業務改善とは、業務上で発生している課題を洗い出し、課題を解決することによって生産性の向上や労働環境の改善などを図ることです。本記事では、働き方改革などとあわせて語られることの多い業務改善について、必要な理由から効果測定を行う際のポイントまでを詳しく解説します。
業務改善はなぜ必要なのか?
戦後、大手自動車メーカーの基本概念のひとつとなり、バブル期前後には海外でも「KAIZEN」として広く知られるようになった業務改善は、おもに以下の二つの側面から必要性があると考えられています。
ひとつは、15歳以上65歳未満の生産年齢人口の減少が深刻化していることです。総務省が公表した「令和4年版 情報通信白書」によれば、生産年齢人口は1995年の8,716万人をピークに減少を続けており、2021年には7,450万人になり、2050年には5,275万人にまで減ると見込まれています。生産年齢人口の減少は経済力の弱体化に直結するため、これを補うには業務改善による生産性の向上が必要です。
もうひとつは、2019年4月から順次、関連法が施行されている働き方改革を実現するためです。労働者の多様な働き方を認め、ワークライフバランスを実現するには、生産性を高める必要があり、生産性を高めるためには業務改善が必要になります。
業務改善の内容は、環境の変化などによって最適ではなくなる可能性があるため、随時見直しが必要です。
参照元:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少
業務改善による効果やメリット
業務改善には、労働生産性の向上、コストの削減、働き方改革の実現といった効果が期待できます。
労働生産性が向上する
生産年齢人口の減少が続く状況において、企業は、従業員数を含めて簡単にリソースを増減できません。
ある程度決められたリソースを有効活用するためには、全体の業務を見直し、各従業員への割り振りを最適化し、RPA(Robotic Process Automation)ツールなどの導入により業務を自動化することで、業務改善を進める必要があります。
業務改善を行うと、リソース内で最大限の成果を上げられるようになり、労働生産性は向上します。さらに労働生産性の向上という成果が出ることで、従業員のモチベーションアップが期待できます。
コストを削減できる
ムリ(適正状態に対して負荷が大きすぎる状態)・ムダ(負荷が小さすぎる状態)・ムラ(ムリとムダとが混在している状態)を省くことは、業務改善における重要な柱のひとつです。業務上のムリ・ムダ・ムラにはすべて本来不要なコストが発生しています。これらを省くことによって、残業代などを含めた人件費、オフィスの光熱費や通信費、事務費など、必要以上にかかっていたコストを削減できます。さらに削減できたコストを適正に再配分することにより、サービスや製品の品質向上にもつながり、企業の市場競争力も増します。
働き方改革を実現できる
前述の通り、働き方改革は関連法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が制定され、国を上げて推進されています。各企業も実現に向けてさまざまな施策を実施していますが、なかでも最も基本的かつ有効な施策が業務改善です。業務改善を進めることによって、時間外労働の削減や多様な働き方が可能な職場環境、有給休暇の適正取得といった働き方改革も実現に近づきます。働き方改革の実現に前向きな企業は労働者にとって魅力的であり、人材確保の点で有利に働きます。
業務改善の基本的な流れ
業務改善は、(1)課題や全体像の把握、(2)計画の策定と実践、(3)効果の振り返りの3ステップで進めていきます。
課題や全体像の把握
最初のステップは、業務の全体像を把握して、解決すべき課題を抽出することです。そのためにはすべての業務を可視化します。
担当者以外には内容がわからない「属人化している業務」がある場合は、業務をすべて洗い出し、業務の内容はもとより、流れ、標準的な工数や時間、担当者などを明らかにします。
具体的には、関連する他部署を含めたすべての関係者にヒアリングを行い、業務棚卸表や業務フロー図などを作成して、業務の全体像を把握できるようにしましょう。
業務を可視化できたら、次に全体の中でどこが課題になっているのかを特定します。不要な業務はないか、時間がかかり過ぎている業務はないか、特定の従業員に負荷がかかり過ぎていないかなどを確認し、課題を抽出します。
計画策定と実践
特定できた課題をどのように解決していくのか、改善計画を策定し、計画に沿って実践します。課題が明らかになったからといって無計画に改善策を実行してしまうと、「実は先に解決すべき課題があった」などムダな工程が発生し、業務改善そのものが失敗に終わってしまうこともあります。
改善計画を策定する際は、実行すべき施策をなるべく細分化することが重要です。次のステップである「効果の振り返り」で、どの施策が有効、または効果が薄かったのかの効果測定をしやすくなります。
さらに、数値化できる施策は必ず数値化し、数値目標を設定します。これも効果測定において客観的な評価をするのに役立ちます。
成功の確率を高め、担当者のモチベーションアップを図るためにも、改善策は効果が大きいと見込まれるものから優先して行うことが重要です。以下の順を目安にしてみてください。
優先度高:効果が大きく実施難易度が低いもの
優先度中:効果が大きく実施難易度の高いもの、または、効果が小さく難易度が低いもの
優先度低:効果が小さく難易度が高いもの
効果の振り返り
改善策を検討し、実施したら、各施策の効果を評価します。数値化できたものは数値によって効果を振り返り、(定量的効果測定)、できなかったものは担当者などへのヒアリングによって効果を振り返ります(定性的効果測定)。
業務改善の効果を最大化するために重要なのは「効果測定」
改善策を実施し、効果測定を行ったからといって、業務改善はそこで終わりではありません。どの施策が有効で、どれが失敗したのか、そして失敗した原因は何なのかといったことを分析し、さらなる改善を図るために施策を継続実施していくことが重要です。
業務改善における効果測定のポイント
効果測定を行う際は、数値化の可否で分けられる定量的効果と定性的効果のそれぞれで評価する必要があります。
定量的効果と定性的効果
定量的効果とは、目標数値や指標に対してどの程度の効果(達成度)があったのかということです。数値化されているため客観的な評価が可能で、たとえば経営層などに業務改善策の実績を説明する際には大きな説得材料になります。
一方、定性的効果とは、数値化できない効果のことで、評価者の主観によって良否は分かれます。たとえば、従業員や顧客の満足度、チームの結束力などが定性的効果に該当します。客観的ではないため、評価結果に対してすべての関係者が納得できるとは限りません。しかし、業務改善を進めるうえでは、定性的効果測定は欠かせない評価方法です。定性的効果測定の結果がよければ、担当者のモチベーションアップにもつながります。
仮設効果と実績効果
効果の検証は仮説効果検証と実績効果検証に分けて行います。とくに仮説効果の検証は予測した仮説が正しいかを確かめるために必要な検証で、検討の対象を絞り込むことで、スピーディーに意思決定ができます。
効果の検証は同じ施策を行うべきかを判断するために必要な検証です。施策の検討段階から結果を比較できるように施策していくことが重要です。
効果次第で、さらなる改善施策や導入するシステムを検討するとよいでしょう。
まとめ
業務改善には、労働生産性の向上やコストの削減といったメリットがあり、働き方改革の実現や深刻化する生産年齢人口の減少に有効です。実際に業務改善を進める際には、以下が重要です。
- 業務を可視化して全体像を把握すること
- 課題を特定して、計画に沿って施策を実施すること
- 効果測定を行い、さらなる施策を策定・実施して、改善を繰り返すこと
業務改善の結果は、定量的効果だけでなく、定性的効果でも評価する必要があります。
業務改善を成功させる手段のひとつに、RPAツールの導入による業務の自動化があります。RPAツールの導入を検討しているのであれば、高機能ながらも設定が簡単で、低コストで運用できる「AutoMate」がおすすめです。
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