企業にとって、生産性の向上は重要な経営課題のひとつです。これを解決するためには、限りある経営資源を業績向上に直結するコア業務に集中しなければなりません。そこで重要な役割を担うものが、PC上の単純作業(ルーティンワーク)を自動化する「RPA」です。本記事では、RPAの定義や導入するメリット、応用できる業務領域などについて解説します。
RPAとは?
RPAは「Robotic Process Automation」の略称で、一定のルールに基づいて処理されるPC上の単純作業を自動化するソフトウェアです。例えば、Microsoft Officeでは、「VBA(Visual Basic for Applications)」と呼ばれるプログラミング言語を使用し、マクロ機能によるタスクの自動処理を実行できます。このVBAによる自動化はWordやExcelなどのOffice内に限定されますが、RPAは複数のシステムやアプリケーションを横断して、単純作業を自動化できる点が大きな特徴です。
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Grand View Research社の調査(※)によると、RPAの市場規模は右肩上がりで成長しており、DXの実現に欠かせないソリューションとして、日本だけではなく世界中で大きな注目を集めています。
(※)参照元:Grand View Research「Robotic Process Automation Market Size & Share Report 2030」
企業がRPAを導入するメリット
以下の5つが、RPAを導入する主なメリットとして挙げられます。
人的なミスの防止につながる
RPAは、PC上の単純作業を自動化するソリューションであり、人為的なミスを防止できる点が大きなメリットです。例えば、買掛金と売掛金の処理、会計ソフトへの仕訳入力、請求書の作成などのバックオフィス業務では、データ入力のミスや手順の不遵守によるエラーが発生するケースが少なくありません。
RPAは一定のスケジュールに則って、確実に特定の処理を実行できるため、手作業によるミスを防げるとともに、エラーのリカバリにリソースを割く必要がなくなります。
単純作業を任せられる
RPAでPC上の単純作業を自動化すれば、企業価値の向上に直結するコア業務にリソースを集中できます。RPAの得意分野は、外部システムとのデータ連携やデータ集計、専用書式への記入、特定のファイルやフォルダの操作などを主とした作業の自動化です。
単純作業を自動化することにより、空いた人的資源をマーケティング活動や営業活動、製品開発などのクリエイティブな業務領域に集中的に投入できます。
コストを削減できる
RPAの導入によって、バックオフィス業務の人件費や福利厚生費などを大幅に削減できる点がメリットです。例えば、大手金融機関ではRPAの本格導入をもとに、1年間で約110万時間以上のバックオフィス業務を削減したという事例があります。
また、RPAはVBAのように複雑なプログラミング言語を扱う必要がありません。IT人材の採用・育成に投じているコストを削減しつつ、単純作業の自動化を推進できる点もメリットのひとつです。
生産性が向上する
RPAを導入するメリットのひとつは生産性の向上です。生産性は投入した経営資源の総量に対する産出量の割合であり、「産出量÷投入量=生産性」の数式で算出されます。これにより、いかにしてリソース投入量を最小化しつつ、最大の成果を創出するかが重要な課題です。
RPAは、24時間365日稼働しながら、膨大な量の単純作業を自動化するため、バックオフィス業務への労働投入量の最小化が実現します。さらに、コア業務に対するリソースの集中によって、産出量の増大が期待できます。
従業員のモチベーションが上がる
企業が持続的に発展していくためには、従業員のモチベーションの向上を図る仕組みが必要です。RPAの導入によって、PC上の単純作業を自動的に処理すれば、従業員は重要度の高いコア業務やクリエイティブな作業に集中できます。
創造性や戦略性が求められる業務領域に注力することで、内発的動機付けに基づくモチベーションが高まり、従業員エンゲージメントの総合的な向上と離職率や定着率の改善が見込まれます。
企業がRPAを導入するデメリット
以下の3点が、RPAを導入する際の懸念事項として挙げられます。
セキュリティリスクが高くなる
マルウェアや不正アクセスによって、ID・パスワードが窃取された場合、RPAの不正利用や情報漏洩につながるリスクが懸念されます。RPAは複数のシステムやアプリケーションを横断するため、各システムへのログイン情報を窃取され、それを社内LANへ侵入する踏み台として利用されるリスクも否定できません。
また、サイバー攻撃のような外部の脅威だけではなく、内部の人間による意図的な不正も起こり得るため、全社レベルに基づく厳格なデータガバナンスの策定が求められます。
RPAでは対応できない業務がある
