいをさせてくることが多くなっています。
また、ランサムウェアのように、被害者から身代金を要求する攻撃も増加し、企業の運営に直接的な影響を与えています。このような事態により、セキュリティ対策の見直しやアップデートが常に求められ、リスクを軽減するための継続的な対策が不可欠です。
APIを悪用する代表的な攻撃
APIを狙う、または悪用する代表的なサイバー攻撃は下記の5つです。
- フィッシング攻撃
- 無制限API呼び出し(DoS攻撃)
- SQLインジェクション
- クロスサイトスクリプティング(XSS)
- 中間者攻撃
それぞれの攻撃の特徴を詳しく解説します。
フィッシング攻撃
フィッシング攻撃は、攻撃者が信頼できる組織を装い、ユーザーから機密情報を不正に取得する手法です。
代表的なものに、あるECサイトにそっくりな偽のサイトを作成し、そこに個人情報を入力させるフィッシングサイトがあります。そして、銀行やクレジットカード会社を装ってメールを送信し、カード情報を抜き取ろうとするフィッシングメールも代表例です。最近では、SMSやSNSを利用した攻撃も増えています。
フィッシング攻撃で盗み出した情報を使って、APIへの不正アクセスの被害や、API攻撃により取得した個人情報を使って、フィッシングメールを送信するケースも見られます。
フィッシング攻撃に対抗するために、怪しいリンクをクリックしない、正規のサイトを直接訪問する習慣をつけましょう。また、二段階認証の導入など、追加のセキュリティ対策を講じることも効果的です。
無制限API呼び出し(DoS攻撃)
無制限API呼び出し、またはサービス拒否(DoS)攻撃は、攻撃者が特定のAPIに対して大量のリクエストを送り、サービスを過負荷状態にして利用不能にする手法です。この攻撃により、正当なユーザーがサービスを利用できなくなるだけでなく、システム全体のパフォーマンスが低下することがあります。
攻撃者は、ボットネットやスクリプトを使用して、瞬時に膨大なリクエストを送信でき、これが特に企業のWebサイトやオンラインサービスに大きな影響を与えます。対策としては、レートリミッティングやIPフィルタリング、負荷分散を行うことで、異常なリクエストの検出・制御が可能です。
また、異常なトラフィックを監視するためのセキュリティソリューションの導入で、早期に攻撃を察知し、対処する体制を整えることが求められます。
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、攻撃者が悪意のあるSQLコードをデータベースに送信することで、機密情報を不正に取得したり、データを改ざんしたりする攻撃手法です。この手法は、入力フォームやURL、APIにSQL文を挿入することで実行されます。
攻撃者は、適切な入力検証が行われていないWebアプリケーションを狙い、ユーザー認証情報や個人データを引き出せます。SQLインジェクションは非常に危険であり、一度成功するとデータベース全体へのアクセスが可能になることもあります。
クロスサイトスクリプティング(XSS)
クロスサイトスクリプティング(XSS)は、攻撃者が悪意のあるスクリプトを他のユーザーのブラウザで実行させる攻撃手法です。この攻撃により、ユーザーのクッキーやセッション情報が盗まれたり、フィッシングサイトに誘導されたりすることがあります。
XSSは、入力データの適切な検証やエスケープ処理が行われていないWebアプリケーションを狙います。例えば、掲示板やコメント欄に悪意のあるスクリプトを投稿することで、他のユーザーがそのスクリプトを実行してしまう可能性があります。
中間者攻撃
中間者攻撃(MITM)は、通信の途中に攻撃者が介入し、データを盗聴・改ざんする手法です。攻撃者は、ユーザーとサーバの間に入り込み、双方の通信を妨害します。
また、通信データの中には、機密情報やAPIキー、トークンなどの認証情報も含まれているため、これらを盗み出して、不正利用されるケースが発生しています。対策としては、API経由の通信のTLS暗号化やVPNの導入が効果的です。これにより、通信やデータの安全性を確保し、中間者攻撃のリスクを軽減できます。
APIセキュリティのベストプラクティスと対策方法
APIセキュリティは、現代のシステムにとって非常に重要な要素です。APIを悪意のある攻撃から保護し、データ漏えいを防ぐために、以下のベストプラクティスと対策方法を検討しましょう。
- 認証・認可を強化
- 通信の暗号化
- 入力データの検証とサニタイズ
- レートリミットとスロットリング
- APIゲートウェイを導入
- セキュリティ監視とロギング
- セキュリティの従業員の教育
認証と認可の強化
認証とは、ユーザーやアプリケーションが正当であることを確認するプロセスで、一般的にはOAuthやJWT(JSON Web Token)を使用して実装されます。これにより、APIにアクセスできるユーザーを制限し、不正なアクセスを防ぎます。
