業務自動化による工数削減効果が高く、人材不足解消や業務改善の一手として導入されることが多いRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)。当ブログを読まれている方の中でも、会社でRPA導入を進めていたり、検討段階にあるという方は多いでしょう。
RPAを導入することで得られる効果と、それによって解決できる課題は多数存在します。しかし、RPAはあくまでツール(道具)であるため、使い方を誤ると期待と異なる結果になるばかりか、トラブルとなるケースもありえます。RPAの活用に失敗せず、高い効果を得るためにはどうすればよいのでしょうか?
その答えの一つが「RPAのデメリットを知ること」です。どんなITシステムにも得手不得手があるように、RPAにもカバーできない領域や、導入することでのリスクがいくつかあります。それらを明確に把握していれば、対策も立てられ、RPA導入の失敗を避けられるでしょう。
今回はそんなRPAのデメリットについてご紹介します。
RPAが持つ5つのデメリット
RPA導入企業が認識しておくべきデメリットを5つご紹介します。あらかじめ理解したうえで対策を立てられれば、ツールの魅力を十分に享受できるでしょう。そのデメリットを具体的に解説します。
RPAデメリット1.仕様変更などによる誤作動のリスク
RPAはロボットソフトウェアなので、与えられた指示を休みなくこなすことができます。しかしながら、設定時は正しかった指示が、あるときに間違った動作となってしまうことがあります。その原因の最大のものが「既存システムの変更」です。
RPAは主に定型業務(ルーティンワーク)を自動化するITツールなので、業務部門が主体となって導入を進めるケースが大半です。プロセスの中で社内で開発されたアプリケーションを利用する場合に、主体部門と情報システムが綿密に連携を取っていないと、先述したトラブルが発生するリスクがあります。
また、外部のクラウドサービスなどを利用している場合にも、バージョンアップに伴う画面内のフィールドの配置や順番の変更などがあり得ます。実行時にエラーになればよいですが、値の型が一致している場合などにはそのままエラーとならずに実行し続けてしまう可能性があります。
一般的にRPAはAI(人工知能)とは異なり、変更点や値の妥当性などを自ら学び対応するような機能は備わっていないため注意が必要です。
RPAデメリット2.業務停止のリスク
RPAの実行環境は大きく分けて、サーバー型とデスクトップ型の2通りが存在します。どちらも一長一短あるので、自社環境に合わせて導入するのが適切です。ただし、どちらも共通して言えるリスクがシステム障害による「業務停止」です。RPAをインストールしているサーバーに障害が発生して処理が停止してしまう場合や、デスクトップで実行していてWindowsの修正モジュールが適用され自動的に再起動されてしまった場合など、これらの状況を検出する仕組みがないと、気づかないうちに停止してしまっていることもあり得ます。
RPAデメリット3.業務のブラックボックス化
たとえば新たな担当者が来た際に、このRPAを実行するだけ、という理解をしてしまうと内容を理解しない担当者が増えてゆくことになります。当初は意味のあったそのプロセスが、単に実行ボタンを押すだけの業務になってしまいかねません。何らかの変更が必要になった際にだれもその意味が分からないということになると、組織として将来的に大きな問題を持つことになります。
RPAデメリット4.誤った処理も実行し続けてしまう
RPAは誤処理を起こす可能性があります。そこには、業務手順の指示が不正確であったとしても、RPA自体はそれに気づかず、システム上エラーが起きなければそれを実行し続けます。
たとえば、単純作業といっても無意識のうちに条件によって処理を変えていたり判断したりしているような場合には、それも含めて正確にRPAに実装する必要があります。100件に1件しか起こらないような例外や条件処理もあらかじめ想定の上盛り込んでおく必要があります。
RPAデメリット5.不正アクセス等のリスク