RPAは単純作業の自動化に特化しているものの、基本的には一定のルールに則ったデータ処理しかできません。AIのような自律的な判断や学習には対応不可能で、あくまでもデータの入力や項目の確認、フォルダの操作など、PC上における単純作業の自動化に留まります。
また、RPAの設定にミスがあった場合はそのまま処理を続けてしまうため、自動化のシナリオを適切に設計する知見が必要です。
ツールによっては準備に手間がかかる
RPAは大きく分けると、「簡易型」と「開発型」の2種類が存在します。簡易型は、プログラミングの知識がなくてもシナリオの設計が可能ですが、複雑かつ高度な自動化には対応できないケースが少なくありません。一方、開発型はデフォルト以外のシナリオ設計に対応できるものの、プログラミングの組み込みが必要になる場合があります。
選定するサービスによっては、運用の定着に相応の時間を要するため、実装までの準備期間や設定の容易さなども考慮しながら、導入プロジェクトを推進すべきです。
RPA化できる業務の実例
以下の3点が、RPAによって自動化できる、主な業務領域として挙げられます。
受注情報・在庫確認業務
RPAは、在庫管理の確認や受注情報の処理を行う領域を自動化できます。例えば、ECサイトにおける受注の確定処理や注文受付確認メールの送信、在庫情報の確認や更新などの作業を、システムやアプリケーションを横断して自動的に実行します。
また、あらかじめ設定した時刻に、メールで在庫数や出荷予定数などを自動送信することも可能です。
領収書や請求書の作成業務
RPAは会計システムから送信されるデータを抽出し、請求書や領収書の作成・印刷を自動的に処理できます。人間が担当するものは、書類の確認・押印・郵送などの物理的な作業のみで、PC上の単純作業はRPAに任せられます。
毎月決まったタイミングに伝票を作成したり、担当者にメールを送付したりする作業も自動化が可能です。
データ集計業務
RPAは特定のデータセットから必要な情報を抽出し、自動的に集計することが可能です。例えば、Excelに入力した月間売上データを抽出し、1年分の売上情報を会計システムの財務諸表に入力する処理を自動化できます。
人事部門では給与管理や勤怠管理、マーケティング部門では販売状況の調査や需要予測などの領域で応用されます。
RPAツール導入にあたってのチェックポイント
RPAの導入時に、チェックすべき項目として挙げられるものが「機能」と「コスト」の2点です。
機能を確認する
冒頭で述べたように、RPAの市場規模は右肩上がりで拡大しており、それに伴って、さまざまなサービスプロバイダが多種多様なRPAツールをリリースしています。基本的な単純作業の自動化に対応しているサービスが多いものの、より高度で複雑な業務プロセスの自動化に特化しているソリューションも増えつつあります。
また、システムの拡張性もサービスによって異なり、組織規模に適したソリューションでなければ、定着しない可能性があります。そのため、自社の経営体制やビジネスモデルを考慮した上で、必要なソリューションを選定する知見が欠かせません。
コストを確認する
IT投資には、プロジェクト規模に応じたリスクが必ず伴います。投資リスクの不確実性を最小化するためには、RPAの設計・開発・実装にかかるイニシャルコストと、継続的な運用・保守によるランニングコストの、中長期的な視点による分析がおすすめです。
バックオフィス業務を自動化することにより、人件費や福利厚生費などを削減できる点がRPAのメリットです。しかし導入するシステムによっては、削減できる見込みのあるコストを運用コストが上回る可能性があります。
また、自動化できる業務量によっては、想定する費用対効果を下回るリスクが懸念されるため、導入前にリスクとリターンを評価・分析する工程が極めて重要です。
高機能RPAツールなら「AutoMate」がおすすめ
高機能かつ低コストであるRPAツールの導入を検討している場合、三和コムテックが提供する「AutoMate」をおすすめします。AutoMateは伝票処理や商品登録、在庫の把握、アンケートの集計など、バックオフィス業務の自動化に特化したソリューションです。自動化を比較的容易に設定できるとともに、条件に応じてシナリオを柔軟に分岐させられる機能も搭載されています。
AutoMateについて詳細を知りたい方は、以下のリンクよりご確認ください。
関連ページ:AutoMate|三和コムテック株式会社
まとめ
RPAは一定のルールに基づいて、PC上の単純作業を自動化するソフトウェアです。主なメリットとして、「人為的なミスの防止」「コア業務に集中できる」「コスト削減」「生産性の向上」「モチベーションアップ」などが挙げられます。自動化によって、ノンコア業務へのリソース投入量を削減し、商談や製品開発、マーケティングなどのコア業務に人的資源を集中できる点が、RPAを導入する大きなメリットです。
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