認可は、認証されたユーザーが特定のリソースに対してどのような操作を行えるかを決定します。細かい権限設定を行うことで、データの保護が強化されます。また、APIキーを利用することで、アプリケーションごとにアクセスを管理することも効果的です。
これに加え、定期的なキーのローテーションや無効化機能を導入し、セキュリティをさらに向上させることが推奨されます。
通信の暗号化
機密情報や個人データを扱うAPIでは、通信中のデータが第三者に盗聴されるリスクを防ぐために、TLS(Transport Layer Security)の使用が推奨されます。TLSの利用により、データは送信される前に暗号化され、受信側でのみ復号化されるため、悪意のある攻撃者がデータを読み取ることは非常に困難になります。
また、HTTPではなくHTTPSを使用することで、セキュリティを一層強化できます。さらに、APIのエンドポイントも、暗号化された通信を強制する設定を行うべきです。これにより、暗号化されていないリクエストによる攻撃を防げます。
入力データの検証とサニタイズ
攻撃者は、適切な入力データの検証が行われていないAPIを狙い、悪意のあるデータを挿入することでSQLインジェクションやXSS攻撃を試みるケースがあります。
入力データの検証は、データの形式や型、範囲を確認し、期待される形式でない場合には処理を拒否することを意味します。これにより、不正なデータがシステムに入り込むのを防ぎます。
一方、サニタイズは、受け取ったデータを安全な形式に変換するプロセスで、特に特別な意味を持つ文字(例:<、>、&)をエスケープすることで、データの悪用を防ぎます。また、ホワイトリスト方式を用いて許可されたデータのみを受け入れることも効果的です。
適切な入力検証とサニタイズの実施により、APIの脆弱性を大幅に軽減できます。
レートリミットとスロットリング
レートリミットは、特定の時間内に許可されるリクエスト数の制限により、過剰なトラフィックやDoS攻撃からAPIを保護します。例えば、1分間に100リクエストまでと設定することで、不正な利用を防ぎサービスの可用性を確保します。
スロットリングは、リクエストが一定の閾値を超えた際に、リクエストの処理を遅延させる手法です。これによりサーバの負荷を軽減し、システム全体のパフォーマンスを維持します。
どちらの手法も、ユーザーやアプリケーションに対して公平なリソースの配分を実現し、悪意のあるアクセスを検出しやすくします。これらの対策により、APIの安全性を高め、安定したサービス提供が可能です。
APIゲートウェイを導入
APIゲートウェイは、クライアントとバックエンドサービスの間に位置し、リクエストの管理、認証、監視、負荷分散などを一元的に行います。これにより、個々のAPIのセキュリティを向上させるとともに、適切なトラフィックを制御可能です。
具体的には、APIゲートウェイはリクエストのレートリミットを設定し、不正なトラフィックをブロックできます。また、セキュリティの一貫性を保つため認証や認可のプロセスの統一も効果的です。
さらに、APIの使用状況を監視し、異常なパターンを早期発見することで、攻撃の兆候を迅速に把握し、適切な対策を講じられます。
セキュリティ監視とロギング
セキュリティ監視とロギングは、APIセキュリティの重要な要素であり、システムの健全性を維持するために欠かせません。適切な監視を行うことで、異常なトラフィックや不正アクセスの兆候を早期に検出でき、迅速な対応が可能になります。
具体的には、APIへのリクエストやレスポンスを記録し、通常の利用パターンと比較することで、不正な行動を識別します。また、ログにはリクエスト元のIPアドレスやタイムスタンプ、エラーメッセージなどの情報が含まれ、後からの分析に役立ちます。
リアルタイムでのアラート設定を行うことで、攻撃の兆候が見られた際に迅速に通知を受け取れます。これにより、攻撃者に対する防御を強化し、被害を最小限に抑えることが可能です。
セキュリティの従業員教育
従業員が最新のセキュリティ脅威やベストプラクティスを理解することで、リスクを軽減し、事故を未然に防げます。特に、フィッシング攻撃やソーシャルエンジニアリングに関する教育は必須です。
また、APIキーの漏えいを防ぐための意識を高めることも重要です。従業員がAPIキーの安全な管理方法や、不要な露出を避ける手順を理解していれば、不正アクセスのリスクが減少します。
定期的なトレーニングや勉強会を開催し、実際のケーススタディを用いることで、従業員の理解を深めることができるでしょう。さらに、セキュリティに関する社内の方針や事故が起こったときの手続き方法の周知徹底も重要です。
まとめ
APIセキュリティは、システム全体の安全性を確保するために不可欠です。APIは異なるアプリケーション間でデータをやり取りする重要な役割を果たしますが、セキュリティが脆弱だと不正アクセスや情報漏えいのリスクが高まります。
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