RPAはパソコン上で行う定型作業を自動化できるツールです。便利そうなので導入したいと思っていても、本当に導入の必要性があるのか、業務改善にどのように役立つのかと考えてしまうかもしれません。
この記事では、RPAが広まってきた背景や導入の効果、業務改善した成功事例をご紹介します。
RPAとは?
RPAとは、「ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)」を略した用語です。これは、人間が手動で行う定型的な作業を、ソフトウェアに組み込まれたロボットが代行するものです。主に、データ入力、ファイルの転送などのルーチンワークを自動化できるとあって、業種を問わずさまざまな企業から注目を集めるようになりました。
RPA導入による業務改善が求められている理由
RPAを導入することで、これまで時間や手間がかかっていた定型的な作業を自動化できるようになり、業務改善を行えます。では、なぜそのようなニーズが高まってきたのかについて、国内における5つの背景を解説します。
働き方改革の推進
まず、国が主導している「働き方改革」の影響です。
厚生労働省によると「働き方改革が目指すもの」とは、少子高齢化に伴って生産年齢人口が減少し続けている状況下で、働く人が事情に合わせて多様な働き方を選択できる社会を実現することです。そのために、生産性向上も必要とされています。
2019年4月からは、「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が施行されています。中でも注目すべきは、時間外労働の上限が設けられたことです。しかし、これまでと同じ業務量で、同じ人員数にもかかわらず労働時間が制限されると、すべての業務をこなせません。そこで、各企業には業務改善が求められています。
「働き方改革関連法」における3つのポイントは、次の項目でそれぞれ簡単に解説しますので、参考にしてください。
年次有給休暇の時季指定
企業は自社で雇用している従業員に対し、毎年5日の年次有給休暇を時季を指定して取得させることが義務化されました。対象者は、年次有給休暇付与日数が10日以上の人です。これにより、上司や同僚への気兼ねや取得することへのためらいをなくし、誰もが休んでリフレッシュできる環境づくりが進むと考えられます。
時間外労働の上限制限
時間外労働は、原則、月45時間・年360時間が上限となりました。ただし臨時的な事情があり、労使間で合意があった場合に限り、年720時間・複数月平均80時間・月100時間が上限として認められます。
長時間労働は、健康を阻害し、ワークライフバランスの実現を妨げる原因になります。女性のキャリア形成や男性の育児参加が困難になり、さらなる少子化を招くと考えられます。そうしたリスクを回避することが、本法律の趣旨です。
参照元:厚生労働省|時間外労働の上限規制わかりやすい解説(P.3)
同一賃金同一労働
近年、正規雇用者と非正規雇用者の間で不合理な待遇差があるのではないかと指摘されてきました。そこで同じ企業内において、基本給や賞与などのあらゆる待遇は等しくするように定められました。
非正規雇用者は、正規雇用者との待遇差があった場合に、雇用主へ説明を求めることも可能です。
労働生産性の向上
労働生産性とは、業務に配置した人員や時間に対して得られる対価のことです。
公益財団法人 日本生産性本部がOECD(経済協力開発機構) データに基づいて分析した結果、2022年の日本における時間当たり労働生産性は52.3 ドルでした。OECD 加盟 38 カ国中 30 位と、1970 年以来最も低い順位です。
参照元:(公財)日本生産性本部|労働生産性の国際比較2023
日本企業の労働生産性が低い理由として、以下の2つがあると考えられます。
- 不必要な残業が多くなりやすい
基本給が低く抑えられ、残業代がないと生活が苦しくなるような報酬体系になっている企業が依然としてあり、残業代を目的に残業を行う状況が見受けられます。また、「全員終わるまで終わりではない」「自分だけ先に帰りにくい」といった意識が根強い職場も少なくありません。このような状況では、不必要な残業が増えて、時間あたりの労働生産性は低下してしまいます。 - IT活用が不十分である
生産性を上げるためのITツールが次々に開発、提供されているにもかかわらず、旧来のやり方にこだわり、そのメリットを享受できていない企業がまだ多くあります。従業員のITリテラシーが低く、便利なITツールを十分活用しきれていません。今後はより合理的な判断に基づいた業務のあり方が求められます。
RPA導入によるメリットや効果
RPAを導入すると、さまざまなメリットが生まれます。
たとえば、経理業務で台帳から売上データを抽出し、システムに入力するといった単純な定型業務を人の手で行った場合、多くの時間や手間がかかり、すぐには終わりません。単純作業では集中力を継続することが難しく、人的ミスも多々発生します。
一方、RPAはロボットソフトウェアなので、作業時間が短縮され、人的ミスが無くなります。定義した作業手順さえ正確であれば、それに従ってプログラムを実行するためミスは起きません。
労働時間を短縮させられるほか、業務品質や労働生産性は確実に向上します。
また、単純作業が減ることで、従業員のモチベーションアップにもつながります。長時間労働が抑制され、働き方改革推進にも貢献します。
さらに、RPAには離職リスクがありません。24時間365日稼働し続けても労働基準法に違反することなく単純作業を遂行可能です。
このように、RPAを導入することで、単に労働生産性が上がるだけでなく、リスクマネジメントにも寄与します。
RPA導入による業務改善の成功事例
ここからは、RPA導入することでこれまで抱えていた課題を解決し、業務改善につながった事例を2つご紹介します。
不動産業での成功事例
東証第一部上場のある不動産メーカーでは、2018年にRPAを本格的に導入しました。当初は、Excelを多用する管理部門が主に活用していたものの、その後1年あまりで社内に広く浸透しました。約40本のRPAシステムにより年間1,700時間超の余力化に成功しました。
RPAが全社的に使用されるようになったきっかけは、従業員が書いたレポート集です。他部署の取り組みを情報共有することが目的であり、その中でRPAの活用に関するレポートが注目されるようになりました。RPAは便利という従業員の声が、全社的な利用と大きな成果に結び付いた事例です。
リース・レンタル業での成功事例
建設・土木機械のレンタル事業を営むある企業でも、RPAを使って業務改善を進めています。
たとえば、月次で定期的に行っている売上資料の作成は、機種別の賃貸売上管理や拠点別得意先売上管理など、10種類にわたります。長年、さまざまなファイルから必要なデータを抽出してExcelへ転記し、拠点別や取引先別などに仕分けて資料を作成してきました。
そこで、機種別売上管理表の作業をRPA化したところ、50分ほどかかっていた作成時間を数分に短縮できました。定型業務をRPAに任せ、営業サポートやお客様対応に時間を充てています。
必要なのは業務改善の本質を考えること
働き方改革の推進や労働生産性の向上に、RPAの活用は有効です。長時間労働を抑制し、人的ミスを減らして業務品質を高めることもできます。
とはいえ、RPAをやみくもに用いてすべての定型業務を自動化すればよいわけではありません。企業が労働生産性を上げるには、まず業務そのものが必要なのか、必要であればそれを効率的に処理するためにはどうすべきか、業務フローを再検討することが必要です。そのために「業務量やプロセスを可視化」し、現在の業務課題を正しく把握しましょう。
上手に活用すれば、RPAツールは強力な武器となります。業務改善のためにぜひ導入を検討してください。
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