セキュリティに関することも考慮が必要です。RPAでは自動処理で各システムやアプリケーションにログインできるようにIDやパスワードを埋め込みます。たとえばセキュリティ上の理由で担当者やプロセスを分けている場合、効率化を優先させてそれらのプロセスを結合してしまうと、本来権限のないユーザーの実行環境でアプリケーションを起動することもあり得ます。特にデスクトップで実行するタイプの場合には注意が必要です。セキュリティ上の懸念がある場合には、サーバーで実行するタイプを選択するようにしましょう。
以上がRPAの5つのデメリットです。導入効果の高いRPAにも、注意しなければかえって混乱してしまったり、潜在的なリスクとなってしまう可能性があります。
RPAデメリットは、適切な対策で迎え撃つ
デメリットにはそれを回避するための対策が必要です。RPAに関しても、リスクやデメリットを正しく認識し、あらかじめ適切な対策を講じることにより、より成功裡な導入が可能になります。
対策1.部門間の連携を強める
RPAはどの主体となって導入を進めるにせよ、部門間の連携が大切です。特に社内アプリケーションを利用する場合、業務部門と情報システム部門の連携は絶対であり、両者のコミュニケーション基盤が整っていないと、先述のような仕様変更によるエラーの発生や誤作動といったトラブルを引き起こします。
またクラウドサービスの利用には、定期的に確認をしたり、更新情報を集めるなどの運用を行いながら、関連するアプリケーションの変更による影響を最小限にとどめるようにしましょう。
対策2.冗長構成でリスク対策
システム障害への対策はRPAに固有のものではありません。一般的なアプリケーションサーバーで行っているような冗長構成や監視の仕組みの中での運用が必要です。クライアント側で実行する場合にはそのような監視の対象になりにくいため、実行時のログなどを通知して、障害発生時にはすぐに確認できるような構成が必要です。
また、このような可用性対策は、始めればきりがなくなるので、たとえば途中でエラーが発生したら、気づいた時点でやり直せばよいレベルなのか、他のプロセスに影響するためリアルタイムに短時間での復旧が必要なのかを見極めながら、コストに見合う対策を検討しましょう。
対策3.RPA上で業務プロセスを理解できる
業務のブラックボックス化を防ぐには、「業務プロセスを文書化する」という対策のほかに、RPA上で業務プロセスを理解できる製品を選ぶという対策があります。RPAのプロセス設計が、ツール上のGUIなので表現されていれば、それを設定していない人でもどのような処理がなされているのかを理解しやすいでしょう。
ツール選びのポイントで設計のしやすさが挙げられますが、設定の理解のしやすさや変更のしやすさにもつながりますので、重要なポイントとして選定します。
対策4.文書化と監視機能、エラーハンドリング
不適切な処理が行われることに関しては、徹底的に処理や条件を洗い出すことや十分なテストが不可欠です。非常に頻度の少ない例外処理は忘れがちなので、特に注意をしながらテストを行います。
また、RPAの実装時のエラーハンドリングの設定も重要です。想定外のデータが入ってきたときの処理や、システム上のエラーが発生したときなどは、正しく処理を止めてログを出すように設定します。正しくないデータでもシステム上問題がなければ処理を進めてしまうため、データなどの復旧が必要になる場合があります。
対策5.使用権限の設定
ユーザーの視点で実行するため、通常はそのユーザーがアクセスできる範囲でプロセスを設計することが一般的です。また、実行だけでなく、設計時にも、設計者に必要以上の権限を付与しないように注意します。管理者、設計者、実行者で本来持つべきアクセス権の範囲を超えないような単位でRPAを設計、実行しましょう。
デメリットは対策で乗り切れる!
いかがでしたでしょうか。「想定していないデメリットがあった」となにかに気づいていただければ幸いです。事前に正しく認識することができれば、適切な対策をとることが可能です。あとから問題が起きてしまうと最悪取り返しのつかない場合もあります。RPAはツールです。正しく理解して適切に利用すれば、きっと心強い味方になるでしょう。
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